第3話 静かな部屋

 図書室は静かだ 

図書の先生がたまに本棚にくる足音がした。

それ以外は、なんの音もなく自分の呼吸の音が気になり、息をしづらかった。

ふと、隣のベランダの戸から風が吹き抜けた。俺は体操座りの膝に頭を下ろした。

なんてことない。なんてことない。

生きることは死ぬこと。先日読んだ本を思い出した。自分の価値がわからなくて、震えてしまう。

絶望の未来ばかり想像し憧れてしまう。

なんだか、泣きたくなった。

 

キンコンカンコン。 


きんこんかんこん。頭でつぶやく。図書室のドアが思いっきり開いて空気がしびれて、一瞬、恐怖を感じた。

机の下に担任の顔が現れる予感がした。

永遠なんて存在しないさ。

その教え。

違う。顔を上げた。 

まっ子の顔にホッとした。

「もう、先生に探してこいっていわれて探し回ったんだからね」


担任に連行される途中、図書室のドアの前で振り返ると図書室の先生が、微笑んだ。


職員室でこっぴどく叱られ、教室に戻ろうとした時体育の先生にこう言われた。

「自分のことを悲劇のヒロインだとおもうなよ」

イライラが募る。

 なんだよ今の。なんで俺今傷つけられたんだ。

一生忘れねぇからな。 

の逆で今すぐ忘れてやるよ。

 

その日下宿に帰ると、学生カバンの両側の幅を切りとって捨てて、帰り道に拾った針金で前後ろを並縫いした。 針金で並縫いをするには中々革を突き破ることが出来ずに、キリで中を一個一個開けながら針金を通した。


朝が来る。

 拝啓、未来の大人たちへに教えてあげる。青春は悲劇によく似ているよ。

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