第33話 妹は強し
結界と共に扉が弾ける。顔のすぐそばを飛んで行ったそれは後ろの壁にぶつかって盛大な破壊音を立てた。
それが嵌っていたはずの穴の向こう、廊下にいたのは目元以外を布で巻いて覆い隠している男の人だった。体格的に男でしょ、うん。彼の表情はそのせいでよく分からないが、私を見てかすかに驚いたように目を見開いた。
「前情報では大人の女と聞いていたが……。はっ、さてはお前、人魚の肉を食って……!?」
「十中八九人違いだからやめて!? 撃たないで話を聞いて!!??」
素早く向けられた銃口に両手を上げながらすぐさま否定する。この口ぶりからするとこの人はあの女の人を探しているのだろう。
止まっ動きにこれまでの事情を話す。するとどうやら分かってくれたようで銃が下ろされた。よかった、話の通じる人で。
ふむ、と小さく聞こえる。
「間違えて悪ィな。じゃあもう結界も破れてることだし、晴れてお前は自由だ。好きなところに行けばいい」
そう言うなりスタスタと去っていこうとする彼をそのまま見送りかけてはっとする。ここで自由になっても兄ちゃんのところに帰る術が無いじゃない! あの男の人が外から来て、ここを襲撃しているなら敵の敵は味方理論が通じるのでは!?
ならば取るべき手段はただ一つ!
「ちょぉっと待ったぁぁぁ!!!」
「ぶべっ!?」
走って、全力で彼の腰に飛びつく。すぐに頭上から抗議の声が降ってくるが離しはしない。
「もう自由にしろっつったろ! ほら離れろ!」
「帰り方が分かんないのよこんなところに幼気な美少女を一人置いてくわけぇ!?」
「うわこいつ自分で美少女っつった自分で美少女っつった!!!」
しばらく言い争いをしながらずるずると引きずられていると後ろから突然怒声が聞こえてきた。
「いたぞ!」
「あそこだ!」
「やっべ」
するとふわりと身体が抱えられて、見えた海賊たちが一気に遠ざかった。速い。とても速い。
「舌噛むなよ!」
後ろ向きに抱えられているので前方は見えない。しかし後ろから追いかけてくる海賊たちはよく見える。てか目が合う。銃口がこちらを向く前に魔術で思いっきり転がしてやった。小娘だからって舐めんじゃないわよ!
男の人はそれに気づいたようでふっと笑ったような気がする。
「しゃあねぇ、運搬料はそれで勘弁してやらぁ! 背中は任せたぞ!」
「わあい交渉成立!」
これで足は確保した。あとはここから脱出するのみ。
待っててね兄ちゃん、妹は強く生き、そして絶対に帰ります!!
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