第1068話、【完全新作】わたくし、まさにこれこそが『最強の外れスキル』に決定ですの⁉(その4)

「…………は? 私が『神様』ですって? しかも、あなたたち、この世のすべての動物にとっての?」




『そうです』




「──いや、何でそんなことになっているの⁉ 私神様になんかになった覚えは無いんですけど⁉」




 まったく意味不明の言葉を突きつけられて、私が当然のごとくわめき立てれば、


 すかさず返ってくる、更なる驚愕の言葉。




『覚えが無いのも当然だよ、ティナは最初から神様だったんだから』




 はい?


「──何ソレ! あんたら、私が生まれた時から神様だったとか言うつもりなのか⁉ だったら私のお母さんは『王妃』様では無く『聖母』様だったわけかよ⁉」




『何言っているんだい、ティナは正確に言えば、この世界で「生まれた」のでは無く、この世界に「転生してきた」んだろう?』




 ──ッ。


「ど、どうして、それを⁉」


『どうしてもこうしても、ティナ自身が教えてくれたようなものじゃ無いか?』


「はあ?」


『君はこの世界に転生する時に、「なろう系」恒例の「スキル授受の儀式やりとり」において、何を願ったっけ?』


「……ええと、ある意味『当事者』であるみんなを前に言うのは面はゆいんだけど、『すべての動物たちとお互いに心を通わせて、仲良くなれること』だけど?」




『『『──そうそれこそが、ティナ自身を神様にして、僕ら動物に知恵を与えることになったのさ』』』




 へ?


「──いやいやいや、どうして動物と仲良くなりたいと願うだけで、神様なんかになっちゃうのよ⁉」




『「みんなと仲良くしたい」と同じように、誰もがあまりにも安易に考えつく「良くある願い」として、「全世界が平和になるように」とか「みんな豊かで幸せになるように」とか言ったのが挙げられるけど、そんなものは絶対に実現不可能なんだ。──なぜなら、人間には「欲」があるからね。常に、「人よりも上に立ちたい、人よりも豊かになりたい、人よりも幸せになりたい」──などと考えている生物が、一つの惑星に何十億もいて、限られた資源を奪い合っているというのに、全世界における「平和」や、全人類平等の「豊かさや幸せ」が、本当に実現できるとでも思うのかい?』




「──‼」




『もしもそんな常識知らずの欲望を、ティナが元いた「超現実的な世界」で叶えようと思えば、一つの国や一人の独裁者によって、他のすべての国や国民を従属させて、皆等しく奴隷にする以外は無いと思うんだけど?』


「──それ何と言う、共○主義国家⁉」


『共○主義だろうが全体主義だろうが、独裁者の統べる覇権国家が世界を支配して、すべての民を「平等に」支配しない限りは、「平等な豊かさ」と「平等な幸せ」に基づく、全人民の「融和なかよし」状態なんてものは、実現できっこ無いんだよ』


「……でも、その『豊かさ』とか『幸せ』って、いかにもレベルが低そうよね」


『君が元いた世界の、共○主義とやらを掲げている、「口だけ理想国家」みたいに?』


「──ノーコメントで」


『あはは、仮にも現在は一国の王女である君すらも、「ノーコメント」を貫かなければならない、この上なき「畏怖の対象」である共○主義国家や全体主義国家の独裁者って、その国の民にとっては「どのような」存在なんだろうね?』


「そりゃあもちろん、『神』にも等しき、絶対的存在………………あ」




『そう、すべての種族から満遍なく信奉されて、平等の友誼と豊かさと平和とを与えることができるなんて、「神様」以外にあり得ず、この世界に転生時に「すべての動物とわかり合い仲良くしたい」と願った君は、当然のごとく、「すべての動物にとっての神様」にならざるを得なかったんだよ』




「──なっ⁉」


 私があくまでもありきたりだと思っていた願いこそが、私自身を『神様』にしてしまったですってえ⁉


『更にはそれこそが、僕たちこの世界のすべての動物に、「知恵」を与えることになったんだ』


「……動物に知恵って、どうして?」


『そりゃあ、人間である君と心を通わせて仲良くするには、当然のごとく、「人間並みの知性」が必要になるじゃ無いか?』


「あ」




『──そこで、この世界の動物たちは皆、「集合的無意識とアクセスできる」能力を手に入れることになったのさ!』




 ……出た、


 集合的無意識とのアクセス。


 この作者の作品て、こればっかりだよな⁉




『ありとあらゆる世界のありとあらゆる時代のありとあらゆる存在の記憶と知識──すなわち、「ありとあらゆる情報」が集まってくると言われる「集合的無意識」と、こうしてアクセスできるようになったからこそ、君と対等に会話を行えるようになったのはもちろん、君が「ゲンダイニッポン」という異世界から、この世界へ転生してきたことも知り得たわけなんだよ』




「つまり、この世界の動物はすべて、人間並みの知性を得たってこと? …………この島の中限定では無くて?」


『この島にだってよその国から渡り鳥が来たりするし、君がこの島以外の国に出向く可能性も皆無では無いし、世界中の動物が君と知性的なやり取りができなければ、君の「すべての動物とわかり合いたい」という願いが叶えられなくなるじゃ無いか?』


 ──うっ⁉




『それに、君の願いはもちろん、君自身を守るためにも、場合によっては、世界中の人間を滅ぼさなければならないから、すべての動物に知性が無いと困るんだよ』




「──いやだから、何でそうなるの⁉ どうして人間の私の願いを叶えるために、すべての人間を滅ぼさなければならなくなるのよ⁉」




『それは当然、人間は誰でも、君を害する可能性を有しているからさ。──言ったろう? この島を帝国に売って、下手すると君を殺すことにもなりかねなかった、「裏切り行為」を働いたのは、君の身内である「王族」である可能性が高いって』




 ──うぐっ⁉




『親族さえも、この体たらくなんだ。世界中に数十億もいる赤の他人なんて、自分たちの欲望を叶えるためなら、君を犠牲にすることなぞ少しも躊躇わないだろうよ』


「だ、だからって、世界中の人間を滅ぼすなんて、極端でしょう⁉」


『極端じゃ無いよ、普通のことだよ。……ったく、忘れないでくれよな。君は僕たち動物にとっての「神様」なんだよ? 自分が崇拝している神様が害されそうになっているんだから、その不埒来まわる者どもを種族丸ごと滅ぼそうが、少しもおかしく無いだろうが?』


「──いやいや、それってあまりにも「狂信的」じゃないの⁉」


『あのねえ、僕らはあくまでも「獣」なんだよ? 獣が野生のままに暴力行為に走って、何が悪いんだよ?』


「あなたたちはすでに、人間並みの知性を有しているんでしょう⁉」




『言ったろう、僕らが現在知性を有しているのは、集合的無意識とアクセスしているからだって。そもそも集合的無意識とは、ティナの世界における「ユング心理学」で言うところでは、文字通り無数の人間の「無意識の集合体」なのであり、僕たちこの世界の動物にしたって、一匹一匹が人間並みの知能を得たわけでは無く、無数の動物が集合的無意識を介して繋がり合うことによって、「群体」として、君が以前にいた世界でたとえるならば、「並列処理型の量子コンピュータ」を形成しているようなものなんだよ』




 りょ、量子コンピュータって、いきなりSF路線突入かよ⁉




『もちろん、さっきみたいに我が身を省みず特攻をすることをできるのも、僕たちが「群体的存在」であるゆえに、個体としての生存本能なんて超越しているからなんだよ』




 ──‼






(※次回に続きます)

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