新年のサプライズ。
小太郎くん、あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
……こうやって改まるのも何だか変な感じだよね。まぁ、新年の挨拶だし、仕方の無い事なんだけど。
小太郎くんに何て書こうかな〜とか色々考えていたら、葉書のスペースに収まりそうになかったので、こうして手紙のような形になっちゃった(>人<;)
去年も、色々あったよね。
一月の冬休みの時には、自転車で遠出しようとしたら道路が凍っていて滑って怪我しちゃったんだよね。幸い、軽い捻挫で済んだから良かったけど、側で見ていた私からしたらすっごく怖かったんだからね?
二月の修学旅行では、自由時間に二人で市内を散策していたら迷子になっちゃったよね。修学旅行での思い出は沢山あるけど、一番印象に残ってるのはこれ。柄にもなく焦ってる小太郎君、可愛かったよ。
三月の春休みに、遅めのスキーに行ったんだよね。ゲレンデに着くギリギリまで雪が見当たらなくて、「本当にスキーできるのかな?」って不安に……。でも、ゲレンデに着いたら余裕で滑れるくらいの雪がまだ残っていたから、安心して楽しめたよね。
四月になって学年が繰り上がって、二年生の時と同じく、また小太郎くんと一緒のクラスになる事ができました。小太郎くんは全然表情に出さなかったけど、内心嬉しがってるのを私は気付いてるからね!
五月は雨ばっかりで、あまりおでかけしたりはできなかったんだよね。じめじめするのは嫌だけど、小太郎くんとゆったり過ごせるのは楽しかったよo(^-^)o
六月の体育祭では、小太郎くんは騎馬戦の支える役で出場してたよね。騎馬戦って上の人が注目されがちだけど、私の目には頑張る小太郎くんの姿がちゃんと映ってたよ!仲間に指示を出す小太郎くん、格好良かった!
七月には、私と小太郎くんを含めた男女7人で海に行ったよね。地元のちっちゃな海岸だからか、そこまで人は多くなかったから、スイカ割りとかしたよね。小太郎くんってば結構鍛えてるから、他所の女の子に噂されてたんだよ?小太郎くんは鈍感だからそういうの気にならないかもしれないけど、きをつけたほうがいいよ。
八月には、花火を観に行ったよね。焼きそばとアイスキャンディーを買って、河川敷から花火を見上げて。人ごみに流されて小太郎くんとはぐれそうになっちゃったけど、小太郎くんの隣で花火を観れて良かった(〃ω〃)
九月は、ほとんどが文化祭の準備期間だったね。うちの学校ってそういうイベントに力を入れてるから、先生も生徒も盛り上がるんだよね。小太郎くんって、クジで選ばれたから文化祭のクラス代表をやってたよね?本当は私、小太郎くんと一緒にやりたかったんだけど、うちの女子って積極的な子が多くて、私はその役職から外れちゃったんだ……。
十月は、文化祭が盛り上がったよね!小太郎くんが一生懸命に取り組んだクラスの出し物は大盛況で、校内の文化祭アンケートで一位を獲得したり、すごい充実してたなぁ。放送での一位発表の時の小太郎くんの表情、実はこっそり写真撮ってたんだよね。今度見る?
十一月は、小太郎くんの進路が決まったんだよね。推薦、だっけ?私も小太郎くんの進路に合わせたかったけど、あの大学って毎日通うのは無理なほど遠い距離にあるから、自宅から通える近い大学にしろ!って親に猛反対されちゃったんだ……。こうして手紙を書いている今でも、親に逆らえなかった自分を後悔してる。
十二月。小太郎くんが倒れた。度重なるアルバイトによる過労が原因だってお医者さんが言ってた。小太郎くん。入学費と一人暮らしにかかる費用、自分で払わなきゃいけないんだって?どうして相談してくれなかったの?大学の入学費なんて、アルバイトで稼ぐのは到底無理だよ。そんなことも分からないでがむしゃらに働いちゃった小太郎くんがお馬鹿なのはそうだし、そんなことを小太郎くんにさせていた小太郎くんのご両親も、とっても馬鹿。なんで入学費を払わなかったのかは分からないけど、自分の子供にそんなことさせて、病院に搬送されているようじゃ、親として失格だよ。そんな親の元で生活してたら、小太郎くんはもっと馬鹿になって、もっと危ない目に遭っちゃうよ。そんなの駄目。小太郎くんの彼女として、見過ごせないよ。
だからさ。
私と、二人暮らししない?
ごめんね。本当は手紙の最初に書くべきだったんだろうけど、色々長ったらしくなっちゃった。
もしかして、この手紙を読みながらお金のこととか気にしちゃった?
大丈夫だよ。小太郎くんが入学する大学の近くに、私のお父さんが経営してる系列のマンションがあるんだ。ほら、今CMやってるあれだよ。そこに住めば、家賃とか光熱費、水道代やガス代もかからないの。私は、卒業したら両親の仕事を少しずつ継いでいくつもりだから、小太郎くんと一緒に暮らしながら頑張るつもり。大学に必要なお金は私もサポートするから、ねぇ。どう?良いよね。
……。
数枚に分けられた内容の手紙。それを一枚一枚読み進めていたが、途中で読むのを止める。寝癖が目立つ後頭部を掻きながら、ゆっくりと溜め息を吐いた。
参った。
どうやら、俺は高校を卒業したら彼女と二人暮らしをしなければならないらしい。全く、これっぽっちも知らされていなかったので、ぶっちゃけ現実が受け入れられない。
新年の挨拶の後に知るべきニュースではなかった。
現実逃避にと、窓の外へと視線を移す。新年早々降り積もる雪は、時折聞こえる子供のはしゃぎ声と共に俺の意識を手紙から奪う。
綺麗だ。しかし、雪の所為でこの寒さがあると思うと、不思議と苛立ちの方が勝ってくる。暑いのは嫌だが、寒過ぎるのも嫌なのだ。
現在時刻は午前十時。する事がなかった俺は、もう少し寝ようと手に持っていた手紙を机に置き、ベッドへと寝転んだ。
見上げるは天井。
そもそも、俺に新年の手紙を出してきたコイツは、一体誰なんだ?
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