第1192話、【リコ○コ】わたくし、『表現の自由』以外のすべての自由権は要らないと思いますの⁉

ちょい悪令嬢「今回は満を持して、今期の夏アニメきっての話題作である、『リコ○ス・リコイル』について大いに語ろうかと存じます!」




メリーさん太「──ええっ、今更かよ⁉」




ちょい悪令嬢「ちょっ、開口一番なんですの⁉ 今更も何も、現在絶賛放映&配信中の大注目作品ではありませんか?」


メリーさん太「いや、あれだけネット上で大人気なのに、まったくと言っていいほど話題に挙げなかったので、完全に無視しているものかと思ってさあ」


ちょい悪令嬢「嫌ですねえ、それじゃまるでうちの作者が、今期覇権の呼び声の高い作品に対する、嫉妬まじりの『逆張り野郎』みたいじゃないですかあ?」


メリーさん太「……違うのか?」


ちょい悪令嬢「──いえ、確かに『リコ○コ』に対する評価はそんな感じでしたので、あえて(角が立たないように)当【座談会】では言及しなかったのです」


メリーさん太「──結局自ら『アンチ』であることを、肯定するつもりかよ⁉」


ちょい悪令嬢「いえいえ、ちゃんと『これまでは』と申したでしょう?」


メリーさん太「……と、言うと?」




ちょい悪令嬢「何と最新話においては、東京の街中に多数の拳銃をばらまき、一般市民が誰でも『銃撃テロ』を起こしかねない状況にすると言う、これぞ『表現の自由』の極限を目指した内容となっていたのです!」




メリーさん太「──想像以上にヤバいネタ、きたああああああああああ!!!」




ちょい悪令嬢「むしろ『ヤバいネタ』だからこそ、まさしく『表現の自由』の素晴らしさが際立つのですよ!」




メリーさん太「……『表現の自由』の素晴らしさだと? さっきは極限を目指したとか言っていたけど、まさに今現実的に話題になっている『素人による銃撃テロ』と、『表現の自由』とが、どう関わってくるって言うんだよ?」


ちょい悪令嬢「そもそもこの時期、こんなネタを扱った作品を放映できたこと自体、奇跡的だと思いません?」


メリーさん太「まあ、そうだな。放映延期や中止していてもおかしくは無いよな。──それをあえて放映したことで、『表現の自由』を守ったってわけか? ……単に、モラルと損益とを比較検討して、この内容なら『ギリギリセーフ』だと判断を下しただけじゃないのか?」




ちょい悪令嬢「そんなことを言っているのでは無いのです! そのような低俗な『損得勘定』なぞでは無く、制作スタッフの皆様が、クリエーターとして意地を見せたのですよ! ──自分たちの作品は誰が何と言おうとも、胸を張って世の中に発表することができると!」




メリーさん太「く、クリエーターとしての、意地って……」




ちょい悪令嬢「あえてこの時期に『テロ』を扱った作品を放映&配信したのは、制作陣としての意地だろうし、『表現の自由』を優先したと言えますが、問題はそんな表面的なことに留まらず、むしろ『この時期だからこそ、この作品を世に送り出そう!』と言う、明確な意志が存在していたのです! ──事実今回のエピソード内においては、確固とした個々の人間としての不断の意志と果敢なる行動とが、鮮やかに描かれていたのですから!」




メリーさん太「……テロにおける、あくまでも個人としての、意志と行動って?」




ちょい悪令嬢「それこそ何と言っても、千○ちゃんのヨ○さんやミ○店長さんに対する思慕の念に基づく、『不殺の誓い』に代表されますわね」




メリーさん太「──‼」




ちょい悪令嬢「ガチでテロを扱った作品と言っても、千○ちゃん自身は取り締まる側の公的(独立)組織に所属していて、犯罪者と言うわけでは無いのですが、まだ女子高生ほどの年頃だと言うのに、戸籍が無く幼い頃から各種の戦闘技術を叩き込まれていて、テロリスト相手とはいえ『人殺しに特化された人間兵器』と言った、文字通り『非人間的』扱いを受けているものの、そんな少女──人呼んで『リコ○ス』たちを、千○ちゃんや相棒のた○なちゃんを始めとして、ちゃんと一人の人間として心理描写等を詳細に描いており、非常に血の通った作品となっているのです!」




メリーさん太「……権力側の『対テロ人間兵器』である少女たちの、人間的描写、だと?」




ちょい悪令嬢「例えば千○ちゃんの場合だと、自分に超最先端技術オーバーテクノロジーの人工心臓をくれた人を、まるで『あしながおじさん』みたいな『善意の人』だと信じ込んで、彼に報いるために『不殺の処刑人』を立派にこなしていたのだけど、実は当の『あしながおじさん』としては、せっかく神が与えてくれた『殺人テクニック』を大いに発揮して、『世界最高の人殺し』になって欲しかったのであり、千○ちゃんに失望した挙げ句の果てに、人工心臓内の延命機能を解除して、彼女を『余命数ヶ月』の窮地に追いやってしまったのです」




メリーさん太「──なにその鬼畜⁉ 千○ちゃんからしたまるで天国から地獄そのもので、世界のすべてに絶望してもおかしく無いじゃん⁉ どこかの魔法少女だったら、ソウルジ○ム真っ黒じゃん⁉」




ちょい悪令嬢「しかも『あしながおじさん』ことヨ○さんの『(ホモ)ダチ』で、『監視係兼教育係の黒人の(ゲイの)オッサン』ことミ○店長さんが、ずっと彼女の側で家族同然に暮らしていながら、ヨ○さんの本意をすべて隠し続けていたことを知った時、千○ちゃんは何と言ったかわかりますか?」




メリーさん太「……そ、そりゃあ、面と向かって罵倒するか、絶望のあまり言葉どころか感情すらも無くして、無言で立ち去っていくか──って、ところじゃないのか?」




ちょい悪令嬢「感謝、したのですよ」




メリーさん太「……はい?」




ちょい悪令嬢「ですから、『心からの感謝』を、伝えたのです」




メリーさん太「──どうしてだよ⁉ これって下手すると、親兄弟から裏切られたようなものじゃないか⁉」




ちょい悪令嬢「秘密にされて知らなかったからこそ、『選べた』からですよ。──自分の人生を、自分の意志で」




メリーさん太「──ッ」




ちょい悪令嬢「もしも人工心臓を埋め込まれてすぐに、事実をありのまま知らされていたら、小学生くらいの幼さのままで、すべてに絶望してしまい、それこそ身も心も『殺人マシーン』と成り果てたことでしょう」




メリーさん太「……ひ、否定できねえ」




ちょい悪令嬢「しかし事実を教えられなかったからこそ、彼女は恩人に報いようと『不殺』を誓い、たとえ所詮は『権力の犬』であろうとも、誰にも恥じない正々堂々とした生き方を選ぶことができたのであり、そしてそのお陰で、自分自身や世界そのものに絶望することも、『あしながおじさん』に失望することも、親代わりの監視者を嫌いになることも、断じて無かったのですよ!」




メリーさん太「──うおおおおおおおおおおおっ! 俺は今、猛烈に感動している! 『リコ○コ』は間違いなく、人の心を動かすことのできる傑作アニメだ! さすがは今期の覇権作最有力候補!」




ちょい悪令嬢「……それが残念ながら、現在ネット上においては、(最新話に限っては)やや不評なようなのですよ」




メリーさん太「──何でだよ⁉」




ちょい悪令嬢「何でも『百合成分が少ない』とか、『今更シリアスにされても困る』とかですって」


メリーさん太「……『あいつら』って、ホントしょうもないよな」


ちょい悪令嬢「それに対して本作の作者は、むしろこれぞ『表現の自由の極限への果敢なるチャレンジ』と、大絶賛なわけなのです。ホント、へそ曲がりですことw」


メリーさん太「……そういやあいつ、冒頭でも言っていたけど、どうしてテロを題材としたアニメ作品において、人間描写に力を込めることが、『表現の自由の極限』になるんだよ?」




ちょい悪令嬢「現実世界の状況──特に、『某重大テロ事件』に対する現状が、この作品の人間描写とは比較にならないほど、あまりにもお粗末だからですよ」




メリーさん太「──なっ⁉」




ちょい悪令嬢「自国の元総理という政界の重鎮が、卑劣極まるテロ行為で殺害されたのですよ? ここは日本国民全員が心を一つにして、怒り、悲しみ、哀悼の意を示し、二度とこのような悲劇が起こらないように、公安当局の抜本的刷新を始めとして、全国民の気持ちを引き締める時でしょうが⁉ ──それなのに、肝心の政治家を始めとして、マスコミに自称知識人どもときたら、元総理御本人や御家族はおろか、犯人すらもそっちのけで、宗教がどうしたとか国葬がどうしたとか、むしろ国民を分断するようなことばかりほざきやがって。本来なら一般大衆を啓蒙し指導していくべき政治家やマスコミや知識人が、ここまで落ちぶれていたとは、いくら何でも見下げ果てましたわ」




メリーさん太「あ、うん、別に国葬なんて無理強いをするつもりは無いけど、もっと故人に対して哀悼の念を抱くべきだし、再びこのような悲劇が起こらないように、対テロ対策のために、今こそ全国民が心を一つにすべき時だよな」




ちょい悪令嬢「つまり、現実がこれほどまでにダメダメであるからこそ、今回の『リコ○コ』のようなアニメ作品を始めとする、『創作物』の素晴らしさを再確認することになった次第なのですよ」




メリーさん太「……なるほど、その気持ち、わからないでも無いな」




ちょい悪令嬢「やはり本作で何度も何度も訴えかけていたように、愚劣な政治家やマスコミや知識人どもの体たらくを見るにつけ、この国に『思想の自由』や『信教の自由』や『政治結社の自由』や『報道の自由』なんぞは必要なく、いっそのこと『表現の自由』以外はすべて廃止すべきかも知れませんわね」




メリーさん太「──ちょっと油断したら、またむちゃくちゃ言い出したぞ⁉ そんなこと、全国民的に受け容れられるわけが無いだろうが⁉」




ちょい悪令嬢「受け容れられますわよ。──何せ人間と言うものはむしろ、『自由から逃走』することこそを欲しているのですからね」




メリーさん太「……自由からの、逃走?」




ちょい悪令嬢「社会学者のエーリヒ=フ○ム氏の説でして、人間と言うものは際限なき自由を与えられても、諸手を挙げて喜ぶどころか、己を律す枷すらも『奪われた』ことに不安を覚えるばかりで、むしろ絶対的権力に服することを望むようになると言う、『ドイツ人がヒトラー(による独裁)を受け容れた』最大の理由として挙げられるほどの、有名かつ有力な理論でございます」




メリーさん太「……つまり、人は無定量の自由を与えられても、むしろ持て余すばかりで、結局は『誰かに支配される』ことを望むようになるってわけか?」




ちょい悪令嬢「実際、何事もすべて自分で考えなければならない状況よりも、すべてを誰かに命令されてただ従っているだけのほうが、よほど楽でしょう?」


メリーさん太「そ、そりゃそうだけど、今更日本に独裁政権を打ち立てたとして、まったく反対勢力が存在しないってことはあり得ないんじゃ無いのか?」


ちょい悪令嬢「そう言った輩って、国体が独裁制でも民主制でも、反乱工作するような手合いなんだから、無視するか弾圧するかすればいいだけですよ」


メリーさん太「弾圧するだけって…………おいおい」


ちょい悪令嬢「もちろんそんなことをしなくても、大多数の民衆は快く、『独裁制』を受け容れてくれるはずですわ☆」


メリーさん太「……そんなにうまく行くかねえ」




ちょい悪令嬢「──まあとにかく、まさか現実世界がこれほどまでにダメダメだったとは、予想だにできませんでしたが、その分アニメやWeb小説等の『創作物』の素晴らしさを再確認できて、本作の作者としては『己が選んだ道は間違いでは無かった!』と判明したことで、これまで以上に全力を尽くして、現実なんか及びもつかない、真に理想的な小説セカイづくりに邁進していく所存であります♡」

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