3 パラメーター
「こちらがパラメーターの設定画面です」
宙にホログラムらしき技術で映し出されたスクリーンには、各種パラメーターとそれを変動させるレバーがあった。
「実際には50ポイントを振り分けるんですが、今回はお詫びを
つまり、多少チート的な境遇で異世界を楽しめるのか。
ということは大活躍して英雄になり、左右に美少女をはべらせて、超大金持ちになるのも夢ではないのかもしれない。
くっふっふ、と悪い笑いがこぼれ出る。
さてさて、パラメーターとやらにはどのような項目があるのだろうか。
【
【
【
【
【
【
【
「パワーは単純な攻撃力の高さか?」
「だいたい、そんな感じです。そちらを高く設定すると、他には、強力な大剣を装備できるようになったり、邪魔な巨石をどかせるようになったり、転生先の世界では色々と便利になります」
なるほど。確かに丈夫な体を持つに越したことはないな。
だが、俺が知る世界で力仕事を行っていた人間は、勝ち組とは言い辛い生活を送っていた。
単純な作業しかできない人間は結局、金持ちに支配されるだけだ。
なので、俺もそれに見習って金を稼ぎやすくなりそうなパラメーターを上げるべきなのかもしれない。
「マインドは頭の良さか?」
「はい、思考が柔軟になりますね。他には精神面を安定させたりもします」
いつも馬鹿扱いされてたからな~、主に誰かさんが設定を間違えたせいで。
だが、トークやチャームも捨て難い。
トークは恐らくコミュ力のことだろう。
そして、チャームは見た目や人望の良さってとこかな。
人脈を上手く活用することができれば、頭が多少残念でも大金にありつけるかもしれない。
けれど、チャームとトークはどちらか一方というよりは、セットで振ると効果が増しそうなパラメーターだ。
二箇所に多めに振るのは、少しもったいない気もする。
「マジックってのは何だ? 手品が上手くなるのか?」
「それは魔法の才能を決めるパラメーターですね」
魔法? 俺が行く異世界には魔法があるのか。
おら、なんだかワクワクしてきたぞ!
「MPの最大値や、習得可能な術式の種類が増えます。ですが、最近エレニアでは魔法よりも、魔法道具の方が盛んですね。回数制限がありますけど疲れもしないし、習得に苦労を掛けなくて済むので便利らしいです」
なんだ、そうなのか。
なら、マジックにもあんまり振らなくて大丈夫だな。
横にあるスピードは別に詳細を聞かなくても、大体想像がつく。
リストをゆっくりと滑り降りる俺の視線はとある項目で静止した。
「ラック……」
「ラックには最低限でも、1ポイントは振ってくださいね。さっきも言いましたが、そうしないと、確率が絡む出来事では必ず最悪の事態が発生しますよ。例えば、どれだけ頭が良くても受験で名前を書き忘れますし、どれだけ力が強くても幼児相手に腕相撲で負けます。ちなみに、他のパラメーターも同様で必ず1ポイントは振る必要があります」
幼児とプロレスラーの腕相撲に確率など存在するのだろうか。
まあ、生まれてから死ぬまで対戦ゲーム、スポーツ、さらには確率的に勝率が五分五分なじゃんけんを含む、全ての勝負事で勝った覚えがない俺には信じられるな。
ここは優先的に振っておこう。
とりあえず各所に1ポイントずつ振り分け、残りをどう振るべきか悩んでいると、ふと妙案が俺の脳裏を
「ラックに残りを全部振ったら確率が絡む出来事で必ず勝てるのか?」
「理論上はそうですね。攻撃を全て躱せるようになったりするはずです。そんな馬鹿げたことは一度も試したことがないので、知りませんが」
「よし、それでいこう」
「え? 他の項目には振らないのですか?」
「そうだ」
「流石に、多少はパワーやマインドに振らないと苦労すると思いますよ?」
「筋力は体を鍛えればどうにかなる。マインドも勉強をサボらなければ大丈夫だろ?」
「まあ、確かに育つにつれて能力値が上がったりもしますが……」
「なら、問題ない。それに育ってもあまり変動しなさそうな、ラックに全てをつぎ込むのは得策と言えるだろ?」
「浮雲さんがそうおっしゃるのならば、止めはしませんよ」
よし、決定だ。ラックのレバーを画面端までつーっと引っ張る。
「はい、完了」
確定と書かれたボタンをぽちっと押す。
「あわわ、まだ転生先の赤ん坊を設定していませんよ!」
「え?」
「このままでは転移になってしまいますが、宜しいですか?」
「別にどっちでも構わないぞ」
「それは良かったです。転生に変えたいと訴えられても、もうどうしようもないですからね。見た目はコピペでオッケーですよね? もう時間ないですし」
ばちっと停電のような音が鳴り、全てが目の前から消え去った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます