第5話 無慈悲な瞳

無の世界には私が一人。




そのはずだった。




ありえないことだ。




私の胸は高鳴った。




心を満たす希望が垣間見えた。




だけど、




そんな希望だとしても、




結局私は守るため。




心を守るため、




希望を殺す。




仲間と交わした約束を。




私の瞳は、




私のもとへ来る者に。




あれは希望で、仲間ではない。




私は狙い、眉間に放つ。




私の腕なら外すことはない。




久しぶりに銃声を聞いた。




花は希望からあふれ出る血潮に染められる。




殺した私は息を吐く。




死の気配が漂い始め、




希望が立ち上がった。




私は守る。




だから撃つ。




頭を眉間を首を腕を足を心臓を全身を。




それでも希望は立ち上がる。




死に包まれ立ち上がる。




幾ら撃てども近づいて、




とうとう私の目の前へ。




もう、銃は構えられない。




希望は私に瞳を重ねると、




始めまして。




私は声を聴いた。




久方ぶりに話しかけられた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る