23_帰結
その『ガベージコレクション』なる仕組みには確かによく似ている。演算装置に読ませるものではないけれど、不要となったものを処理する仕組みであり、より上位の概念に内包されている仕組みであると。なるほどね。じゃあ、思想は兎も角として、ガベージコレクションとこの場では呼ぶとしましょう。ガベージコレクションはこの海全体の仕組みとして存在し機能している。この階層は、忘却の断片を収集しては圧縮していく不完全な海よ。
「そうだ、WITHGRAV、このボタンを押してみて」
では、同じ軸の延線にある言葉を私も借りるとしよう。因子Aが『透明クジラ』と名付けたものは海に持ち込まれた、あるいは海から生まれた『バグ』を食べて回る自浄機構だ。だから因子Cの、重力使いの作る矢印には反応する。しかし透明クジラたちが当面のところ本当に探していたのは空間の亀裂に鳴りを潜めた“α”だったと。
「そうそう。これでひらがなを漢字に変換できたでしょ」
そこまでは納得がいくが、サナトルアハが階層を落としてまで肩入れしたのはやはり腑に落ちない。αが同じ研究者だからといって、自身の証明が不安定になるような選択肢を選んでしまえば存在ごと消滅し兼ねないというのに。彼が残した伝言とやらには何が書いてあったんだ?
「あとはそうだなー、あ、写真の撮り方!」
ミドペルシカの論文はご存じ?
バカな……少なくとも俺は彼の論理を信用していた。
私もそうよ。だから半分納得しているし、半分諦めている。彼の帰結に文句がないのなら、彼の伝言通りこの一文を書かせてもらうわ。
構わない。私が想像していたより幾分面白い人物だったな彼は。
次に俺がいなくなったらアンタらで頼むぞ。
元に戻るだけよ。私たちは何も欠けない。じゃあ、バネが戻るその瞬間に備えて。
――『ミドペルシカ・リグゥルキの論文』より引用
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