第11話 クワトロ永久要塞

 丘を越えたら要塞街の入口が見えるらしい、周囲には行商人達や街の住人もちらほら行き交う。


 今の神流かんなの服装は、ミホマの旦那の平民服だ、サイズはデカいが目立たない。


 べリアルが見たらなんて言うかな?


 ここまで働いてくれた礼として、夜狼達に食事を与えてから茂みに隠れて【帰巣ホーミング】と【自動解除オートリリース3d】を撃ち込み解放した。


 刻印を応用して時間を付与出来るのは使い勝手が良い、因みに3日後=72時間後に契約解除される。


 徐々に海が見えてきた、無限に波打つ大海原が太陽の照射を跳ね返している。


 巨大な船が何隻も見える、かなりインスタ映えする風景だ。


「もう見えてきたな要塞はあれか? ところでレッドこの要塞の王様は誰だ? 後、この国の名前も記憶喪失なんだよ」


『そうすか、国はトリュート王国といいます。王様の名前はリンク・アルフレット様で此処には居ませんね、というか見たことも無いですねぇ』


『クワトロ要塞は、城伯、都市伯を兼ねたエルネス・キュンメル伯爵様が要塞を含む王国の辺境を統治してるんですよ』


 もう慣れたように説明される。


「おお、そうか確かそんな気がする有難う」


 城門に近付くにつれ要塞の巨大さが解る、高さが40~50メートル位で、砲台まで着いてる塔が4本建っている。


 だからクワトロなのかも、10メートルや20メートル付近の上のエリアにはパラスと呼ばれる居館も建っていて圧巻だ。

 跳ね橋を渡り城門に進むと少しドキドキしてきた、城門には格子の鎧戸が付いている、普通ならスマホ出して写真撮りまくりだろう、門衛棟も間近だ。


 神流かんながソワソワしていると門番の衛兵に声をかけられた。


『おいッお前はコッチだ、レッド・ウィンドの小間使いだろ、婆さん視てくれ』


『次に婆さんと呼んだら許さんぞえ、ホワン様と呼ばんか!』


『いいから視てくれよ魔術士殿、後がつかえてんだよ』


 神流かんなは、せかされて木の椅子に座らせられる、すると目の前で小枝を振ってるお婆さんにキッと睨まれた。 


 何故だろう?心当たりはまるで無い。


『なんじゃ…………………肉体レベル3魔力レベル1赤縞』


『レベル低いのに赤縞か、おいお前この赤縞の書類2枚に名前と年齢を書いた後インクを付けて親指で押印しろ。街で悪さするなよ』


 1枚の紙と鉄のメダルを貰っただけで、あっさり中に入れた。関税の小銅貨2枚はレッドに借りた。


『やっぱり旦那は赤縞かぁ初めてこの街に入るんだから仕方ないですね。犯罪を犯すかも?の紙の模様ですよ。人殺しとか犯罪を犯したら押印で魔力の追跡調査をされますよ。けれど10日間犯罪を犯さなければ紙から赤縞が消えます。紙を見てもいいすか?』


 レッドが俺の紙を覗く。


『旦那がレベル3で魔力1ですか? 旦那の強さで、有り得ないですよね? しかもアッチより1つ年下、これからはレッド姉さんとアッチを呼ぶといいですよ』


「俺の年齢は大体だ、俺が怒る前に早くお前の店に連れて行け」


 鉄のメダルは平民階級の証明用らしい、証書が燃えたり水で濡れてもメダルが残ってれば再発行の手続きは金額も安く簡単になると言う。

 昔の欧州的な街並みが続いている、街中の導線は街の中の城壁から離れているが、沿ったように真っ直ぐ街の奥に続いていく。


 パッと見は千葉にあるアミューズメント施設よりデカい。門の近くで屋台や出店みたいのも見える荷物の受け取りや小物を渡してる人、そして獣人が多い。


 獣人は確かに居たが殆ど奴隷か重労働者だった、兵隊に成れれば平民階級に上がれるらしい。入口から近いこの辺りは平民が住んでるエリアだろう、菜園や畑そして厩舎まである、RPGなら真っ先に武器屋と防具屋を探すだろうが俺は1Gも持っていない。取り敢えずこの街での拠点を早く確認して落ち着きたい。


 神流かんなが歩きながら道沿いの八百屋や魚屋そして雑貨屋等を、眺めていると圧倒的に魚屋がデカい事に気付いた。


 海の恩恵をかなり受けて居るのだろう籠城してもしばらく食料を賄えそうだ。


 歩くこと30分で目的地である、レッドの店舗に辿り着いた。看板の横に「雑務雑用お困り事ご相談下さい。ハイド店主まで」と書いてある。


『旦那、情報とか秘密と書くと官憲が来ちゃうんで 偽装ってヤツですよ。アッチはチョッと出掛けて来ます。大人しく2階で休んでて下さいよ』


「解った」


 中に入って内装を見回して見ると店舗の1階は、カウンターと物置だけだった。

2階に上がるとワンルーム位のスペースにベッドと小さいテーブルが置いてある。


 何故かべリアルの事が、気になる何故だろう?


 神流かんなは部屋を見渡し終えると、レッドに借金が有る事を思い出した。


 街の探索を兼ねて、用事を済ます事にした。


 「向こうは来た道だからな、奥に行ってみるか、今後の為に知ってるエリアが増えた方が良いだろ」


平民街は、商店や物作りの店が多い思ってた程汚い感じでは無かった。


 街を見渡しながら、しばらく歩いていると興味をひく路地が神流かんなの目に入った。


 掘り出し物が有ったりなんて、思いつつ路地に入ると占い師がこんな狭いところで商売している。


 知らない街の醍醐味を、味わってる感じがする。


 神流かんなが、邪魔にならないよう通り過ぎようとすると


『そこの方、此方へ』


 呼びかけられ目が合った瞬間、占い師の月のような美貌と圧倒的な存在感に引き込まれ神流かんなは身じろいだ。


 気品ある美人の占い師から、光り輝くオーラが出てるような錯覚に襲われた。



『ようこそ占い屋フォーチュンテイリングショップノーザンクロスへ』

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