第13話

「その3秒間で何があったのでしょうか?」

「仮面を外したんだと思います」

「そんなことできるんですか?」

 担当者は綾乃の疑問を無視して袋に入ったマスクを差し出した。

「詳しくは分解調査しないと何とも言えないけど、見たことのない機構からして問題のマスクとみて間違いないと思う」

「セキュリティシステムのデータは提出してください。こちらで分析に掛けます。ところで遺体ですが」

「こちらです。被害者の身元を表すものは今のところ出てきていません。こちらもDNA鑑定待ちですね」

 顔から検索を書ければ登録IDに引っ掛かるのではないかという考えは被害者を見たら吹き飛んだ。

「焼けてますね」

「ひどいものです」

 被害者の顔は焼けただれていて特徴を読み取ることはできなかった。

「手足はすべて義手義足でした」

「徹底していますね」


 現場の記録を取る作業は現地警察のほうが優れている。よって綾乃と琢は本部に戻ることにした。

「おかえり、結果が出たよ」

 そういって出迎えてきたのは天野だった。急遽呼び戻されたらしい。

「あのマスクは問題の人を操るマスクで間違いない。そして無理やり外そうとすると脳を焼き切る機能がある。今日の被害者の死因はおそらくそれだ。焼き切る仕組みはかなり粗野で焼き切ったときに頭部全体に熱傷ができるらしい」

 綾乃は顔をしかめ、琢はため息をついた。

「そして被害者には規定値を超える薬物反応があった。とはいっても種類自体は義手と神経の接続を強化する合法薬だった。おおかた依存して量が増えていったんだろう」

「では、外したマスクはどこに消えたんでしょう?」

 天野は無言で送られてきていたマスクのデータを渡してきた。

「これだろ」

「でも、これは犯人が外したもので」

「確かに犯人が外して落としていった可能性はある。でも、もしそうならあの現場には2つの死体がなければいけない。そうでない以上、このマスクは被害者のものだ」

「確かに」

 考えてみると明らかなことである。

「それだと犯人はマスクを着けたまま逃げたことになる」

「警察がマスクを着けていない人物に焦点を絞って捜索を続けている間に逃亡するということか?」

「犯人のマスクだけ着脱可能だったかもしれません」

「まあ、逃走経路のカメラ漁っても何も出てこないか。ところでそっちの彼は誰?」

 綾乃は琢の紹介を忘れていた。

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