第1066話、【完全新作】わたくし、まさにこれこそが『最強の外れスキル』に決定ですの⁉(その2)
──それからの有り様ときたら、まさしく『地獄絵図』以外の何物でも無かった。
……ただし、
まさに今口々に弱音を吐き慌てふためいているのは、侵略され蹂躙され続けているこの南海の孤島の住人たちでは無く、ついさっきまで圧倒的に有利な状況にあったはずの、侵略
「──な、何だ、これは一体、どういうことなんだ⁉」
「
「もはや戦争どころじゃ無い、こんな島なんかあきらめて、今すぐ逃げ出すべきだ!」
「駄目だ、すでに唯一の港は、『あいつら』に占領されて、船もすべて沈められてしまった!」
「──まさか! 帝国自慢の、大型帆船もか⁉」
「クジラだ、クジラが数頭いっぺんに、体当たりをカマしてきやがったんだ!」
「クジラって、この近海には、クジラなんていないはずだろ?」
「知るか、実際に船はすべて、沈んでしまったんだからな!」
「あれだけの数の有った軍船が、全部かよ⁉」
「それってみんな、クジラの仕業か?」
「いや、帆船以外のガレー船とかは、イルカの仕業だ」
「い、イルカあ⁉」
「むしろイルカこそが、『海のやつら』の司令塔みたいだな」
「イルカがかあ?」
「イルカを舐めるな、あいつらの頭脳は、かなり優秀だ」
「脳みその体積では、人間すらも凌駕しているからな」
「事実、我が軍の歴戦の海兵たちが、手も足も出ずに翻弄されっぱなしで、這々の体で逃げ出したくらいだし」
「異世界の『ロスケ』という国においても、普通にイルカを軍事利用しているそうだ」
「何でも『ライド・オン・キング』と呼ばれている帝王が、自ら騎乗して闘いに赴いているとか何とか、もっぱらの噂だとよ」
「……残念ながら、諸般の事情で、アニメ化は断念したそうだが」
「──まあ、今回の【突発短編】の隠しテーマである『イルカ』ネタのノルマは、これくらいで十分として、問題はむしろ、陸と空のほうだよな」
「いやいやホントどうなっているんだ、この大攻勢は⁉」
「『陸の主力』は、犬や狼や熊やゴリラ等々、多彩な顔ぶれであるのはもちろん、一体何なんだ、この数は⁉」
「こんな南の果ての絶海の孤島に、どうしてこれほどまでの種類と数の、大型陸上生物が棲息しているんだ⁉」
「確かに島の中央には、総面積の三分の一ほどを占める大森林があるが、それにしたって異常だろう?」
「……まさか、『ワープホール』でも、密かに設置されているんじゃ無いだろうな?」
「さっきから、殺しても殺しても、すぐに新手が現れやがるしな」
「……これも話によると、イルカどもの仕業らしいぞ?」
「「「──また、イルカかよ⁉」」」
「いや、どうして陸上動物の無限増殖が、イルカのせいなんだ?」
「やはりあいつらこそが『海洋生物部隊』のリーダー格のようで、自分たちはもちろん、大亀やクジラ等を指揮して、背中に多数の犬や狼なんかを乗せて、大陸各地から連れてきているそうだぜ?」
「……あれ? 俺が目撃したのは、たくさんの数や種類の陸上動物を乗せた大きな網をぶら下げている多数の鳥が、この島と大陸との間を行き来している姿だったけどな」
「『海上輸送』だけでは無く、『空中輸送』まで行っていたのかよ⁉」
「…………いや、ちょっと待て」
「な、何だ、急に改まった
「元々この島に棲息していたイルカや犬が、突然外部からやって来た俺たちに対して、動物ならではの『縄張り意識』等によって敵意を生じさせるのは、十分理解できるが、そもそも畜生ごときが組織的行動をして、外部の何の関係も無いやつらまで呼び寄せるなんて、いくら何でもおかしいとは思わないか?」
「「「あ」」」
「これって本当は、単に動物たちが凶暴化したのでは無く、『なにがしかの作為』が存在してるのでは無いのか?」
「……た、確かに」
「例えば、まさにこのように『動物を操る魔法』が、この島伝統の『ユニークスキル』だったりしてな」
「道理で、おかしいと思った」
「あいつら、いくらこちらが圧倒的な武力で殺し続けても、全然恐れること無く、挑み続けてきやがるからな」
「魔術か何かで操られているとすれば、あいつらの組織的攻撃も、自らの命を省みない特攻の連続も、大いに納得がいくよな」
「──で、でも、納得がいったのはいいが、それって俺たちにとって、絶体絶命の大ピンチってことじゃないのか?」
「そうだよ、こちらは補給線が完全に絶たれているというのに、あいつらのほうは無尽蔵に兵力を供給できるんだからな」
「特に厄介なのが、何と言っても『鳥』たちだ」
「外部からの無限増援という意味では、イルカを始めとする海の連中も脅威だが、臨海地帯から離れれば、何も問題は無くなるしな」
「それに比べて空からの攻撃は、
「建物等に立てこもれば幾分防ぎやすいが、増援も補給も望めない現状では、単なる『じり貧』だし……」
「まさか、我々帝国軍の精鋭部隊が、動物相手に手こずることになるなんて」
「いやむしろ『動物相手』だからこその、現在の苦境とも言えるのでは?」
「そうだ、我々歴戦の戦士は、人間相手なら戦い慣れているが、動物相手では、あまりにも勝手が違いすぎる」
「くそっ、殺意を持って挑んでくる動物たちが、これほどまでに手強いとは……」
「何せ、陸海空を問わず無尽蔵に殺到してくるのみならず、そのすべてが我が身を省みず特攻してくるんだからな」
「これではもはや我らは、完全に八方塞がりだよ」
「後はただ、死を待つばかりなのか⁉」
「──いやだから、まさにその動物たちを操っている術者を殺せば、万事解決するだろうが⁉」
「「「──‼」」」
「そうか、その手が有ったか!」
「何せ『対人戦』ならば、俺たちのお家芸だしな!」
「よし、取りあえず動物の相手は後回しにして、この国の人間をすべて根切りにしていって、術者をあぶり出そうぜ!」
「なあに、術者を特定するまでも無く、全員排除すれば、すべては解決するけどな」
「それじゃ、善は急げと言うことで──」
「「「──うわああああああああ、助けてくれえ!!!」」」
ようやく帝国兵たちが、現在の圧倒的な苦境を打開する案をまとめて、いざ実行に移そうとした、その刹那。
その場に響き渡る、断末魔の絶叫。
しかしそれは、帝国の人間のものでは無かった。
「「「…………は?」」」
そう、声が聞こえたほうへと駆けつけてみれば、そこで無数の犬たちに生きたまま食い尽くされようとしていたのは、間違いなくこの王国の民たちであったのだ。
(※次回に続きます)
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