第一楽章 堕天使べリアル
第8話 レッド・ウィンド
「オ…グァ」「ガ…ガガ」「ウ…ォ」
薄暗い柱だけの広間に何かが
広間に轟音が響いた。
『ドッグォーン』
重厚な鋼鉄の扉が、軽々と蹴って開けられる。
『グァァ鎮まれ邪霊どもぉ! 邪神様がお怒りだ! 用済みのお前らが儀式の邪魔するなら魂を消し炭にして消滅させるぞ!』
宝飾品をこれでもかと装着した上半身がカラスの男が吠える、怨霊たちは呻き声を上げながら柱や壁に逃げて消えていく 。
カラスの悪魔の手には心臓が何個も握られている、生きているのか力強く脈動し続けている、邪霊と罵られた霊達が大人しくなるとカラスの悪魔は満足して元の部屋に消えていった。
ーー ーー ーー ーー ーー
虫には言葉の壁があるから直接効果のある刻印じゃないと効いてるのかイマイチ解らない所が有る、有るか知らないが虫言葉やテレパシーを修得したら変わってくるだろう。
試しに虫に2個目の刻印を撃つと気絶する、体の大きさによって刻印を受け入れる魔力のキャパが違うのかも知れない。
他にも1つ実験をしてみるがまだ効果が解らない。
『旦那、焼きパンと焼き魚ですよ。コイツらはどうします?』
レッド・ウィンドが焼いた夜狼のホネ付き肉をかじって聞いてきた。
逞しいな、因みに夜狼は魔獣ではない魔物は一定の瘴気が漂うとこに多く出現するらしい、瘴気の無いところに居る魔物や魔族は特別と言っていい程レベルが高く見つけたら逃げろが合言葉だという。
青山羊悪魔メンがそれに該当するのだろうな、俺は夜狼は食べないと言ってあるが狼の肉は「香肉」っていうのが中華料理であった気がした。
「ありがとうソイツ達は放って置いて良いよ。」
『周囲を代わりに警戒してくれるなんて本当に便利な魔法ですね、街に居る魔術師のお婆が見たら驚きますよ絶対』
「そうか、でも俺が魔法を使えるのは企業秘密だからな、レッド寝る前にオルフェに水を飲ませてやって欲しい」
同志でもある馬の名前は「オルフェ」にした大人の事情は関係ない、夜狼達には【
戦闘で殺した夜狼達はレッド・ウィンドの食事と保存食となり毛皮となったアイツは器用過ぎる。
『お水っすね了解です。ところで旦那は、この年頃の淑女をいつ抱いてくれんすか?』
「そんな予定は入って無いよ、俺の知ってる淑女とも違うしな」
『こんなに乙女なのに、色気はムチムタなのに手を出さないなんておかしいですよ、またとない男女二人きりの絶好のチャンスタイムの祝福』
何語だ? 何を言いたいかよく解らないが。
「じゃあムチムタだからだ」
『ガーンですよぅ』
何処まで本気なのか、レッドはぶつぶつ言いながら馬に水をやりに歩いて行った。
「ビール造りが盛んで酒造組合もあります」
と言うレッドの言葉に行ってみたいと思ってしまった。要塞街でなら世界の情報収集も出来そうだ、2人でなら単価のかなり良い仕事が出来ると言うレッドの言葉に乗った形だ。
さっきの夜狼の襲撃だが殆んど倒して始末したのはレッドだ、俺が居なくても全滅出来る位に強い。
レッドは戦いながら何かの呪文を唱えて魔法を発動していた。
『ウィンド一族に繋がりし闇の精霊様、影を霧散させこの身に纏わせよ!【
レッド・ウィンドの周囲に黒い霧が現れ空中に静止し、それがレッド・ウィンドを全方位から隙間無く覆い隠し闇に消えていく。
夜狼は短時間で殆んど殲滅された、死角からくる見えない攻撃は避けれるはずもない、どう考えても俺より強いだろうレッドでも悪魔に勝てないのか……。
*
『旦那、終わりましたよ』
「ご苦労様な、ちょっとお前の短剣を出して見せて貰えるか?」
『短剣ですか?』
首を
『旦那、何ですか? この気味悪いマークは?』
「当ててみないと解らないが刃先が
『
「いやいい、まだ使ってみないと効果が解らないけどな明日に響かないようにな俺は寝る、おやすみ」
毛布をかぶり眠りにつこうとしたら、レッドも毛布を持ってきて俺にくっついて横になる。 文句を言おうと思ったが本当に疲れたようで直ぐに寝息を立てて眠っていた、正直よくやってくれてるし御荷物の俺が文句など言えるような立場ではない、レッドの毛布をかけ直してやり感謝して眠りについた。
指輪は稀薄な光を夜の闇に妖しく発し続けていた
~~*
遠空が赤みを帯びて明るみ始めた、もう少ししたら青白い夜明けの光を放つだろう
『旦那、朝早すぎですよ……なんすか? この旨そうな匂い』
ブー垂れたくせにガッついてる、相変わらずスプーンを全握りだ幼稚園でもあんなに汚さない。
コーヒーが恋しい今日この頃だ、早く起きたのは明るい内に進んだ方が休憩を沢山とれると気付いたからだ。 ペースで考えるとレッドの5日は100km位だと思うが、俺は1日で20km歩くなどまず無理せいぜい10~15kmが限度、惰弱な俺にレッドも呆れてるだろう。
峠を降りきり大きめの街道に入った、チョットした平原に街道のラインが続いている。
向こうから10人位の集団が街道を此方に進んでくる。普通の人間ではない、
『ちゃいますよ虎族の兵隊じゃないですか会釈して通り過ぎましょうよ』
虎族? 獣人というやつだな、リアルタイガーマスク軍団が剣を持って馬に乗っている。これは怖い、初見な俺は青山羊悪魔メンと同じ位緊張したが会釈したら珍しそうに夜狼を見て通り過ぎて行った。
「アイツ等は街に一杯居るのか?」
言葉がおかしいがレッドに聞いたら人族と同じ位居ると言われた敵かどうやって見分けるか聞くと『敵意』とケロッと言われた。
夜狼とも上手く戦わずに木の上に上がったりしていた、『敵意』は全く無いようだが距離を保って追随してくる。
べリアルサービルの射程外だから放置している。見えた白い猫の種類は多分『アシェラ』だと思うベンガルヤマネコとアフリカンサーバルと家猫を掛け合わせた高級猫だ。ちっちゃいホワイトタイガーのようで日本でなら1000万円近くはするだろう、高級ネコが敵で無い事を祈ろう。
*
ーー陽が上がり寒々しい街道を鮮やかに照らしてくれている。
2時間位、進んでも誰ともすれ違わず人通りが少ない事に不安を感じたが構わず進んで距離を稼ぐ。
遠くに街道が二股になる岐路があり、その先にある側道に行商が仮店舗を建てていた。
夜狼達を少し離れた場所で、伏せをさせて待機させる、言葉が伝わってるのかイマイチな気がしたからジェスチャーをメインにしてる。
『どうですか? お兄さん新鮮な野菜や果物等は、要塞街まで結構な距離あるよ』
ベテラン風のオジサンに声をかけられる。親子で商いをやっているみたいだ、店の板の上には木箱が並び新鮮な野菜や果物が詰めてあった。
その隣のオジサンの店は香辛料を扱ってる、端の店では袋にはいった粉みたいのを売ってる。
勿論|俺は一文無しという旅人だ。
見るとレッドが何か交渉して受け渡しをしている、ボケッと見ていると渾身の笑顔でコッチに歩いて来た。
『旦那売れましたよ、夜狼の毛皮が中銅貨2枚になりました。半分どうぞ』
「いいのか? 倒したのもお前だぞ」
レッドが
『旦那、つまらない事を言わないで下さいよ! アッチに恥をかかせないで下さいよ!』
怒られた
サービスをしてくれて小銅貨4枚で済んだ。異世界で初めての買い物は予想以上に選ぶ楽しさがあり楽しかった、後でレッドにもう一度礼を言おう。そう思っていたらレッドが俺を静止するように前に来る。
『旦那! 貴族が来ました。逆らうと無礼打ちで殺されますよ、端に寄りましょう』
レッドが緊張している冗談の類いではないようだ、何故だ?
貴族が買い物でもするのだろうか?
貴族の男が、店舗の前から身を乗りだし店主のオジサンに、脅すように話し掛ける。
『おい、ジャーミィ家の領地で無許可で商売してるのか? 挨拶はどうした?』
周囲に不穏な空気が流れ始め、離れてる
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