オリキャラについて
「せんせぇ〜・・・」
アミメキリンが作業を始め数十分。ぐだっ、とテーブルに上半身だけ寝そべり、元気のない声を出す彼女。
「うん?終わったかい?」
「いえ、まだまだ・・・それで、相談というか・・・」
キリンはのそりと体を起こし、申し訳なさそうな顔でオオカミを見る。少し間を置いて、うつむいて上目遣いで、ポツリと。
「新しいキャラクターって作っても・・・」
の の の の の の の の の の
の の の の の の の の の の
の の の の の の の の の の
「つまり、オリジナルキャラクターを出したいという事だね?」
オオカミの言葉に、キリンは首を上に下に二回ほど。その様子を見て、オオカミがフムと息を漏らす。
「二次創作にオリキャラを使うのは大いにアリだと思っているけど・・・扱いは難しいよ?大丈夫かい?」
「でも、どうしても必要で・・・」
「どんなキャラクターを作ろうと思ってるんだい?」
「えっと・・・犯人のヤギのフレンズを」
そういえば、キリンは何かしらの紙が紛失したという事件を書いているんだった、そしてその犯人はヤギ・・・と。思い出しながらオオカミはそれについて考える。
(推理モノの犯人がオリジナルになるのは当然か・・・それなら特別難しいというわけでもなさそうだね)
「どうですか?」
「いや、それなら大丈夫じゃないかな。その事件に使うだけだろう?」
また首を上下させるキリン。元動物のせいか、首が長めの彼女はよくスイングが効いている。
「それなら大丈夫さ、自由に書いてごらん?」
「はい!ありがとうございます!」
オオカミがそう返事するなり、キリンは凄い勢いでガリガリと鉛筆を紙に擦り付ける。
そして、30秒ほどして・・・
「そういえば、『大丈夫じゃない』オリジナルキャラクターってどんなのですか?」
ふと、顔を上げて質問しだした。好奇心旺盛な名探偵(駆け出し物書き)に、少し嬉しそうにやれやれと口に出す一流漫画家。
「そうだね、『大丈夫じゃない』というと語弊があるけど・・・要は扱いが難しい、主人公やそれに並ぶ重要な位置にオリキャラを置く場合さ。・・・ん?」
簡単に説明をすると、キリンは鉛筆を握ったまま立ち上がり、目をキラキラさせていた。もっと知りたい、という顔だ。
「そういう所にキャラクターを置く場合、世界観を崩さずに存在できる自然なキャラクターであるべきだと私は思うんだ」
オオカミは、キリンの手から鉛筆を抜き取って自分が持っている紙にカリカリと簡単な絵を描く。一分ほどで出来上がったのは、簡単なキャラクターの絵。しかし、なんというか・・・不気味なキャラクターだ。まん丸の目に、グイッと上がった口角。
「なんか・・・怖いです」
「キリンは、これがギロギロに出てきたらどう思う?」
「不自然、ですね?」
立ち上がったまま、顎に手を当てたキリンが答える。
「そうさ、何だかヘンテコだろう?ギロギロらしくないね」
そこまでオオカミが説明したところで、急にキリンが手を鳴らす。パンッという音にオオカミが少々驚き、そのオッドアイはキリンの自信満々な顔に向けられる。
「つまり、そんなキャラクターはダメだってことですね!」
キリンが言い放ったその言葉に、オオカミは「おお」と声を漏らす。
「その通りさ。あんまり浮いてしまう、世界観をに合わないキャラクターはよくないと思うんだ。お借りしてる世界、崩すのはいけないからね」
原作者の私が言うのもおかしいけどね、と前にも聞いたようなことを言いながら笑うオオカミ。それで納得したような顔のキリンだったが、ふとした疑問がまた出てくる。
「じゃあ、不自然じゃなければいいってことですか?」
「お、鋭い事言うね。流石名探偵」
褒められて、えへへと笑うキリン。その間に、オオカミは必死でその思考を巡らせる。
「それで、どうなんですか?」
「うーん、これが難しい問題でね・・・私がオリキャラは難しいって言った理由の一つさ」
言い終わって少し間を置く。その間もキリンから情熱的な(?)目線を向けられるオオカミ、しばらくして指を一本立てながら、「私が思うに」と始める。
「オリキャラを出すなら、それなりの存在意義がなくてはならない。さっきの話を掘り返すけど、『オリキャラをメインに二次創作をしたい』って作者が思うならそれでいいと思う。でも、そうじゃないなら理由が必要だ。必要でもないオリジナル要素は、世界観を崩すのに繋がるからね」
「つまり、私のヤギは?」
「いいんじゃないかな、紙を食べちゃうなんてヤギのキャラクターにしか出来ないことだし十分に存在意義のあるキャラクターだと思うよ」
それを聞いて、ぱぁっと顔を明るくするキリン。安心したのか黙々と作業を再開した。
「補足をするなら、さっきの話の前者の場合でも気をつけるべきということかな。作品を出汁にしてキャラクターを引き立てるようなのは感心しないね」
キリンはもう聞いてないらしい。ひたすらに鉛筆を走らせていた。
「・・・まぁ、私個人の意見だけどね」
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