第1067話、【完全新作】わたくし、まさにこれこそが『最強の外れスキル』に決定ですの⁉(その3)

 そしてついにこの南の島では、人間はすべて狩り尽くされてしまった。




 ──ただ一人、もはや傅く者が一人もいなくなった、名ばかりの『王女』である、この私だけを残して。




 ……いや、傅いてくれる者たちなら、現在目の前にいるではないか。


 それも数えきれないほど、大勢いっぱい


 ただしそれは、王国の民でも帝国の兵士でも無く、




 犬やイルカや雀等、種類を問わない、陸海空の無数の動物たちであった。




「──いや、ちょっと待て! イルカはおかしいだろ⁉ ここは島の中央部の王宮の謁見の間なのよ!」




『キュイキュイ、僕たちは軍事用に訓練された特別なイルカだから、二足歩行で銃も撃てるよ。確かそう言ったイラストが、異世界のニッポンとか言う国に有ったはず』




「……いや、『軍事用イルカ』って言っても、いわゆる警察犬レベルに訓練されているだけで、自国の軍艦の周囲を多数泳がせておいて、不審な船舶や兵器が近づいてくるのを知らせたり、何なら自爆特攻させたりするくらいじゃ無いの?」


『わかりませんよお、動物愛護精神なんか微塵も無い野蛮な某北の大国では、イルカの改造人間化なんてやっているかも』


「──結局『ロシアネタ』かよ⁉ ちょっとイルカを軍事利用していることが判明したからって、しつこいんだよ⁉」


『何せ、今回の【完全新作】を作成する原動力ともなったネタですしね、どうしても我々としても、「イルカ推し」とならざるを得ないのですよ!』


「……いい加減メタに走り過ぎだから、そろそろ話を戻しますけど、これは一体どういうことなのですか? どうして侵略軍だけでは無く、この島の人間まで皆殺しにしてしまったのですか? 私自身がそうであったように、あなたたち動物にも親しげに接していた人も多かったろうに」


 ──結局は、畜生の浅ましさか。


 いくら人間のほうが、動物に対して愛情を持って接していようと、


 一度動物としての闘争本能や食欲に駆られてしまえば、ただ人間を見ただけで、無条件で襲いかかってしまうと言うことか。


 ……そのように私が、あきらめ半分に一方的な判断を下そうとした、その刹那、


 ──唐突に突きつけられる、冷や水のような言葉。




『……やれやれ、ティナがそんなにも「甘ちゃん」だから、僕たちが誰彼構わずに、人間どもを皆殺しにしなければならなくなるんじゃ無いか?』




 は?




「──いやいやいや、何ソレ⁉ どうしていきなり、私が悪いみたいに言い出すのよ⁉」


『……え、もしかして、少しも疑問に思わなかったの?』


「疑問?」




『いくら数や兵装に勝る帝国軍といえども、これまでまったく作戦行動をとったことのない未知の土地において、あまりにも攻勢をスムーズに進行させたことを──だよ』




 ──ッ。




 ……い、言われてみれば、確かに。


『つまり、んだよ、今ティナが言っていた、「この島の人間」の中に』


「……いたって、何が?」




『──帝国軍と裏で結びついて、侵略に必要な情報を与えた、「裏切り者」が』




「なっ⁉」




『しかも、帝国と直接交渉できることを考えれば、かなり高位の人間──下手したら、王家に属する者かも知れないね』


「王家に属するって、そんな馬鹿な⁉」


『……だから、「甘ちゃん」だと言うんだよ。普通の人間はね、こんな辺境の小国の王族でいるよりも、大帝国の貴族の一員として、権力と財力を手に入れて、都会の暮らしを悠々自適に享受できるほうが、よほど魅力的なんだよ』


 つまり王族が、自分の私利私欲のために、国や民を外国に売り払ったと言うの⁉


 そんな文字通りに『為政者失格』の不届き者が、私の血縁者にいたと言うわけ⁉


 ……とても、信じられない。


 むしろ、信じたくない!




 ──でも、




 今イルカたちが言ったように、現在の惨状を鑑みれば、『手引きした者』がいたのを完全に否定することも、やはり不可能であった。




「──くっ。確かにそんな『王族失格の裏切り者』がいたとしたら、殺されたって仕方ないと思うけど、だったらそいつだけ殺せばいいじゃない! どうして他の何の罪も無い王国民まで、殺してしまったの⁉」


『いやだなあ、ティナ、何を当然なことを聞いているんだい?』


「へ?」




『僕たち動物に、誰が裏切り者かなんて、わかるはずは無いじゃ無いかあwww』




「──都合のいい時だけ、動物ぶるんじゃねえよ⁉ それに、『裏切り者が誰だかわからない』から、いっそのこと全員殺してしまおうなんて、そんなサイコな危険思想が有るか⁉」




『だからこれも、「可能性」の問題なんだよ。確かに今回の件においては、「敵を手引きした裏切り者」がいる可能性は否定できないけど、それが「誰であるか」は、すべての人間が当てはまって、その可能性を否定することもできないんだ。──だったら、その可能性ごとすべてを排除するほうが、よほど合理的だろう?』




「何が合理的だ、この『頭キュ○べえ』が⁉」


『「キュ○べえ」は酷いなあ、そこはせめて「頭進○(の巨人)」と言って欲しいんだけど? ──それにこれはさっきから何度も言っているように、君のためにしたことなんだよ?』


「──何が私のためよ! 私だってこの国の人間で、地位の高い王族の一員なのであり、立派に『裏切り者の可能性』が有るんだから、あなたたちにとっては『排除対象』でしょうが⁉」




『いいや、ティナは「人間」なんかじゃ無いよ。──少なくとも、僕たちにとってはね』




 ………………………………………………はあ?




「……私が、人間じゃ無いって、一体どういうことよ?」




『だから最初に言ったじゃ無いか? ──僕たちこの島の動物たちは、自分たちの「神様」のために、すべての人間を滅ぼすって』


「……ええ、確かにそんなことを言っていたような気もするけど、それがどうしたの?」




 そして、目の前のイルカの大きな口から飛び出したのは、これまでに無い天変地異レベルの、驚愕の言葉であった。




『──つまり、その「神様」と言うのが、君のことなのさ!』




 は?………………………………………………って、




「はあああああああああああああああああああああああ⁉」







(※次回に続きます)

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