第4話
クマから聞き出した情報によれば、洋子は日本海側のN県の出身だという。
『色の白いは七難隠す』とはいうが、道理で彼女は色白で、それが歳より若く見せたのだろう。
こうして写真を眺めていても、顔自体も小づくりだから、平凡な顔立ちであっても、彼のような真面目男を惹きつけるには持ってこいだったに違いない。
彼女が寝物語にクマに話して聞かせてくれたところによると、洋子はN県の県庁所在地であるY市の出身であるらしい。
それ以上は、途切れ途切れにしか話してくれなかったそうだが、かなりの資産家で、土地も家も、またその他の財産も結構あって、暮らしには困らなかったのだが、彼女が高校を卒業して、地元の大学に進学した頃、父親が癌で亡くなってしまい、その後は遺産だけでなんとかやっていたのだが、大学三年の時にはそれも怪しくなり、挙句は親戚がよってたかって食い潰してしまったという。
そのため、大学も中退せざるを得なくなり、心労のため入院した母のために地元の企業に就職した。
なかった一人の男性に出会い、結婚をしたものの、人柄は決して悪くはなかったのだが、博打好きなのが玉に瑕で、借金をこしらえて蒸発してしまったのである。
仕方なく地元に居づらくなり、一人上京をして、最初はスナックでバイトをしていたのが、そこで食品会社の社長と知り合って、経理の仕事に転身したというわけだ。
洋子は夫の残した借金を返すために、切り詰めるものは出来るだけ切り詰めて働いた。
事実、クマも何度か彼女のアパートを訪れたことがあったのだが、質素な家具とテーブル、そして電話があるくらいの、四畳半一間だったという。
俺は知りえた限りの情報を頼りに、Y市へと向かった。この頃は北陸新幹線なんてものも出来ているから、予想外に早く着いた。
そして彼女の元住んでいた家も、案外早く見つかった。
(どうして見つけたかって?それは職業上の秘密という奴だ)
しかし、確かにそこには昔、大豪邸が建っていた後らしかったのだが・・・・今はその名残と言えば、辛うじて門が残るだけで、二棟のモルタルアパートがあるだけだった。
近所に古くから住んでいるという住人たちに何人か当たってみたが、確かに彼女がクマに語っていたことは、概ね当たってはいた。
しかし、これでは何も分からない。
諦めて他を探そうと、俺が踵を返した時である。
『おい』後ろから低い声で呼びかけられた。
『俺のことかい?』
俺はわざととぼけた。
『お前以外誰がいるってんだ?』気が付くと、近くの路地から2人の男が出てきて俺を睨みつけている。
一見して『ロクでもない奴だな』俺は思った。
『あんた・・・・何もんだい?』低い声の男が、特徴のある訛りで俺に言った。
『それを聞きたいのは、こっちの方さ』俺は笑いながらシナモンスティックを口に咥えた。
『どうせあんたの探してるのは、遠山洋子のことだろ?』
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