第2話 初バイト

思春期の男子ともあれば、同じ年頃の女の子とデートするのは、

とても、嬉しいものだ。

心がときめいて、心臓の鼓動が激しくなる。


その女の子が、かわいいとあればなおのことだ。

俺は今、それを現実のものとしているが、ときめかない。


今、俺の隣を歩いている烈子という子は、とてもかわいい。

でも、ときめかない、その理由は・・・


「幸二、私かリードするからね。安心して」

「どうでも、いいけど、どうして俺だけ呼び捨てなんだ?」

「君も私にだけ、烈子と呼び捨てじゃない。」

初対面のころから、こうだった。


まあ、悪い気がしないがな・・・


「で、そろそろ行き先を教えて欲しいのだが、

でないと、お前がリードってどういう意味だ?」

「えーとね、あっ、ここだよ、幸二」

「ここは?」

デパートのヒーローショーだった。


「まさか、これを見ろと」

「見るんじゃないの。出るの」

「誰が?」

「君と私」

スーツアクターのバイトだ。


「前に言ってたよね?ヒーローになりたかったって。

その願い叶えてあげる。」

確かに言った。でもそれは、幼稚園の頃の話だ。


「でも、いきなり無理だろ?」

「大丈夫。主催者は私の親戚だから」

だから、俺なのか?


スーツアクター

確かに田代は、大人しいから、激しい動きは無理。

村田は、全く興味がない。

林は部活で汗を流してる。

その他もろもろだ。


「さあ、来て。幸二」

「ああ」

烈子に案内されて、控室に来た。


もう、話はついていた。


俺は、怪人のスーツを着せられた。

烈子はヒーローだった。

男のスーツなので、ヒロインではなく、ヒーロー。


「私がリードする」

こういう意味か・・・


でも、どうにか無事に終わった。

汗かいた。暑かった。

体重はかなり減った。

こんなに大変とは、思わなかった。


気ぐるみのバイトをしている皆さん。

あなた方は、偉い。

尊敬する。



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