第980話、わたくし、そもそも『悪役令嬢』なんて概念が有るのは『現代日本』だけだと思いますの⁉

メリーさん太「……おい、前回のは一体、何なんだよ?」




ちょい悪令嬢「何って、毎度お馴染みの【突発短編】ですけど?」




メリーさん太「──いや、ここしばらくは、【カクヨムコン7】エントリー作品の『なろうの女神が支配する』について、自己検証する予定じゃ無かったのか⁉」


ちょい悪令嬢「もちろんそのつもりなのですが、むしろそのためにこそ、すでに『カクヨム』様にて公開済みの『悪役令嬢』系のエピソードを、読み直していたところ」


メリーさん太「ところ?」




ちょい悪令嬢「『悪役令嬢における真理』を、会得したのでございます!」




メリーさん太「………………………は?」




ちょい悪令嬢「いやあまさか、悪役令嬢が『異世界転生者』だったなんて、もうびっくりですわ☆」




メリーさん太「えっ? えっ? …………あ、あの、『異世界転生者』? 悪役令嬢が?」




ちょい悪令嬢「そうです」




メリーさん太「それってつまり、悪役令嬢が『別の世界』から『転生』してくるってこと? 剣と魔法のファンタジーワールドなんかに、最初からいるのでは無くて?」


ちょい悪令嬢「具体的に申せば、『現代日本』から転生して参ります」




メリーさん太「──いやいやいやいや、普通は『逆』だろ⁉」




ちょい悪令嬢「逆、とは?」


メリーさん太「現代日本人が『乙女ゲーム』そのままの世界に転生して、しかもよりによって将来『悪役令嬢』として破滅する運命の人物に生まれ変わったことに気づいて、何とかして努力と策略を尽くしていくって言うのが、『悪役令嬢系Web作品』のセオリーだろうが⁉」


ちょい悪令嬢「でも、『異世界転生』自体が行われているのは、確かなんですよね?」


メリーさん太「……それはまあ、何と言っても異世界転生が行われないと、話が始まらないからな」


ちょい悪令嬢「でしたら、むしろ異世界転生によってこそ、新たにというパターンが有っても、別におかしくないのでは? 何せそもそも異世界転生が実現すること自体が『超常現象の極み』なのだから、普通の品行方正な貴族のお嬢さんが、ある日突然悪役令嬢として覚醒することくらい、大したことではないでしょう?」


メリーさん太「いや、それは(比較対象を意図的にズラしている)詭弁と言うものだろうが⁉ 確かに『異世界転生』なんて原則的にあり得ないけど、悪役令嬢のほうは現実的に存在していても、別におかしくは無いじゃないか⁉」




ちょい悪令嬢「──いいえ、おかしいですよ。そもそも悪役令嬢自体が物理的に存在しているかどうか以前に、『悪役令嬢』などと言った『概念』自体、現代日本以外に存在し得ず、そのWeb小説の舞台が現代日本とは似ても似つかぬファンタジー異世界なら、そこに存在している『悪役令嬢』は例外無しに、日本からの転生者と見なしても構わないでしょう」




メリーさん太「現代日本以外に、悪役令嬢は存在しないって? ──いやいや、『なろう系』でお馴染みの『乙女ゲームそのままの異世界』なら、ごまんと存在しているだろ⁉」




ちょい悪令嬢「存在するものですか! 『なろう系』作品の作者や読者である現代日本人の見地に立った『メタ的な台詞』でも無い限り、『わたくし、悪役令嬢ですの!』とか、『あの公爵令嬢って、まるで悪役令嬢そのものですわよねw』なんて言葉、けして出てきたりはしないでしょう」




メリーさん太「──うっ⁉」




ちょい悪令嬢「もちろんこれは『呼称』だけの問題では無く、そもそも『乙女ゲーム』ならではの絵に描いたような『悪役令嬢』なんて、たとえそれがいかにも非現実的な『剣と魔法のファンタジーワールド』であろうとも、現実の貴族社会に存在するわけが無いのです。──確かに貴族社会ならではの、陰湿ないがみ合いや勢力争いはあるでしょう。しかし上級貴族のお嬢様が、本来取るに足らない下級貴族の娘に対して、いかにも『悪役令嬢』そのままな仕打ちをすることなぞ、まったくと言っていいほどあり得ないでしょう」




メリーさん太「──ううっ⁉」




ちょい悪令嬢「つうか、そもそもすべての発端とも言える『低年齢層向けの学習雑誌に掲載されていた少女漫画』なんかには、確かに『意地悪な貴族のお嬢様』が登場して、主人公の女の子をいじめたり嫌がらせをしたりしていましたが、それをメタ的に『悪役令嬢』としてキャラづけしたのは、ごく最近の『なろう系Web小説』においてであって、そのほとんどの作品では当然のごとく、『異世界転生』とセットになっているのですよ」




メリーさん太「──うううっ⁉」




ちょい悪令嬢「そんなわけですので、むしろ本来『異世界』においては、『悪役令嬢』なんて存在しておらず、日本からの転生者によって、その『概念』自体を伝えられたと見なすべきでしょう」




メリーさん太「──ううううっ⁉」







ちょい悪令嬢「……ていうかさあ、『悪役令嬢系Web作品』て、もうワンパターン過ぎて食傷気味なんだよ? どの作品見ても『乙女ゲームに熟知しているアラサーOL』が、まさに『乙女ゲーそのままの異世界』に転生して、自分が将来『悪役令嬢』として破滅しないように、とても大貴族の子女とは思えないほど控えめに努めて、周りの人たちから気に入られようとして、しかもなぜかそんな『本来ならあり得ないシチュエーション』だというのに、とにもかくにも御都合主義そのままに『大人気キャラ』になるといったのばかりではありませんか?」







メリーさん太「──うおいっ! いきなりほとんどすべての『悪役令嬢作家』の皆様に、ケンカを売るような発言をするなよ⁉」




ちょい悪令嬢「そいつらが無能なのが悪いのでは? そんなに現代日本にいる時に『乙女ゲーム』をやりこなしていると言うのなら、夢が叶って『乙女ゲームの世界に転生』できたとしたら、むしろ『悪役令嬢』として率先して欲望の限りを尽くそうとするのが、自然な在り方ではございませんの? この先のシナリオをすべて知っているのだから、『破滅ルート』を回避することすらも、けして不可能では無いでしょうし」




メリーさん太「……そ、それはまあ、確かにそうだな」




ちょい悪令嬢「──と言うことを、『なろうの女神が支配する』における作中作である、『悪役令嬢×ショタ王子』シリーズを読み返していて、閃いたわけなのです☆」




メリーさん太「……え? 『なろうの女神が支配する』に、そんな内容のエピソードが有ったっけ? ──そもそも本作同様に、あっちのほうだって『特殊な悪役令嬢』しか登場していないんだから、『一般的な悪役令嬢の判断基準』には、とてもなり得ないんじゃ無いのか?」


ちょい悪令嬢「むしろ『特殊な悪役令嬢』だったから、良かったのですよ!」


メリーさん太「はあ?」




ちょい悪令嬢「『なろうの女神が支配する』の作内シリーズ『悪役令嬢×ショタ王子』における『悪役令嬢』とは、王国における『人型最終決戦兵器』であり、『悪役令嬢』の力に覚醒した女子が生まれるか否かは、当の筆頭公爵家はおろか王国そのものの運命を左右するので、筆頭公爵家の令嬢として生を受けながら、いつまで経っても『悪役令嬢』としての片鱗を見せることの無かった、当該作品のヒロインであるのオードリー=ケースキー嬢は、一族の重鎮たちから『出来損ない』と見なされて廃嫡されかかって、彼女の代わりに分家の娘を新たな悪役令嬢候補にすると言った動きすら有ったのです!」




メリーさん太「──なんか某『劣等生系なろう小説』の、『戦略魔法師』そのまんまなパターンだな⁉」




ちょい悪令嬢「そこで、どうしても悪役令嬢になりたいと願ったオードリー嬢の、身の内に秘められていた莫大なる量の『魔導力』が発動して、(本作では毎度お馴染みの)『集合的無意識とのアクセス』を果たし、『現代日本の乙女ゲームマニアのアラサーOLの記憶と知識』を己の脳みそにインストールし、『事実上の異世界転生』を実現して、めでたく『悪役令嬢』として覚醒したわけです」




メリーさん太「……ああ、その点に関しては、『いつものパターン』というわけか」




ちょい悪令嬢「そりゃそうでしょう、本作における最大のモットーとして、『すべての超常現象は集合的無意識とのアクセスによって実現できる』のですからね。『異世界転生』はもちろん、この作内シリーズならではの『最終兵器』としての悪役令嬢の『異能の力』も、集合的無意識とのアクセスによって実行しているのですわ☆」




メリーさん太「なるほど、そのようにキャラ設定的には『特殊な悪役令嬢』でありながら、『すべては集合的無意識とのアクセスによって実現している』という基本原則を厳守しているからこそ、『むしろ異世界転生することによって、率先して悪役令嬢となろうとする』という、これまでに無い奇抜極まるアイディアをひねり出すことができたのか」




ちょい悪令嬢「もしかしたら無数に存在するWeb作品の中には、『あえて悪役令嬢であることをエンジョイする』作品がすでに存在しているかも知れませんが、この作品のように『悪役令嬢になれなければ、むしろ破滅してしまう』というのは、ほとんどあり得ないでしょうね♫」




メリーさん太「うん、方向性的に『悪役令嬢モノのセオリー』とは、まったく真逆だからな。希代の『へそ曲がり』である本作の作者以外には、思いつきもしないだろう」













ちょい悪令嬢「……『へそ曲がり』って、そこはせめて『鬼才』とか言ってくださりませんか?」

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