第15話
天野の怒りは、しかし爆発しなかった。
「ただいま戻りました」
「何かわかったか?!」
「どうしたんですか?えっと、天野さん」
事件発生地域の周辺を管轄する現地警察の動向を調べるように命令を受けていた亜鞍馬は帰ってくるなり罵声に近い問いかけを受けてたじろいでいた。
「亜鞍馬さんが特に何かしたわけじゃありませんよ」
綾乃が穏便に済ませようとする。
「そうなんですか。えっと、有力な手掛かりがありました」
そういって亜鞍馬が話したのは事件発生地域の周辺地域で多発していた強盗や窃盗事件の詳細であった。
「以上のように、周辺地域ではこれと同様のマスクをかぶった二人組による窃盗事件が多発していました。私は調べていませんが、事件発生地域でも同様の事件があったのではないですか?」
そう問いかけられた天野は首を傾げた。
「何か言ってたか?係長」
「なにも聞いていません。というか、私たちが尋ねませんでした」
「わかった。とにかく今後の方針としては…」
天野が言い淀んだわけが分からず綾乃は天野を見つめた。
「係長はお前さんだ。今後の方針を決めてくれ」
「そういえばそうでしたね。では、仮面の二人組の窃盗事件の資料を取り寄せましょう。あと、琢の、じゃなかった梓さんの情報提供によると仮面は量産された可能性があるそうなので同様の事件がないかを全国の現地警察に問い合わせると同時に国際刑事機構への問い合わせを行えないか課長に話してみます」
仮面が量産された可能性を指摘したときに大きなため息がどこともなくしたことは言うまでもない。
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