第23話

 基幹システムが提示したのは地下街であった。どのような理由で地下街での事件発生が予想されたのかを説明しろと言われたら綾乃には統計的に導いたらしいとしか言えない。警察官として頼りにする一方である日突然使えなくなるのではないかという不安を感じるシステムであった。

「俺が前を行きます。後方の警戒と援護を願います」

「了解しました。御武運を」

「別に戦場に行くわけではありませんよ」

 笑いながらそう言ったが、体の動きは緊張状態をコントロールした戦場のそれであった。

「人が多いな」

 和也が次に言ったのは戦いにくさに関するものだった。

「避難命令を出せば基幹システムはここを候補から外すでしょう。そうすれば罠になりません」

「そんなことはわかっている、これは二人で分かれて探索したほうが…」

「それもそうですね。遠くから撃つだけなら二人いる必要はありません。どうしました?青木さん」

「ターゲット発見、ターゲットに近づく男も。ターゲットを頼みます。俺はもう一人をやる」

 そういいながらすでに青木は走り出していた。走りながら拳銃をホルスターから抜く。

「待ってください!」

『キャピタル権限でこの場であの男の捕獲令状を発行する!』

 すでに肉声が届かなくなった距離から通信で和也の声が響く。

「勝手な真似を!」

 そういいながら綾乃はEMP銃を抜きターゲットとの距離を詰めた。

 ターゲットの歩いている方向に迂回し進行方向をふさいだところで、ターゲットの背後から銃声が響いた。

 和也がターゲットに接近しようとする男と交戦状態に入った。何発か銃声が響き、銃声はターゲットを恐慌状態にした。

「え?」

 ターゲットは綾乃のわきを通り抜け逃げようとする。綾乃は振り返り様にEMP銃を構える。

「待て!そこで撃ったら!」

 すでに男を無力化した和也が叫ぶがすでにEMP銃の引き金は引かれた後だった。

 地下街の電灯とという電灯から光が消えた。

 綾乃が撃った方向の壁には扉があり、電気が消える直前、綾乃は扉に書かれた文字を読み取った。

「電気室…、やらかしたな…」

 ターゲットは逃した。

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