強調される“空”、二人の女子高生の登場人物、淡い青色――青春の色が世界観を構築している。
いやぁ……神秘的だとか、空想的だとか、そういう月並みな表現では出来ない作者様の個人的な世界が文章としてよく描けているなと感じます。
オリジナリティを求めるがあまり空想が過ぎ、人の共感を得られない、または想像させることが出来ないということが、独自を追求する作者様方の問題点だったりしますが、ことこの作品においてはしっかりとした構想と練った構成によって、その危険からは脱しているように思える。
ただしかし、構成は上手くできていても、その内容については些か疑問や懸念が残ります。
括弧や傍点を多用し過ぎることは憚られる事ではありますが、かといって活用しないのもまた未熟。確かに話し言葉と地の文全てに意味を託し、その枠内での芸術を追求するというのもまた素晴らしいですが、ネット小説のような横書きデジタル媒体ではズラズラと並んだ文章は案外早く読めてしまい、その言葉に乗せた意味というのも流されてしまいがち。
そうすると、言葉自体の纏まりである文章が平坦なものになり、ほわほわとした概念と固まり切らないキャラクターたちの掛け合いが何とも滑稽に見えてしまう。
私たち読者が得られる情報というのは視覚の一点のみ。
強調したい部分は意図的に誇大していいでしょう、その横に隠れた一文が後になって意味を持ってもいいでしょう。
文章において必要でない分はありません。あってはなりません。
ですが【重要度】という物が存在します。
伏線という物は誇大化させた意味ありげな文に、真の意味を隠し、のちに明らかとすることで蓄えた分、気づかせなかった分、驚きと感動を読者に与えます。
ご存知かもしれませんが、伏線と言うのはなにも「実は―――で――は間違いです」のような明らかな発見だけではないのです。
因果関係の推理、または解決、事象と事象の結びつきを指します。
ではなぜここまで細分化して説明しているかと言いますと、作者様の作品は物語が平坦で説明と解決が永遠に続きます。
謎も確かに発見と未解決がありますが、それはどれもこれもすぐには分からない物ばかり。
何が言いたいかと言うと連関性が分からない文章を物語序盤にいっぱい持って来ても「不思議な世界感、謎が多くて続きが気になる」とはならないという事です。
不必要な伏線且つ説明は情報の渋滞を引き起こし、読者の読解力を優に超えます。
つまりこの作品の出だしは“世界の色と形がハッキリしているよく分からない絵画”になります。
最初に説明した通り、普段の日常生活では決して感じ取ることのできない“世界の雰囲気”というのは比喩表現などによって共感性を得ています。けれど肝心の中身がごちゃごちゃと散らかっていては、物語そのものの没入感は得られない。
これらは登場人物二人の“像”にも当てはまる指摘です。
まだ突き詰められるし、整頓できる余地がある。少なくとも最初の三話の段階でも。
序盤の勢いや流れと言うのは長編を書く上で最重要ポイントです。
他の作品を作っていく上でも必ず通る道です。
以上、今後の執筆のためご一考ください。
作者からの返信
感服です。お読みいただき、とてもとても貴重なご指摘をいただきありがとうございました。最も響いたのは読者の視点から見て何が過剰か、不足か、平坦かの部分です。お恥ずかしながら私はこれでようやく気付くことできました。この作品で私は(物語の大部分を知っている)作者の視点か、登場人物の視点でしか物語を描けていません。情報の粒度もタイミングもこのどちらかに沿うように調整しています。これでは読者が没入感を得られません。読者の視点は三の次です。
指摘いただいた事項はどれも確かに思い当たる節があり、例えば登場人物二人のうち一人は書き出した時点で解像度が低かったです。文章ばかり添削していて、突き詰める・整頓する余地がもっと大きな部分にあるのを見落としています。平坦さは各話を構想したタイミングで、通して見ていないからなのかもしれません。もう一つ、傍点について。こちらは以前別の方からも教わった約物ルール違反の対応漏れに近いです。プレーンテキストに拘るあまり『“”』で済ませておりました。
作品として完成度を上げるためには、読まれるためには、まだまだ足りていないのだと分かりました。重ね重ねこの度はありがとうございました。
企画ご参加ありがとうございます。箱女と申します。
三話まで読ませていただきましたのでコメントを。
幻想文学のテイスト、とでもいうべきなのでしょうか。
異質なのではなく、組み上げられた別の世界観が完成しているといった感じを受けます。
最序盤の虚ろな一人称からそんな奇妙な距離感がありますね。
もちろんそんな世界ですから表現が非常に難しい。
言葉を尽くして伝わるかどうか、というレベルの話になってきますので苦心されたのではないでしょうか。
日常ではあまり見ない表現も散見されます。
そこはもちろん味でもありますが、読む難易度を上げているようにも思えます。
そこで突飛とはわかっていますが案のひとつとして。
いっそまったくの造語を作ってしまってはどうでしょう。
作者さまの技量であればこなせないことはないかな、というふうに思います。
これがハマればまったく別枠の読者を獲得することも可能かもしれません。
ふつうならまともな提案ではありませんが、この作品はそれを受け入れる素地があります。
次に気になった点を。
初めのあたりは情景描写のために幻想を背景にした現実のものを貼り付けたような世界が語られるわけですが、ハルカが目を覚ますにつれて人間味を手に入れていきます。
私はこの作品の魅力を(三話しか読んでいないので浅いのですが)幻想感に見ています。
少女たちの平和で微笑ましい描写はむしろ、時間のずれという異質さはあっても、現実感を見せる要素であると私は取ってしまいました。
そのふたつは現時点ですと相反しているように見えます。
三話までで続きを期待するなら人間味をもう一段階落としてほしい、というのがわがままな要望です。
たとえば銀河鉄道の夜のように。
かなり読者としてわがままな提案をしてしまいました。申し訳ありません。
連載、頑張ってください。
作者からの返信
この度はお読みいただきありがとうございます。
※ゼロ話のようなものがあるので二話までと思っていました。お情けをいただいたのであれば申し訳ございません。
ご推察の通り、本作はかなり世界観を練りこんで組み上げています。その世界観がまさに突飛なのでどのように質感を与えるかに苦労していました。実は、造語の方は途中から出てきております。(一章終盤です。)しかし、例えば一話でも『認識素子の先布』辺りが読み返すたびに微妙に気になっていて、直近の添削では残りました。次回の添削でも再検討してみます。
気になる点としていただいた〝人間味〟というキーワード、それから〝幻想感〟と〝現実感〟の対比。大変有難いです。幻想文学は言葉だけ知っていて触れたことはないのですが、一章の世界は確かに幻想的な感じを描こうとしています。一方で、実はナツの側の設定がこの時点では甘く、それが人間味の薄さに繋がっているように思います。ハルカはハルカで読者に説明されていない込み入った事情があり、こちらも簡潔で直球な描写(主人公視点での世界観やナツの描写)がされない状態です。すると舞台が幻想に傾き過ぎているので、ではどうやって現実側の濃度を上げてバランスを取るのか、ですね。二人で確認し合えることが唯一の現実感なのですが、他にも何か手がありそうです。
まずこの対比が見えたこと、人間味の不足が改善余地であると気付けたことが大きな収穫でした。
もう少し踏み込んで説明してしまうと、一章の全体像は幻想感で合っており、その中を細い橋のように架けた現実感で進んでいくような塩梅を描きたかったのですが、これを描き切ってきちんと読み手様に伝え切るにはまだまだ文章力が足りないようです。
二章を書き上げた後に一章から見直そうと考えておりまして、その際に今回いただいたものを何とか取り入れようと思います。重ね重ねありがとうございました。