メチャクチャに短いヤンデレ小話。
付き合う事になった。
いや、いきなりどうしたかと思うかも知れないが、そういう事なのだ。
付き合う事になった。
女神はどうやらオレに微笑んだらしく。
世界はどうやらオレに味方したらしく。
オレのような、陽キャなのか陰キャなのか区別の付かない、個性が無い奴にも、交際相手が現れたのだ。
双子の片割れ。
つまりは姉。
ツインテールの茶髪を揺らしながら現在オレの隣を歩いているコイツとは、小学校三年生の頃からの仲だ。この町に越してきたオレの家の隣に住んでいて、そこからずっと友達という関係を続けていた。
しかし、だ。
つい先日、友達という関係は終わりを告げ、新たに彼氏彼女という関係が始まったのだ。
ニヤケが止まらん。
「何考えてるの?ねぇねぇ、何考えてるのー?」
「いや、何でも」
オレのニヤケ顔を見たらしく、目を細めて笑いながらそう問うてきた。残念ながらオレは、『お前と付き合えて嬉しい』と素直に言えるような性格はしていない。だから、誤魔化す。何でもないと、平常を装う。そうすると彼女は「何それぇー」と見ていて癒される笑顔で笑った。
「…………」
通学路を歩いている途中、チラリと後方を見やると、電柱の陰から茶色いツインテールと姉と瓜二つの顔がこちらを見ていた。
双子の片割れ。
つまりは妹。
元気いっぱいの姉とは違い、引っ込み思案な妹。今日も今日とて数メートル後方からオレと姉を見詰めている。
会話に混ざる気は無いらしく、登下校の間はこうしてオレ等を見つめるに留めているのだ。
しかし、一度(ひとたび)SNSで連絡を入れれば凄い。普段の無口さとは比べ物にならないくらいの饒舌さと語彙力、そして怒涛の勢いで会話が始まり、それが深夜にまで及ぶのだ。
そんな、妹の方の嫌な部分(というか面倒くさい部分)を見てしまったからなのか、それとも姉の方の、話しているだけで元気が出るその明るさに惹かれたからなのか。
オレは結局、姉の方に告白し、付き合う事になったのだった。
ぶっちゃけ、顔は同じだしな。瓜二つどころか、同一人物レベルで。二人揃って黙られたら、オレだって見分け付かないだろうし。
……まぁ、要するに。
〝大事なのは見た目よりも中身ということだ〟。
場面は変わり、その日の夜。非常に珍しい事に、妹の方がオレに電話をかけてきたのだ。
いや、珍しいどころの話じゃない。
初めてだ。
「もしもし」
あまりの珍しさに画面を二度見してしまった。すぐさま通話ボタンを押し、通話を開始させる。
『……あの、さ』
「何か用か?」
『……う、ううん。えっと、えっとね?ちょっと聞き、聞きたい事があったから』
聞きたい事。
オレに慣れない電話をかけてまで、聞きたい事。
その内容が気になったオレは、「何だよ、言ってみ」と続きを催促する。
『変な子だって、お、思わないでほしいんだけど……お姉ちゃんのどこが好き?』
「どこが好きかって?そんなの、笑顔と明るい性格──中身に決まってるだろ。見た目も勿論可愛いけど、そんなのお前を褒めてるのと変わらんからな。オレが好きなのは、アイツの中身だ」
『……ふぅん』
次の日から、オレの彼女の様子がおかしくなっていった。
彼女に聞いてみたところ、原因は風邪らしい。
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