第十話 せるりあんとみんな

深夜2:04 ジャパリパークパークセントラル


「メガネさんっ!」


かばんはメガネが取り込まれそうになっていて居るのを見て、ただただ名前を呼ぶ事しか出来なかった…

セルリアンはメガネに触手を伸ばし、飲み込もうとする。


その時だった。


「オラァァァァァ!!」


近くの高速道路から1台の軽装甲車が飛び出し、セルリアンに体当たりし、触手をぶったぎったのだ。


「グォォォォ!」


セルリアンは声を上げ怯む。

軽装甲車がぶつかった所のセルリアンのゲル状の体は溶けていた。


「誰…?」


軽装甲車からは頭に包帯を巻いた一人の男が乗っていた。


ボウシだ…


「ボウシ!!」

「感動の再会は後だ!運転しろっ!」


ボウシはそう言うと軽装甲車から降りた。


「でも君は…」

「お前は早く通信の準備を整えろ!良いな!?」

「解った…!」


メガネは軽装甲車を運転し、その場を離脱した。


ボウシにかばんが駆け寄る。


「ボウシさん!」


ボウシはかばんの泣きそうな目を見て悟った


「サーバルがあの中に…」

「…はい」

「…」


ボウシはかばんの頭を撫でた。


「よく頑張ったな、お前はもう何も心配するな、サーバルは…俺が助け出す…!」

「ボウシさんっ!でも!!」

「安心しろ、策がある」


ボウシはそう言うと腰のポーチから注射器を1本取り出し、首筋に刺した。

そして叫ぶ。


「野生解放!!!」


ボウシの回りにサンドスターが現れ、瞳が輝きだした。


そして次の瞬間、目にもとまらぬ速さで移動し、セルリアンにサンドスターの様に輝く2本のナイフで噛みつくように攻撃する。


「あれは…オオカミ?」


かばんさボウシのセルリアンへの猛攻に圧倒されていた。


しかし、セルリアンもやられっぱなしではない、触手を匠に使い、ボウシをビルに吹っ飛ばしたのだった。


「ボウシさんっ!紙飛行機で気を逸らしますっ!」


かばんは火を付けた紙飛行機をセルリアンの方に飛ばす、セルリアンは一瞬釣られるが、再びヘイトをボウシに向ける。


「畜生…!」


ボウシはビルから飛び出し、再びセルリアンにナイフで攻撃をする。

しかし、石が見つからない。

猛攻の中、ボウシはとある物を見つけた。


「あれは…サーバル!」


セルリアンの中に何とか動物に戻っていないサーバルを発見したのだ。


「クソッ!あの深さはっ!」


ボウシは油断していて再びセルリアンの攻撃を受ける。

何とか右手のナイフで受けるが、ナイフが折れる。


「しまっ…!」


そして、セルリアンに吹っ飛ばされ、朽ちたアスファルトに転がる。


「ボウシさんっ!大丈夫ですか!?ボウシさんっ!?」


かばんはボウシに駆け寄る。

ボウシの目は元に戻り、サンドスターも消えていた。


「くそっ…野生解放を使いすぎた…たが…ここで終わるわけには…っ!」

「ボウシさん!今立ち上がったらっ!」


ボウシは何とか強引に立ち上がろうとするが崩れ落ちる。


「クソッ!かばんっ!早く!早く逃げろっ!俺は置いてけ!」

「でも…サーバルちゃんが…」

(クソッ…確かにここで引こうがどうしようがサーバルや他のフレンズは救助出来ない…一体どうすればこの絶望的な状況を…)


「全く…やはり島の外に出ても我々の力が必要なのですね」

「全く…やれやれなのです」


「!?」


かばんが振り返るとそこには二匹の鳥のフレンズ、博士と助手が立っていた。


そして…


バラバラバラバラと言う羽音と共にヘリが1台…


「ボウシ、仲間が来てくれたよ!」


メガネが通信でそう言うと共に地響きがする。


「まさか…」


~数分前~

メガネはキャンプへ戻り、通信の準備を済ませ本土へ助けを求めようとしていたときだった。


(通信機の電力が通信、一回分しかない…)


メガネは考えた、ここで本土に救助を求めて本当にその通信を信じ、助けに来てくれるのか、それも速攻で。


いや、来ない、最速でも2日3日はかかる、

それまでに何人の犠牲が出るか解らない…


メガネは通信機の周波数を調整するつまみを回して近くにラッキービーストを置いた。


「僕はフレンズを信じる…!」


そう言うと通信機のボタンを押してラッキービーストの通信もオンにした。


「ジャパリパークのフレンズの皆!僕はハンターズのメガネ!」


パークのまだ、生きている園内放送のスピーカーからも音が流れる。


「今、ジャパリパークと沢山のフレンズが危機にあっている!」


フレンズ達がラッキービーストから出る声を聞く。


「お願いです!助けに来て下さい!このままじゃ!パークも沢山のフレンズも!…僕の友達も死んでしまう…だから…だから!パークセントラルにっ!」


通信は電力不足とラッキービーストの充電切れで停止した。


「…これだけしか言えなかった…ま、これで僕は絶対に本州に帰れないって事か…ははは…」


ラッキービーストを充電台の上に置いて充電すると近くのもう一つのラッキービーストから声が聞こえてきた。


「何だろう…」


近づくと各エリアのフレンズ達が映し出されていて、皆、次々と画面外にフェードアウトしていった。


そう、皆答えてくれたのだ。


メガネはすぐにヘリに乗り、ボウシとかばんの元へ向かった。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

各エリアのフレンズ達がセルリアンを倒しに集まったのだ。


「おまたせっ!」

「やっちゃうよ~」

「最速で仕留めるわ!」


フレンズ達はセルリアンに次々と攻撃を仕掛けるが効き目は余りない。


「硬いっ!」

「でもこんな所で諦めるわけにはいかないよ」

「えいっ!」

「喰らいなさいっ!」


セルリアンは余りのフレンズの多さに混乱し攻撃が少しぬるくなっていた。


「ボウシ!君はもう休んで!」

「いや、まだだ、サーバルや他のフレンズ達がまだあの中にっ!」


ボウシは無理矢理体を動かし立ち上がる。

そして、ポーチから2本注射器をだして首筋に2本打ち込む。


「ぐっ…」

「ボウシ…何やってるんだよ!!そんなことしたら!!!」

「だ、大丈夫だ…自我は保てる…ふぅ…メガネ予備のサンドスターハイをくれ」


メガネはもう3本専用の容器に入ったサンドスターハイを渡す。


「それ以上、打つのは絶対にダメだからね…君が死んでしまう…」

「大丈夫だ、それより、セルリアンを例の地点まで急げ、」

「解った、でも、そうすると中のフレンズが…」

「策がある、任せろ」


~一方その頃かばんは~


「えいっ!えいっ!か、硬いっ!でも、サーバルちゃんが…サーバルちゃんが!!」


するとかばんのラッキービーストから通信が


「火を使って観覧車まで誘導させる一時撤退」

「でも…!」

「撤退だ!お前も食われるぞ!!そしたら誰がサーバルを助ける!?」

「了…解、皆さん!!一旦離れてください!アブナイです!」


かばんは火を灯してセルリアンを誘導する。

すると軽装甲車が到着し、かばんを乗せて走り出した。


「誘導ご苦労、窓から火を出しといてくれ」


かばんが窓から火を出すとセルリアンは凄まじい勢いで走って追いかける。


「思ったよりのろまだなっ!」

「うわぁぁ!」


アクセルをより、強く踏み込み、スピードを上げる。


そして、観覧車付近に到着すると観覧車の上部が燃え出した。


そして軽装甲車の火を消し、メガネと合流する。


「準備は?」

「バッチリ、でもまだ、セルリアンの中のフレンズが…」

「…」


すると、ボウシがすぐに口を開く。


「かばん、お前は他のフレンズを全てこのゲート付近に集めてくれ、俺はサーバルを救ってくる」


かばんはいつも通り了解と言おうとしたが踏みとどまる。


「ぼ、ボクも行きたいです!」

「…」

「サーバルちゃんは、ボクが助けないと!」

「そうか、じゃあ着いてこい」

「ボウシ!」

「メガネ!…彼女が望んだ事だ」


ボウシはかばんと共に観覧車のてっぺんの燃えている所付近の柱に立った。


「よし、セルリアンが来たらセルリアンに飛び込む、お前はサーバルを、俺はハンターズの隊員を助け出す」


そう言いながらボウシはシンリンダーの弾を全て別の弾に入れ替えていた。


そうこうしているうちにセルリアンが観覧車の近くに到着していた。


「かばん、最初で最後のチャンスだ…」

「はい!きっとサーバルちゃんを…皆を助けますっ!」


ボウシは頷くとセルリアンに飛び込んで行った、かばんもそれに続く。


~セルリアンの体内~

かばんは巨大なセルリアンの体内を泳ぎ回るようにしてサーバルを探した。


ボウシは既に何人か集めて、体内で銃を発砲

体に大穴が空いたすきに外に出していた。


(流石最後の6発の超強化弾ここまで大穴が空くとは…)


ボウシは一通り隊員を出し終えるとかばんの元へ向かった。


かばんはまだ、サーバルを見つけられていなかった。


その7秒後にセルリアンの体内の石、付近でサーバルを見つける。


(サーバルちゃん…)

(安心しろ、これで脱出出来る)


ボウシはかばんとサーバルをセルリアンの外皮付近に連れて行く、しかし、その時だった。

セルリアンの体内の細胞が渦を巻き始めたのだ。


(一体どうなってる!?何故こんなことが!)


ボウシはサーバルとかばんを外皮から蹴り出す。


(俺も早く出なければっ!)


必死にもがくが流されるままセルリアンの体内を回転した。


よく見るとセルリアンが再びフレンズ達を捕食しようと触手を伸ばしていたのだ。


(マズいっ!このままでは新たな犠牲者が出るだけ!クソッ!どうすれば…!!)


ボウシはメガネの通信でこう伝える。


「脱出完了、オーダー66を実行急げ」


メガネはそのメッセージを確認すると


「待ってました!」


と言うと同時に赤いスイッチを押し、パークセントラルの都市部に仕掛けてあったダイナマイト作動させ、パークセントラルの一部を水没させたのだ。


「ウォォォォ!!!」


セルリアンは抵抗虚しく水中へ沈み溶岩になる。


巨大セルリアンはここに倒れたのだ。


「やった…やったぞ!!やったぁ!!!ボウシ!ボウシは!?」


サーバルをテントに寝かして帰ってきたかばんは顔色が悪い。


「ボウシさんは…セルリアンの中です」


空気が凍り付く


「嘘…だ…」


すると時間差でメッセージが一件。


「連れて帰れなくてすまない、さよなら俺の相棒」


「そんな…そんな馬鹿…な…」


メガネの立つところは水位上昇により、海岸になっていた。

そして、場を静寂が支配する。



















「プハッ!ゲホッ!ゲホッ!」







突然海岸から音が!

一斉に皆がそちらを振り向くとそこにはびしょ濡れのボウシが。


「ボウシ!」

「ボウシさんっ!」


メガネとかばんがボウシに抱きつく。


「やめろ…お前達の服が濡れちまうだろ…?」


しばらくの沈黙、そして、フレンズ達から歓声が上がる。


そのフレンズ達の奥の方には今は無き、相棒のコヨーテが眩しい笑顔で立って、拍手をしていた。


(有り難う、コヨーテ)


コヨーテは薄くなって消えていった。


ボウシ「次回、」


フレンズの皆『おまつり!!!!』










































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