第5章 捜査依頼 壱 

『アンドロイドはホントかわいそうだよ。』

『後藤教授はなぜそのようなお考えで。』

『客観的に見てみなさい。人間はどのように生まれてくる。』

『それは・・・。母親から生まれてきます。』

『ああ、そうだ。裸で生まれた赤ん坊は長い年月をかけて大人になっていく。では、アンドロイドの場合は。』

『工場から生まれてきます。』

『その通り。つまり一人ということだ。両親から愛情を一身に受け、徐々に経験や知性を養っていく人間に対し、生まれた時から決められたプログラムが組み込まれた孤独のアンドロイドを見てかわいそうだとは思わんかね。』

『しかしアンドロイドには所有者が必ずいるではありませんか。』

『その愛情が犯罪を生むとしたら?先日生まれたばかりの知性が社会に放り投げられたらどうなるかくらいあなたでも分かるはずでは?』

『彼らは法律に守られているではありませんか。』

『守られている?勘違いしちゃいけないよ。彼らは守られているのではない、頭に銃を突きつけられているのさ。世界にね。』


「・・・くん。聞いているのかね。」

デスクの横には新木が立っていた。

「あ、すみません。どうかいたしましたか、主任。」

穂積は新木の方へと体を向き直し顔へと視線を向けた。

「どうしたじゃねえよ。依頼だ依頼。そんなにテレビが見たいなら鼻にアンテナ刺してあげるけど?」

「依頼主は。」

穂積は新木の話をスルーした。すると呆れた顔の新木が

「この近くに住む主婦だ。」

素っ気なく答えた。

「ではすぐに話を伺いに行きましょう。」

穂積は椅子から立ち上がった。キリっとした視線を新木に向ける。

「いいや、その必要はない。署にて徴収済みだ。内容は最近ホームレスがゴミを荒らしているんだとよ。ついさっきも目撃されていたらしい。」

「え、そんなの捜査一課のする仕事ではないじゃないですか。」

新木は一つ溜息をついた。

「署長からのご命令だ。行くぞ。」


情報によると現場は署から5分ほど歩いたところにあるため二人は徒歩にて向かうことにした。大きな通りを一本入った住宅街の広がる道路を歩く。二つ目の角にある公園の手前に目的のゴミ置き場はあった。遠目からでも分かる、大の大人がゴミの海を泳いでいる様子がそこには広がっていた。

「え?何しているんでしょうかあの人は。」

目を細めている穂積を横目に対象へと足を運ぶ新木。

「あのー、すみません。こちらで何をされているのですか?」

穂積は小走りをしながらその男性に問いかけた。

「こんにちわー。」

突然話しかけた二人を前に動揺する素振りは一切せず、ただ泳ぐのだけを止め軽快に挨拶をした。

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