二次創作に関するモラル

「そういえば・・・」


 キリンの作業中に、ふとオオカミが切り出す。


「モラルを守るってのは大事なことだと思わないかい?」


「・・・なんのことですか?」


 その言葉にキリンも手を止め、疑問符の浮かんでいるような顔をする。


「例えば、だよ?原作者が定めたルールを守らなかったり、それこそ敬意の足らない創作をしたり。それってイケナイと思うんだ」


 そこまで言い終わったオオカミが、おっ、と小さく声を漏らす。理由は、テーブルを挟んで向かいにいたキリン。珍しく、と言ったら失礼だがなかなかすることの無い真剣な表情をしていた。


「・・・もっと詳しく聞いてもいいですか?」


 なんだか、創作に対して真面目になってきたかな?なんて思いながらオオカミは答えを返す。


「もちろんだよ」





「まず、繰り返し言ってる『敬意』の話だけど」


「はい!」


「さっきも話したことだけど、原作に対する敬意っていうのは本当に大事だよ。世界観を崩す、自分の人気のために利用する、というのがいけないって話はしたね?」


 キリンが頷きながらオオカミの話をメモする。メモ用紙代わりにされた書きかけの小説原稿・・・オオカミは心配の目を向けながらも、話を続ける。


「他にも、過度にキャラクターの口調が違ってしまったりするのも良くないかな、なんて私は思うね。それも世界観に含まれるのかもしれないけど」


「ふむふむ・・・」


 カリカリカリ、と鉛筆の先が削れる音。真面目な顔のキリン。その様子を見て、ふっ、とオオカミが言葉を投げる。


「キリンは他にどんなのが『敬意』を欠いた二次創作だと思う?」


「へ?私ですか?」


「うん、君なりの意見も聞いてみたい。あんまり考え方が偏るのも良くないからね、私の意見を吸収するだけじゃなくて君が考えるのも大事だと思う」


 なるほど、と相槌を打ってからキリンは考え込む。彼女なりの答えが来るまでオオカミは何分でも待つつもりだったのだが、ほんの数秒、十秒にも満たないくらいであっさりと答えは帰ってきた。


「中途半端なの、ですかね」


「ほう?どういうことだい?」


「作品をお借りして書くんですから、ちゃんとやらないといけないと思います。いくら趣味とはいえ、ふざけて書くのはダメじゃないですか?」


「なるほどね・・・」


 ぽん、と返ってきたその返事につい感心するオオカミ。しかし、彼女の言った言葉に強く共感するが少し引っかかる部分があった、


「でも、息抜きで二次創作するってこともあるだろう?そういうのはどう思う?」


「いいんじゃないですか?『ちゃんと』っていうのは、なんというか・・・技術を全力で注ぎ込んで、とかじゃなくてですね・・・」


「中途半端にやらない、って意味かい?」


「そう・・・ですね、最初に言ったそのままですけど。上手く説明できません・・・」


「そうか、私はその考え方は賛成だよ。そんな風に、自分なりに考えてみるのは大事だね」


「本当ですか?ありがとうございます先生!」


 ぱぁっ、とキリンの顔が明るくなった。





「それじゃあ、次の話といこうか」


「ルールの話ですね?」


 キリンがいつの間にか立って両手をテーブルにつく形になっていた。オオカミの話に夢中になっているということだろうか。尻尾がゆらゆらと揺れている。


「二次創作っていうのは、基本的は原作者からお目こぼしを貰ってするものだと思うんだけど・・・たまに、原作者が『二次創作していいよ』って言ってる場合もあるんだ」


「ふむふむ、今のギロギロに関しては、先生OKくれましたね?」


「そう、こんな感じにね。それで、そういう場合は大抵、二次創作のルールが定めてある。こういうのを守ってね、っていう」


「ふむふむ・・・」


 キリンが立ったまま紙にメモをしていく。さっきからこまめにメモをしているが、やはり文字を書くのは不慣れなようで少々時間がかかっている。


「じゃあ、ギロギロはどんなルールがあるんですか?」


「特にはないよ?強いて言うなら、その作品でじゃぱりまんを貰おうなんてしないでおくれ?」


「も、もちろんです!」


 オオカミが軽く放った言葉に、キリンが激しく動揺する。もちろん、じゃぱりまん稼ぎなんてしようとしていた訳ではないのだが。


「それと、ルールに関してはもう一つ。例えば、書いた作品をどこかのちほーで読み聞かせるとするだろう?」


「はい!文字を読めるフレンズは少ないですから・・・」


「その場合、じゃんぐるちほーだったらそこのルール、みずべちほーだったらそこのルールに従わなきゃならないね」


「うーん・・・?」


「まぁ、迷惑をかけちゃダメだってことだよ。そういう、公開する場所にもルールが定めてある」


「なるほど・・・」


「そういうのは守るべきだろう?」


「もちろんです!」


 正義感の強いアミメキリンのフレンズは、ガッツポーズをするような形で大きな声を出す。それに対してオオカミは、ふふふと笑った。


「作業の途中で悪かったね?もう少しで完成かい?」


「そうですね、もう少しです」


「そうか、頑張っておくれ」


「はい!」
























 作者よりルールに関する補足がいくつか。


 まず、最初の『原作者が定めたルール』について。作品によるので一概には言えませんが、けものフレンズなんかは公式サイトに定められています。けものフレンズプロジェクト公式の、ガイドラインに記してあります。

 リンク https://kemono-friends.jp/guideline/


 最後の方の、『公開する場所のルール』が云々のお話。

 アレは、いわゆる公開するサービスの話です。ここであれば『カクヨム』、他には『なろう』とか『渋』とか・・・(俗称です)

 そのようなサービスには利用規約がありますね。ちゃんと読んでますか?カクヨムなんかは特に厳しいので、ちゃーんと確認しましょうね。

 ・・・私としては、厳しいのはいい事だと思いますけどね?

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