小説家に憧れたことはあった

 私も最初から教師一辺倒だったわけではない。

 高校生の頃はひそかに憧れたものだ。自分に小説を書く技能があったわけではないが、書いていけばいつかは力がついて本を出せるのではないかととんでもなく無理な想像をしていた。

 当時はダークファンタジーチックな話が好きだった。書き直そうと思えばできないこともないが、いろいろいじらないと厳しいだろうなと思っている。その頃は、とりあえず文章にはなっていたので、ちょっと自信をつけてきた頃だったと思う。

 転機は高校三年生の時。

 言っておくが挫折ではない。

 ただ、教師という仕事がしたいと強く思うようになっていたからだ。

 昔から教師になりたいとは思っていたがそれが絶対だとは思えなかった。もっと夢のある職業もあるのではないかと思っていた節があった。歴史が好きだった私は史学科に進んで学芸員もいいなと思っている節もあったし、地元のド田舎に帰りたいなとも思っていた。もちろんワナビもどきでもあった。

 そんな私が、いいなと思った小説家始めいろいろな職業ではなく教師を目指した理由は簡単だった。

「楽しい学校に通いたい」

 教師の影響力は大きい。教師の影響力のおかげでいいクラスになることもあれば、崩壊状態のクラスになることもある。これは私自身が子どもの頃に感じてきたことだった。私は、楽しく安心して勉強ができるクラスになればいいなと思っていた。

 そんな願望は小説家では一生叶えられない。しかもこの仕事を選んでしまえば、副業はできないので、リタイアでもしないかぎり、プロにはなれないことも知っていたし、歴史も好きに学べないことも分かっていた。分かっていたから、ワナビでもなくなった。

 夢を追うというのは簡単ではない。

 ただ、思い続けることは大切だ。

 ワナビのみなさんが強く作家になって成功したいと思っていることも、私みたいに本採用の教師になって大好きな社会科を通して生徒がたくさんのもの触れて考え、自分の意思を持てるように手伝える教師になりたいと本気で思い続けることは、先へつながると信じている。

 私が今もワナビとして活動しなかったのは、きっとそれほど強く思っていなかった面もあるのでは、と思う。

 難しいとは思うが、私は社会科教師になれるように準備をしなくては。

 それが全ての糧であるから。

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