第63話 竜玉の代替わり
「どうした、問題でもあったのか?」
「ベネット」
調査班のところまで行くと、そこではざわざわと騒がしい彼らのそばでハルイチさんが調査結果が書かれているらしい紙を睨んでいた。
彼が大アリだ、と答える。その眉間には峡谷のように深く皺が刻まれている。
「竜玉もあの雲にも問題しかない」
「……具体的に聞こう」
その言葉に頷くと彼は俺たちにその紙を見せた。そこには多くの項目とそれに対応しているらしい数値がズラリと並んでいる。うわ何だこれ訳分っかんねえ。
俺にはよく分からないが赤いインクで印が付けられているところの数値がおそらく問題の部分らしいことはわかった。
「この数値は竜玉の劣化部分、つまり竜玉が魔力を精製した際に駄目になる部分の割合を示している。これが竜玉全体を占めると竜玉は死ぬ。そしてこっちが竜玉の魔力維持年数……竜玉の年齢だ。スズメ、これを見てなにか気づくことは?」
「えっ、アタシ?」
まるで学校の先生のように説明をするハルイチさんに突然当てられたスズメさんはえっと……と戸惑いながら答える。
「……劣化部分の数値と一緒にパーセンテージが書かれてる。99.9強。竜玉の年齢が、218……? これって年寄りなのか、若いのか? てかこのパーセンテージってそれだけ劣化部分が大きいってことなのか? まずくないかコレ? ちょっと大袈裟なレベルじゃないよな?」
「劣化部分の解釈は合ってるな。……待て、そんな顔をするな話を聞け。まだ続くぞ」
俺たちの顔が曇ったのを見た彼がペシペシと魔力維持年数の数値を指先で叩いた。
そうは言われても劣化部分がそこまで占めていたら竜玉は死にかけということだ。こんな顔になってしまうのも無理はない。
「218。これは竜玉が218歳であるということを示す。竜玉の平均的な寿命は120年から150年程。この竜玉はかなりの長寿だ。つまりこいつはいつ死んでもおかしくはない。元々死にかけだったから瘴気にも侵されてしまったのだろう」
「そんな……っ」
じゃあどうすればいいんだ。そんな気持ちが伝わったのかハルイチさんが簡単なことだ、と言う。
「竜玉の代替わりをすればいい」
「竜玉の代替わり?」
なんだそれ、スズメさんが眉を顰めた。俺も分からない。ベネディクトがなるほど代替わりか、と呟いたので聞いてみる。
「竜玉の代替わりって何だ?」
「ああ。竜玉の代替わりってのはその名の通り、古い竜玉から新しい竜玉に代替わりする事だ。竜玉はな、元は竜で、命を全うした力の強い竜がなる。この巣の場合は入口で会ったあの竜の王だな。多分、代替わりをしようとしたところで竜玉があんなことになって、出来なかったんだろう」
「じゃあ、代替わりさえ出来れば……」
「少なくとも、瘴気は浄化出来る」
頷いた彼にやったじゃん、と言うが彼の顔は晴れない。
「……どうした?」
「……それがそうそうできねぇ
言われたハルイチさんがそうだ、と言ってまた別の紙を取り出した。
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