第1032話、【四月バカ】わたくし、愛するがゆえの嘘だからこそ、より罪深いと思いますの⁉

「……ごめん、アーノルド、僕はずっと君に、嘘をついていたんだ! ──実は僕にとっての君は、『友だち』なんかでは無かったんだ!」




 ホワンロン王国王立量子魔術クォンタムマジック学院の、人気のまったく無い放課後の体育館裏にて響き渡る、僕の悲痛なる叫び声。




 それは物心ついてからずっと、『親友』の間柄にあったはずの、筋骨隆々とした大男へと向けられていた。




 そんな言葉を聞くや、サッカー部の主将を務めている学内一の人気者は、顔色を一変させて、目の前の発言者のなよなよとした中性的な少年(僕のこと)へと、すがりつくようにしてまくし立ててきた。


「──ど、どういうことだ、エリック! 幼い時に誓った俺たちの『永遠の友情』を、今更になって無かったことにするつもりなのか⁉」


「……すまない、アーノルド、本当に、すまない」


「嘘だ! 嘘だろ? むしろその発言こそ、嘘なんだろ⁉」


「…………ごめん」


「それじゃ、何か⁉ おまえは友だちのフリをして、俺のことをずっともてあそんでいたのか⁉ いつもおまえと一緒にて喜んでいた俺に対して、陰でこっそりと馬鹿にしていたのか⁉」




「──そんなことは無い! 確かに僕は君のことを友だちとは思っていなかったけど、心から『愛している』ことは本当だ!」




 つい堪りかねて口を突いて出てしまう、心からの本音の言葉。


 それに対してこれまでに無い『驚愕の表情』となる、幼なじみの少年。


 ……君のこんな顔だけは、見たくなかったのに。


「──くっ」


 もはやこの場にいることなどできなくなり、思わず踵を返して駆け出そうとしたところ、


「──待ってくれ!」


 がっしりと右腕を掴み取られて、足止めされてしまう。


 こうなってしまえば、そこいらの女の子よりも貧弱な僕では、振り払うことは不可能であった。


「放してよ! こんな嘘つきな僕なんか、君の隣にいるのはふさわしく無い! もうこれ以上、君に嘘をつき続けるのは堪えられないんだ!」


「……どういうことなんだ、一体? つまりおまえは俺に友情では無く、『愛情』を抱いていたってわけなのか?」


「ふふふ、気持ち悪いよね、僕なんかが君にこれまでずっと、劣情を催していたなんて!」


「れ、劣情って………………男のおまえが、男の俺にか?」




「──実は僕は『性同一性障害者』で、身体は男だけど、心は女なんだ!」




「なっ⁉」


 僕のいきなりのカミングアウトに、更に目を見開きこちらをまじまじと見つめだす、『最愛の幼なじみ』。


 その視線に耐え切れず、今度こそこの場を逃げ出そうとした、


 まさに、その刹那。


「…………へ?」


 いきなり分厚い胸板へと抱きしめられるや、顎を持ち上げられて、




 熱い口づけを、食らったのであった。




「──ウップ! あ、アーノルド⁉」


「……すまん、エリック、実は俺もおまえに、ずっと嘘をつき続けていたんだ!」


「え」




「──実は俺は『ガチホモ』で、おまえに対しては友情よりも、『性欲』を感じていたんだよ!」




 ………………………………………………は?




「だがしかし、今俺は猛烈に感激している! まさかおまえがトランスジェンダーで、『女』として俺のことを愛してくれていたなんて! これで俺たちは晴れて『相思相愛のカップル』だな♡ ──いやあ、これぞまさに、『嘘から出たまこと』だったりして? HAHAHAHAHA☆」




「──相思相愛のカップルって、トランスジェンダーとガチホモが⁉」




「うん? 何か問題でも有るのか?」


「問題って…………いや確かに、僕が想像していた方向性とは違うけど、結果的にはこうして『相思相愛』になれたのだから、問題は無い…………のかな?」


「そうだろうそうだろう……………それともまさか、同じ『LGBT』だと言うのに、『ホモは嫌!』とか、差別するつもりじゃないだろうな?」


「ま、まさか! 『LGBT』でありながら自ら差別をしたら、まさしく『自殺行為』そのもので、『差別反対運動』を装った『特権ごり押しムーブメント』が、もう二度とできなくなってしまうじゃ無いか⁉」


「──よし、これで『両者の合意』は成立したな⁉」


「ちょっ、何をしているんだ、君ィ⁉」


 なぜか突然ベルトを外して、制服のズボンを下着と共にずり下げる、自称『ガチホモ』。


 思わず両手で視界を塞ぐ、『心は乙女』な僕。


「……これまでずっと我慢してきたんだ、相思相愛と知った今、これ以上辛抱できるものか!」


「だ、駄目だよ、アーノルド! これは『小説家になろう』や『カクヨム』なのであって、『ミ○ドナイトノベルズ』じゃ無いんだ! 運営様に『垢バン』されてしまうよ⁉」


「──いいから早くこっちに来て、俺のことを『突いて』くれ!」


「は? 突いてくれ、って…………」


 あまりにも不可解な言葉に、思わず目を開けば、




「──いやいや、どうして四つん這いになって、丸出しのお尻をこっちに向けているの⁉」




 そして、最愛の幼なじみの口から飛び出す、天変地異レベルの告白カミングアウトの言葉。




「──実は俺はガチホモはガチホモだけど、ポジション的には『受け』なんだ!」







 ──この続きは、『ミ○ドナイトノベルズ』にて♡
















ちょい悪令嬢「──なんちゃって、うっそぴょーん☆」










メリーさん太「──てめえ、ふざけるのも、大概にしろ⁉」




ちょい悪令嬢「──痛っ! な、何ですか、メリーさん⁉ いきなり古式ゆかしき『ハリセン』で、人の後頭部を全力ではたいたりして⁉」




メリーさん太「やかましい! 一体何なんだ、このむちゃくちゃな【突発短編】は⁉」


ちょい悪令嬢「何ってもちろん、今年の【エイプリルフール企画作品】ですけど?」




メリーさん太「──それにしたって、限度と言うものがあるだろう⁉ なにあの下品極まる内容は⁉ しかも『LGBT』をコケにし尽くすわ、結局オチ自体が嘘だわで、読者の皆様に失礼だろうが⁉」




ちょい悪令嬢「でも、これでまた一つ『LGBT』における『致命的矛盾』が明らかになったので、十分『社会派作品』と言い得るのでは無いでしょうか?」


メリーさん太「……何だよ、致命的矛盾て?」




ちょい悪令嬢「『身体は男☆心は乙女』のトランスジェンダーと『ガチホモ』のゲイとの間で、恋愛は成立するのか? もしもどちらかが拒んだ場合、それは『差別』に該当し、『差別撤廃』を旨とする『LGBT』にとって『自己否定』になるのでは無いか?──と言った、根本的疑問を世に問うたわけですよ」




メリーさん太「うぐっ⁉ た、確かに……」


ちょい悪令嬢「そういうわけで、各サイトの運営様も、きっと大いに推奨してくださることでしょう♡」




メリーさん太「──そんなわけあるか⁉ この『春の(垢)バン祭り』の真っ最中に、わざわざ危険極まる作品を公開するんじゃ無いよ⁉」













ちょい悪令嬢「……『危険極まる』と言えば、もしも愛する相手が『受けのガチホモ』だった場合、『心は乙女』のトランスジェンダーとしては、精神的にはともかく、肉体的にはどう反応すべきなんですかねえ?」




メリーさん太「……肉体的には、って?」




ちょい悪令嬢「ほら、『心は乙女』と言っても、肉体的には完全な『男』では無いですか? 精神的には抵抗が有っても、肉体的には『受けホモ』の欲求に応えることができるものの、もしも実際にヤッてしまったりしたら、『心の乙女』──すなわち、『トランスジェンダーとしての己自身』と、完全に矛盾してしまうのでは?」




メリーさん太「──‼」




ちょい悪令嬢「う〜む、これは本格的に別作品化──場合によっては、それこそ『ミ○ドナイトノベルズ』等において連載化して、とことんまで追求すべき命題かも知れませんねえ……」




メリーさん太「──なんか、これまたとんでもない、『嘘から出たまこと』になりそうだな⁉」

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