7.初めての座学
昼食を食べ終え、レンさんに連れてこられたのはステータスプレートを発行した円卓の部屋だった。
因みに昼食はトマトクリームパスタみたいな料理だった。
最近王都の若者の間で流行っているらしい。
普通に美味しかった。
「じゃあ皆、適当なところに座って。」
僕はこの前座った所と同じ、扉の近く座る。
皆もだいたい同じところに座っていた。
…もしかしてレンさんが教えてくれるのかな?
あんなことやこんなことを手取り足取り――ゲフンゲフン
「座学担当の人を呼んでくるから、ちょっと待ってて。
それまでは自由にしてていいから。」
うん、知ってた。
流石に一日中教えるわけないよな。
近衛騎士だったら色々忙しそうだし。
「なあ、皆はどう思ってる?」
「どうって?」
剣崎の曖昧な問いかけに佐藤さんが聞き返す。
「いや、この世界に来てから俺が勝手に話を進めてきた感あるだろ。それを皆はどう思ってるのかなーって。やっと俺らだけで話し合える時間が出来たから聞いておこうと。」
そういえばこの世界に来てから僕達だけになるのは初めてだな。
「あのねぇ、」
佐藤さんがイライラした様子だ。
女の子の日かな?
「誠が私たちのことをちゃんと考えてくれてるってことぐらい皆分かってるわよ。私たちが突然異世界に召喚された時、誠だって私たちと同じ様に不安なはずなのに平気な顔して皆の為に前に出くれてたでしょ。」
「…ばれてたのか。」
剣崎が照れた様に頬を掻く。
「私は、ううん皆もきっとそう、誠が居てくれてすっごくよかったと思ってるよ。だからもっと自信を持ちなさい!誠のこと、皆信じてるんだから。」
「そうですよ、頼りない先生の代わりに頑張ってくれていることを私もちゃんと知ってます。本当は私が一番しっかりしないといけないのに。剣崎君、ありがとうございます。」
川崎先生が頭を下げる。
「そうだぜ、俺らほんとお前が居なかったらどうなってたか。
ありがとな。」
「あーしも誠クンが居てくれてほんっとに助かってる。
ありがとね。」
俺も、私もと次々と剣崎にクラスメイトが感謝を述べる。
僕も剣崎には感謝してるし、お礼は言わないとな。
こんな機会なかなか無いだろうし。
「僕からも、ありがとう。
剣崎が居てくれてほんと助かった。」
「…皆」
剣崎が袖口で目を擦る。
「おっ、誠泣いてんのか?」
「っ、泣いてねえし!」
剣崎が顔を上げる。
「でも、皆ありがとう。これからも俺、頑張るよ。」
青春だなー
なんか青春ドラマ観てるみたいだ。
僕とは対極的過ぎて眩しい。
そんなこんなしてるうちに扉がノックされた。
「あの、お取り込み中のところすみませんが、座学の時間なので入ってもいいですか?」
扉の隙間から覗いていたのはセバスさんだった。
「あ、すいません。どうぞ。」
「はい、失礼します。」
セバスさんがこの前居たところまで歩いて行く。
「私があなた方の座学の担当をさせて貰うことになりました。
ガイルにも説明をされたと思いますが、この時間では簡単にですがこの世界の一般常識などを学んで頂きます。」
ほんとセバスさん万能だな。
労働基準法はこの世界には無いのか。
「では、まずは大まかなこの世界の話からしましょうか。 この世界の名前はゼスト。 今分かってるだけで三つの大陸があり、それぞれフェルミナス大陸、アルスナリク大陸、フラル大陸となっております。 アルスナリク大陸を中心と見た場合フェルミナス大陸は西、フラル大陸は北東に位置しています。 ここ、ルーレンス王国はアルスナリク大陸にあり、魔王が治める魔族領はフェルミナス大陸の南端から徐々に拡大しており、今では大陸の約3分の2程まで進行されました。 ここまでは宜しいですか?」
セバスさんが僕たちから質問が無いことを確認する。
「では次はこの世界の国々を紹介いたします。 主に大国とされているのは4つで、我らがルーレンス王国、同じくアルスナリク大陸に位置しているレグニアス帝国、フラル大陸に位置しているルミナス法国、フェルミナス大陸に位置しているラウス共和国です。 ラウス共和国とは同盟を結んでおり、魔族対策にと兵や物資を支給しています。 ラウス共和国は様々な種族がおり、この国ではあまり見かけることのない獣人などの亜人種が多く暮らしています。」
『もしも異世界に行ったら見てみたいものランキングベスト100』
2位の獣人キター!!
僕は机の下でグッとガッツポーズをする。
ネコミミ美少女の耳の先から尻尾の先までモフるのが夢だったんだ。
ラウス共和国に行ったら絶対モフってやる。
亜人ってことはエロフ、もといエルフも居るのかな?
今のとこ一番行きたい国だな。
対魔族の最前線らしいし嫌でも行くことになるだろうけど。
「ルミナス法国はその名の通りルミナス教を国教としている宗教国家です。 因みに王は居らず、教皇が政治を行っています。 ルミナス教は世界で最も信者が多い宗教で、唯一神ルミナスを信仰しています。 ルミナス教は人間種こそ至高とされており、亜人はルミナス法国入ることさえ難しいです。」
ラノベとかでよくあるけど、どうして亜人を迫害するのかねえ?
あんなに可愛いのに。
もしかしてこの世界の亜人は可愛くないのか?
だったら大問題だな。
「次にレグニアス帝国はルーレンス王国と昔から仲が悪く、魔王が出現した今でも小競り合いのような戦いが起こっています。 無いとは思いますが、レグニアス帝国に行くことになったときは気をつけてください。」
いや、魔王が居るんだからそこは停戦しとこうよ。
どんだけ仲が悪いんだよ。
「最後になりました我らがルーレンス王国は特に亜人に対する差別や、国教などはありません。 政治は2年前にギルバルト王がお隠れになった時から、アリシア様が治めております。」
なんだ、王を見ないなと思ったらもう亡くなってたのか。
それでアリシアさんがずっと仕切っていたのか。
若いのに大変だな。
「…これぐらいですかね。 ああそれと、いい忘れていましたが1年は360日で、1ヶ月は30日です。1週間は6日で訓練の休みは週末の1日になります。」
元の世界より5日しか変わらないのか。
毎月30日なのは分かりやすくていいな。
「…今日のところはこれぐらいで、また明日に続きをしたいと思います。」
「起り――」
あ、佐藤さんが起立って間違えていいかけたな。
皆に笑われて顔が凄く赤くなっている。
…可愛い。
セバスさんはきょとんとしている。
「今何をいいかけたのですか?」
「元の世界で授業の終わる時の挨拶です。 この世界には無いんですか?」
剣崎が答える。
「いえ、ありませんね。」
「やってみてもいいですか?」
「え、ええ勿論どうぞ。」
えー、止めようよセバスさんがちょっと困ってるだろ。
「起立!」
佐藤さんがまだほんのり赤い顔で言う。
「礼!」
『ありがとうございました!』
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