ハチャメチャに短いヤンデレ小話。に至る小話。
「何で!?何で駄目なの!?」
朝の食卓にて。
家の外にまで洩れる程の私の怒声が、お父さんとお母さんに炸裂した。
正面からそれを受けたお父さんは少し顔を顰(しか)めてから、「いいか」と私を宥めるように言葉を返してきた。
「確かに、栄治(えいじ)君は良い子だ。勉強も出来るようだし、人格だってまともだ。お前の恋人としてなら、俺も何も文句は言わん」
「なら──」
「だがな。さっきから言っているように、結婚となれば話は別だ。お前も栄治君もまだ18歳になったばかりだろう。決めるのには早過ぎるし、そもそも栄治君には何も話していないらしいじゃないか」
「法律的には問題無いし、急に言ってもえー君ならきっとOKしてくれるって!何が駄目なの!?」
「結婚というのはだな。相手と、それから相手の親御さんともよく話し合って、ゆっくりと月日をかけて慎重に行っていくモノだ。何も、朝食の席で宣言すればはい決まりというモノではない」
「お父さんの分からず屋!お母さんは良いよね!?」
頭の固いお父さんとこれ以上の口論を続けても何も産まれない。私は味方を増やそうと、お父さんの隣に座っているお母さんに話を振った。
「うーん……私もお父さんと同じ意見ね。もう少しゆっくり考えてみたら?」
しかし、結果は思うようにはいかず。お母さんにも、頬に手を当てながらの困り顔で否定されてしまった。
駄目なの。
それじゃ駄目なの。
すぐ結婚しなきゃ遅いの。
「えー君はモテるんだから、もたもたしてたら誰かに盗られちゃうよ!」
「お付き合いはするかも知れないけど、その誰かとも流石に結婚まではしないんじゃない?」
「そんなの分からないじゃん!」
「まぁまぁ。兎に角、ご飯食べちゃいましょう?時間が無くなっちゃうわよ?」
駄目だ。
二人とも、事の重大さを理解してない。
私にとって、えー君は酸素にも等しい——生きる上で最優先すべき存在なのに。
私に死ねと言っているのだろうか?
「で、でも……!」
「いい加減にしろ!あまり手間をかけさせるなッ!」
食い下がるも、帰ってきたのは叱責の言葉。
迫力に気圧されて頭が数センチ後ろに下がり、乗り気味だった身体は背中が椅子の背もたれにピッタリとくっついてしまっていた。
「駄目だと言っているのが分からないのか!」
「ちょっと、お父さん。あまり怖がらせちゃ駄目じゃない」
大声を出すお父さんと、それを宥めるお母さん。
いつの間にか私の視界の端は黒ずんでいて、理解されない事への絶望感が膨れ上がっていた。
何なのさ二人共。
何で私とえー君を認めてくれないんだ。
「……もう、良いよ」
席を立つ。
「待て。まだ皿に料理が残っているだろう」
お父さんの言葉を無視し、向かうは台所。といっても食器を下げに行くのではない。
お父さんお母さんの反対を押し切る為の道具を、取りにいくのだ。
〝後片付け〟も済ませ、いつも通りの学校生活を過ごしたその後の帰り道。
いつものようにえー君と歩く帰り道。
その途中。
隣を歩くえー君に、私は切り出した。
「今日から、両親居ないんだよね」
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