第17話 我ながらいい仕事したと思う

「思わず買い込んじゃった……」


 別行動をしているメイ達と合流するために宿までの道を歩く。その道すがら、ランは大束になった薬草を抱えてため息をついた。

 背は俺より少し高いが、なんせ細見なのでその重みで折れてしまいそうに見える程の束の大きさに思わずうわぁ、と声が漏れる。

 身体より束が大きいってどういうことだよ。


「少し持とうか、見てるこっちが折れそうで恐い」

「ふふ、大丈夫だよ。流石の僕もそこまで柔じゃないって」

「そう言うわりにはフラフラしてんじゃねえか」


 干し薬草もこれだけあればそれなりに重いんだな、と言いながらベネディクトが横からひょいと束の一つを持った。ちょっと、と声を上げるランの頭をぽすぽすと叩いて、いいだろ、と笑う。


 ああ、きっとこういうことを自然にできる奴がモテるんだろうなぁ……。顔もいいしなぁ……。


 ランは不満そうに唇を尖らせたが、ベネディクトには何を言っても無駄だと思ったのか礼を言って残りの束をしっかりと抱え直した。



「あ、兄ちゃーん」

「お、メェェェイ?」


 手を振る妹を見つけ、振返そうとして首を傾げる。急に立ち止まった俺にランはどうしたの、と声をかけるが、駆けてくるメイを見て、その顔をほころばせる。


「わあ。メイちゃん、可愛いの着けてるね」


 そう、それだ。俺が首を傾げたのは、妹の銀髪に藍色の飾りが着いていたからだ。

 繊細な装飾が施されているそれは、素人目に見ても高級品であることがうかがえる。


 てか昔船長が見せてくれた超高価な装飾品と同じ感じがする。たしかあれ、ゼロ何個付いてたっけ……。


「でしょ、きれいでかわいいでしょ?」

「……うん、綺麗で可愛いな」


 取り敢えず下手なことを言って妹の機嫌を悪くするのはごめんなので素直に褒める。

 そのままベネディクトとワーナーさんの所に行った彼女がころころと笑うのを横目にハルイチさんとレヴィさんに聞いた。


「あの、メイの髪飾り、どうしたんですか」

「あー……。まあ、気分だ、気分」

「気分で買えるようなモンじゃないですよね、アレ。ゼロが何個も付いてる系のやつですよね俺なんか見たことあるもん!」


 ここまで言うとハルイチさんは言い逃れが面倒になったのか力業に出始めた。知的に見えてけっこう押しが強い。


「……あぁー、もうっ! 我らからの好意だ、大人しく取っておけ!」

「女の子というものはどんなも綺麗で可愛いものが大好きなんですっ!」


 レヴィさんそれ言い訳になってない。


 更に言葉を重ねようとすると勢いよく押し切られ、メイの元へと背中を押される。その力の強さに少しよろめくがなんとか踏み留まって抗議の声を上げようとするも目で促され、彼女の傍へと行く。


「ハルイチさんとレヴィさんが買ってくれたの。ほら、兄ちゃんと同じ藍色」


 ……たしかにその髪飾りは俺の髪と同じ紺青色で、彼女の銀髪によく映えていて、かわいい。

 おそろいーと笑うメイの可愛さに思わず抱き締めそうになる。

 さっきはああ言ったがハルイチさんとレヴィさんナイス、と二人に向かってサムズアップした。


 ハルイチさんのあのドヤ顔は多分一生忘れない。

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