第2話

「おいおい、防衛戦の直後は来ないんじゃなかったのかよ?」

アキレウスが少し怒ったような、慌てたような様子で愚痴る。

「勝手な推測だったんだ、〈サトラ〉共がこうしますなんて言ってないし、規則性なんて無かった、来る時は来るんだから、愚痴ってないてさっさと出撃るぞ」

仲間を急かしながら俺も戦場へと急いだ。




―10年前―



――――――――――――――――――

凄まじい轟音、空が埋め尽くされるような鳥の群れ、途切れ途切れに聞こえる大人達の声、小さい子の鳴き声、腹の下に響く様に聞こえる低く重い音、

全てが終わった時、その情景が空から見れるものがいたのなら、驚きの余りどうにかなってしまってもなにも問題は無いだろう。

そんなありえないような状態になっていた。

そもそもマラヤ連邦があるアリストン大陸は1つの大陸だったのだから、1つの大陸が2つの大陸に変化していく情景など、誰が想像できようか。

これが1回目の「災害」、通称『一世紀』である。これによる死傷者は数えられない様な人数までにのぼり、塵の1片も残さず全てが変わった。

6年後の「災害」は通称『2世紀』と言われ、新たな脅威である〈サトラ〉が現れた。

大きさは、通常種で8〜12メートル、大型種は15〜20メートル、のタコのような姿をしており脳なような所はジェルで守られている。もちろん肉食であり、何故か人間を好んで食べる。10.7mm機関銃の弾が貫通せず、それでも〈サトラ〉対抗するために全ての国は国の周囲に防衛戦線を張り国の中に入れない様にしている。


―――――――――――――――――



「早くしろ!!チンたらしてるとヤツらに食われるぞ!!生きていたけりゃ仕事を済まして、英雄達のサポートをしろ!!」

的確な指示を出しながら整備クルーを急かしている大男、ドラゴン・エンフィールドはこちらに気付いて手招きしながら言った。

「お前らの機体の整備、終わってるぞ。

いつでも出せる」

「いつもありがとうございます、エンさん、

今回のはいつもより多いので気をつけてください」

俺が言うとアキレウスが言った。

「お前のそれ、ホントなんなんだ?便利だしアイツらに限んないんだからいいよな、

これが終わったらその能力チカラくれよ」

いつもより緊迫した空気が分かったのか、緊張をほぐすためにいつも通りの調子に乗った口調で言いながらアキレウスは機体【弘】に乗り込んだ。それ用に調整された【弘】はアキレウス専用の機体で、アサルトライフルやグレネードランチャーを装備し、移動速度が重視された機体になっている。

「それ、フラグってやつだろ?そーゆーのやめとけ、お前が死んじまうとつまらんくなるから。堅物しかおらんけん」

ジークがそんな事を言っても気にせずにアキレウスは出撃した。

「俺達も行こう」

ジークとカルマを急かし、俺も専用機の【リッパー】に乗り込む。これは、超近距離戦を想定した機体で、大剣などの近距離兵装を装

備している。俺の機体は一般的な機体を少しピーキーにしたものだが、アキレウス曰く「ありゃ一般機をピーキーにしたやつじゃねぇよ。ゼウス用の超近距離機体だよ。あんなの、一般を改造したやつじゃねぇ」だとか。

俺的には動作のラグが少なくなり、共有感覚がより分かりやすくなるので確かに俺用ではあるのかもしれないが、、、

「しゃぁないの、フラグ回収させとうないし、またやるかいの」だるそうにしながら重い足取りで機体に乗り込むジーク。

ジークの機体は【destructer】、移動速度を犠牲に重装備を可能にした機体で、メインウェポンにマシンキャノンか155センチキャノン砲、サブウェポンに電子機関銃、ミサイルポッド、迫撃砲を装備できる。武器の種類が1番多い機体になっている。

「じゃ、やりましょうか」

カルマは嬉嬉として機体に乗る。

カルマの機体は【ウィリアム・シン】、スナイパーライフルのみを装備し、視認範囲とレーダー範囲を広くするために大型のバックパックと特殊なカメラアイを標準装備している。この機体は最初からカルマ専用の機体として設計されたもので、レールキャノンも二門標準装備として装備している、唯一の可変機体だ。

全員が出撃し前線に出る。

カルマは3キロ後方の高台で変形しスタンバイ、前衛は俺、ジーク、中距離にアキレウスが入る。

『やっぱり凄く多い。ゼウス、ジーク、アキ、気を付けてね、なんか変わったやつがいる。多分新種だと思う』

カルマからの交信が途絶え、周りとの連絡も取りにくくなった。これがカルマの言っていた新型の能力だろう。

『ジーク、雑魚はほっといてもいい、新型を優先的に殺れ。アキ、雑魚の処理を重点的にやるぞ』

『雑魚処理か、いいねぇ。全部殺して全部解して、死屍累々の山にしてやんよ』

『しゃぁないの、新型やな、分かった』

出すべき指示を出したのでサトラ共に突っ込みに行く。

エネルギー炉が唸りをあげ、アクチュエータ

が回転数を上げる。

そう、新型のことも何も考えずに。

ただ目の前の的を切る、

袈裟に、唐竹で、

―ギンッ―

『?!鉄の音、どういうことだ?』

考え、そして気付くべきだった。無線の交信が妨害ジャミングを受けたのだから、

機械のサトラがいてもおかしくないのだと。

「クソっ、俺じゃ出来ねぇ。

ジーク、引っ張る《カインティング》から処理を頼む。新型だ、奴ら一丁前に鉄の体持っていやがる」

怒りに任せて通信機に言う。

雑音混じりにジークからの返答が聞こえる。

「分かった。そっちも並行してやるよ。

アキは雑魚処理を引き続き頼む」

「新型に興味はねぇよ、れりゃあ

俺は何でもいい。

ゼウス、状況確認はしっかりやれよ。前の2の舞はお断りだかんな」

深呼吸して頭を冷やす。

これで失敗したはずだ、忘れるな考え続けろと言い聞かせる。

(やりたい放題やるんじゃない、チームワークを考えろ。)

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