第9話 貴族という名の
貴族の1人が
『ジャーミィ家の領地で無許可で商売してるのか? 挨拶はどうした?』
『貴族様、許可証は持参しております。どうぞ穏便にこれをドウゾ』
店主はザル一杯の果物を差し出す、貴族の男は引ったくって食べると吐き出した。
『オイッこんな不味い果物食わせやがって、後ろにいるのはジャーミィ家のギード様だぞっ』
「ガッガツッ」
男はブーツで店を激しく蹴飛ばしだした。
『お止めください』
店主な泣きそうな表情で、止めようとするが貴族の男に睨まれ、すくんで動けなくなる。
この世界の貴族ってヤクザの事なのか? まだ10代に見えるがチンピラ過ぎるだろ、頭の痛々しい奴等が貴族とか異世界世紀末だ。
『居た!』
街道の先に馬に乗った、見回りの兵士らしき2人が見えた。こちらを伺っている。
『オイッ後ろの娘、出てこいよっ』
貴族がもう1人馬から降りて来た、店の後ろから無理矢理娘さんを引っ張り出そうとする、もう店は半壊している。
『イヤァ!止めて下さい』
『お待ち下さい! 私共が何をしたと言うのですか?』
『ジャーミー家の領地で商売をしたら貢ぎ物を出すのが当たり前だ』
この国は許可を取っていても、こんな仕打ちをされるのか? こんな明るくて人目も有るのに本気で拉致する気か? イカれてる、困ったなレッドが俺を行かさないように強く袖を握っている。
『早く出てこい!』
店の売り物を散らばらせながら店主の娘の髪と服を引っ張り引きずり出した。
『馬に乗せろ』
『待って下さい娘は婚約しております。どうか御容赦を!何卒ご容赦を!』
店主が涙ながらに訴えるが3人の中で1番豪華な白いジュストコールを着用しているリーダー格の男は冷淡に繰り返した。
『乗せろ』
2人は店主を手荒く蹴り退かして娘さんを積もうとするレッドは震えてるのか動けない。隣の店の人達も御願いはしているが足が竦んで動けずにいる。
諦めず店主は歯を食い縛り、蹴られた痛みも口から流れる血にも構わず身を挺して馬との間に割って入る。
『しつこいんだよ! 貴族に逆らうのか?』
店主が手荒く倒され剣を突き付けられた、それを見て貴族のリーダー格の男が口を開く。
『邪魔だから殺していいよ、ていうかもう殺さないと気が済まないしつこい奴は無礼打ちだ! ヤッチャエ!』
「イヤァー止めてーー!」
店主の娘が大声を上げる最中に取り巻きの貴族は突き付けていた剣を振り上げ、躊躇いもせずに店主の胸に突き下ろす。
『ギャア』『グアアッ』
剣を刺そうとした2人が倒れて転げる、その2人を見て驚きつつも不機嫌になり殺気を放つリーダー格の男は、高価そうな剣をゆっくり抜いて馬から降りた。
そして転がる2人に「べリアルサービル」を向けている
『お前、何かしたのか? 俺はジャーミィ男爵の息子ギード・ジャーミーだ! 逆らうと、ちっぽけな命だけで無く家族を皆殺しにするぞ!』
「殺すなら、試しに俺を殺してみろ」
『望みを叶えてやろう直ぐに死ぬがいい!!』
ギード・ジャーミーが
『ウガゥ』
ギード・ジャーミーが倒れ
「人間の尊厳を踏みにじるな、そして反省して死ね」
「殺すわけないだろ普通。 君達はアホですか?」
『このヤロウ!』『殺してやる』『 殺す!』
血眼で向かってくる3人に
「平気ですか? 酷い目に合いましたね」
オジサンが気付かないように柄を当てて【
周囲を見渡して
【
最初から遠慮しないで、しこたまべリアルの刻印を撃ち込んで置けば良かった気がする。
『魔導師様有難う御座います。有難う御座います』
涙を浮かべながらお礼を言われた、更に売り物の商品の幾つかを無理やり渡された。
この辺の全ての土地がシード・ジャーミィ男爵家の領地らしい、さっきのギードは次男で残りの2人は普通の貴族の息子らしい。
「レッド、折角の忠告だったが悪いな俺の行動はたまに心が勝手に判断するんだ」
『旦那、さっきは何も出来ずスイマセンでした。アッチは……』
下を向くレッドの肩に手をやり慰める。
「街の住人のお前が、交ざるとややこしくなるから勝手に俺が1人で追っ払ったんだよ」
レッドの顔は曇っている、可愛い顔が台無しだ。
「気にするな! 俺が狙われる方が解りやすい何かあったら強いんだから影からバレないように守ってくれよ、ホラ貰った瓜を食え」
『さっきの件で困ったら、名前だけなら出していいですよ、俺の名は
街道の岐路で、まだ頭を下げて見送る
「貴族か…ワインを飲んで優雅に社交ダンスしてるイメージだったのに……ある意味、魔物よりも厄介な存在だな」
自分が厄介の巣窟に向かっていることに嫌悪感を覚え葛藤していた。
*
貴族にお帰り頂き
『旦那の飯は見た目が凄いですねぇ』
「まぁ食ってみろ不味いなら残せ」
『この血みたいなお粥は何て言うか旨いですねぇ、この油の野菜と肉も、えーと旨いですねぇ』
飛び散ってる事に本当に気が付いてないのだろうか? 油汚れは洗っても落ちないと言い忘れてた……トボケよう。16歳らしいがアイツはわんぱく過ぎる。
『シーシー満腹で満足ですよ』
木の棒を爪楊枝みたいに使ってお腹を
「なぁ街にはアイツ達みたいな貴族が多いのか? ある意味獣人より狂暴なんじゃないのか」
『街にはもっと偉い貴族達が居るけど住人には基本的に無関心ですよ。領主達にとって領民は奴隷同然なんですよ』
『旦那はなんで乙女絶好調のアッチを抱いてくれないんですか? シーシー』
「何で話題がいきなり変わるんだよ、自分を大事にしろ大体お前は俺より強いし俺より筋肉ムキメキで身体が石みたいに堅そうだしなハハハッ」
『ガッ』
木のスプーンが頭に飛んで来た。痛い。
『旦那なんて嫌いですよ!』
「……何だよ。自分で聞いてきたクセに痛テテ」
「おい機嫌直せよ」
アイツが怒ってるのは間違いない何か地雷を踏んだか? 少女を怒らしとくのは年長者としても面倒だ。
「レッド向こうの奥の茂みに居る奴等は牛の魔獣か? 5メートルはあるぞ」
『なんですかぁ? アレはギャングキャトルという種類で魔獣位強くて気性が荒いんですがただの牛です。此方から何もしなければ襲っても来ないですよ』
「じゃあ短剣の実戦も兼ねて狩るか?」
【
巨大な牛が敵意剥き出しで一直線に
短剣に
「どうだ使えそうか?」
『こりゃあ楽っすねぇ旦那』
機嫌が直って良かった、すぐ牛に【
流石に牛肉は嬉しい、俺は「サーロイン」「ヒレ」「内モモ、外モモ」を切り分けて皮の風呂敷みたいのに巻いて
レッドも必要な分は取ったらしいので待ち兼ねている夜狼達に「GO」を出すと瞬く間に大きな牛は骨へとなっていった、凄まじい牙の威力を間近で見せつけられる。
昨夜ガブリとされなくて良かった。
何か事件や騒動が起こった時に「アイツが魔法を使ったんだ」と魔女狩りのターゲットにされたくない。夜狼はあくまでも長期間「調教」の形にする何なら俺が狼に育てられたでも良い。
ー*
今日も野宿だ、夜営する場所を確保し焚き火をし食事を済ませてから警護する場所に夜狼を配置した満腹になったレッドが寝た後に
「ベリアル話がある開けてくれ」
目の前にある木の幹に存在感を誇示するかのようにシジルゲートが浮き出てきた
夜狼は主人が消えた扉を見つめ伏せて待機を始める。
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