大規模戦闘《レギオンレイド》
ラッチェ・バム
第1話
最悪だ、
これ以上ないほどの惨劇だった、
ビルや家は壊れ、アスファルトはひび割れ
それは筆舌に絶する光景だった。
(ガバッ)
ベッドから飛び起き今の状況を確認する。
鉄パイプで組まれた簡素な二段ベッドの上には、軍の同僚のジークフリートがだらしない格好で幸せそうに寝ていた。部屋の反対側のベッドでもカルマやアキレウスが寝ている。
ここは〈軍〉の宿舎で、南西を守る8番目の防衛線、通称〈悪魔の隣〉
"ヤツら"に1番近い防衛部で1ヶ月に3〜5回
"ヤツら"が攻めてくる。昨日も来た"ヤツら"の
防衛戦のことを考えていると、窓辺から声が聞こえた。
「またあの夢を見てたの?」
汗で湿ったシャツと荒い息遣いからわかったのだろう。この分隊の唯一の女性で薄紫のロングヘアが特徴的なカルマが声を掛けてきた。
「ん...あぁ、大丈夫だ」
「そう?ならいいけど、また無理して倒れるようなことはなしにしてね」
会話しているうちにアキレウスも起きてニヤニヤとこっちを見て笑っている。
掴み所が無くひょうきんな性格をしているが
、意外としっかり者で戦闘では皆が顔負けの
奇跡的な戦いをするアサルト兵だが、本人曰く『あんたの方が有り得ねぇ戦い方してんよ』だとか。
「おやおや、昨日の戦いの英雄が鼻の下伸ばして、何考えてんのかねぇ」
「一瞬、起こしちゃったみたいで何か悪いことしたなぁと思ったけど、今はお前を生かしておいて悪いことしてんなぁと思ってるんだけど、どう?」
「ひでぇ、ゼウス、お前それは人に殺すぞって言ってんのと同じだかんな!」
「静かにしないとジークフリートが起きちゃうよ」
「起きちまったよ、昨日のですげぇ疲れてんだから静かにしてくれよ」
ジークフリートが疲れた調子であくびを噛み殺しながら言った。
抜けているところがあり、マスコットのような可愛さを持ってるジークフリートだが、名前の通り、龍をも一撃で沈められそうなキャノン砲や6連装のマシンキャノンを片手で扱う重装備兵だ。
「ほら、アキがゼウスをからかうからジークが起きちゃったじゃない」
少し怒ったお姉さんのように言うカルマ
止めておけばいいのに調子に乗ってそれをからかいにいくアキレウス
"ヤツら"が来た後の気の許せる時間だからこそこんな会話ができる。
だが"ヤツら"のことを詳しく知っている人間は〈軍〉の研究所にいる頭の硬いヤツらぐらいしかいない。それすらも民間人や俺たちのような兵士の知っている情報と何ら変わりはない。
そのぐらい"ヤツら"のことは分かっていない。
〈軍〉で使っている名称は〈サトラ〉民間人の間だと〈サトラ〉とか〈敵〉とか、様々な呼び名があるらしいが、全体的に言えることは〈サトラ〉が俺たち、マラヤ連邦の敵と言えることだ。
マラヤ連邦は、この星の中心から少し北側にあるアリストン大陸の北西に位置している。〈サトラ〉はアリストン大陸の中心に襲撃してきた後、霧の深い〈魔女の森〉に陣取り周囲の国々に攻撃を仕掛けた。今では他の国がまだあるのかすら定かではない。物資も食料も何も無い、10年前とは全てが全く異なる状況下で俺たちは防衛戦をしてきた。
「ほんと、昨日のは凄かったよジーク、
メインとサブ一斉に斉射してたもんね。」
感心したようにカルマが言った。
「体への負担が大きいからあんまやんないんだけどな、ふぁ〜…寝るから静かにしていてくれよな」
特大のあくびをしながら布団に潜っていくジークを見て、俺たちも話すのを止め、個人の端末で担当している場所の地図を確認し始める。
空が明るみを帯び、九時頃になってジークも起きたので、俺たちは遅めの朝食を取ることにした。
「ホント、こっちのメシってまずいよな。
街のディナーが懐かしいよ。」
不満しかない様にアキレウスが言った。
「文句言わないの、ただでさえ色々とないんだから。」
と言っているカルマもあまり美味しそうには食べていない。
実際、お世辞にも美味しいとは言えないが、
ジークはこれが好きなのだとか。
その時、誰かに見られている感覚とうなじがチリチリするのがハッキリと分かった。
(ビービービー)
少し遅れてけたたましい警戒音が基地の中に鳴り響く。
「おいおい、防衛戦の直後は来ないんじゃないのかよ?」
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