第970話、わたくし、皆様に極超音速ミサイルに関する『真に正しき知識』を授けようと思いますの♡(後編)

メリーさん太「……大陸間弾道弾ICBMのフルスピードって、いかにもロケットエンジンのフルパワーによってもたらされるものと思っていたけど、あれってただ単に『自由落下』していただけなのか⁉」




ちょい悪令嬢「何度も申しますが、ロケットエンジンは『飛距離』を少しでも延ばすために、『打ち上げ高度』を稼ぐことこそを目的としておりますので、その結果得られる『超音速』は、ただの『副産物オマケ』でしかないのですよ」




メリーさん太「確かにな、最も重要なのは、制空権を完全に握られている中で敵の妨害を受けずに、超長距離砲撃を行うことだからな。そもそも大気圏を突破する弾道を描くミサイルを、大気圏内の敵迎撃機が撃墜できるはずも無く、『速度』はそんなに重要では無かったんだ」


ちょい悪令嬢「結果的には落下時にマッハ4ほどに到達するとはいえ、もはや自由落下態勢に入った巨大な金属の塊を途中で撃破する術なんか、どう考えても最初から有り得ませんしね」


メリーさん太「……そしてそれからほんの十年から二十年の間で、V2号を基にして、核弾頭を搭載した大陸間弾道弾ICBMはもちろん、月にまで到達する宇宙ロケットが開発されたわけだ。──当然そのクラスともなると、マッハ5以上の『極超音速』を実現できたんだよな?」


ちょい悪令嬢「もちろんでございます」


メリーさん太「更にそれに対して、敵対する陣営においては、マッハ5以上の極超音速で飛来する大陸間弾道弾ICBMを、的確に撃墜するシステムを構築していったんだよな?」


ちょい悪令嬢「ええ、実はミサイルの弾道はあらかじめほとんど正確に予測計算シミュレーションが可能で、むしろそのためにこそ『富嶽』のようなスーパーコンピュータが開発されたとも言えるのです」


メリーさん太「……だったらどうして、ここ最近各種メディアにおいて、まるで極超音速ミサイルがまったく新しい軍事技術の結晶で、あたかも撃墜手段がまったく無いように、盛んに喧伝しているんだ?」


ちょい悪令嬢「だからそれはあくまでも、大陸間弾道弾ICBMタイプの話で、最初に申しましたように、両者をごっちゃにしているだけなのですよ。確かに弾道弾タイプ自体も、速度の更なる向上が図られ、『飛行時の軌道変更』や『飛行高度の低下』等々といったふうに、『撃墜しにくい』工夫は施されておりますが、それ程目新しい話ではございません」


メリーさん太「大陸間弾道弾ICBM以外のタイプって、いわゆる『巡航ミサイル』のことか?」




ちょい悪令嬢「実は巡航ミサイル自体も、第二次世界大戦時のドイツにおいて、すでに実用化されていたのですよ」




メリーさん太「ええっ⁉………………………って、ああ、『V1号』飛行爆弾のことか」


ちょい悪令嬢「そうです、Fiフィーゼラー103──別名、『報復兵器第1号』です。実はこちらのほうは、『パルスジェット』と呼ばれる使い捨ての簡易なジェットエンジンによって、基本的に『水平飛行』を行う無人の飛行機のようなもので、飛行速度も毎時600キロメートル程度でしか無かったのですよ」


メリーさん太「時速600キロって、それじゃ当時のレシプロ戦闘機でも、十分撃墜可能だったのでは?」


ちょい悪令嬢「はい、それ程簡単では無かったようですが、実際に発射されたV1号全体の三分の一──イギリス本土に到達した分では、優に約半数の撃墜を成し遂げたそうです」


メリーさん太「……そんな不完全な兵器が、よく現代まで生き残ったよな? あの時点でもV2号のほうは、撃墜がほとんど不可能で、核弾頭を搭載しようと思えばけして不可能では無く、将来性は十分だったのに対して、V1号のほうは、速度はダメダメだし、あの小型の機体では核弾頭化なんて絶望的と思われても仕方ないのでは?」




ちょい悪令嬢「まず何と言っても、『金食い虫』のV2号に対して、製造コストが破格なまでに安上がりで、しかもいくら撃墜されようが、V1号の性能自体が不十分で途中で海に落っこちろうが、原則的に(通常の有人爆撃機とは違って)『人的損失』が皆無なので、兵器としての『コストに対するメリット』が超優良であり、むしろ戦後各国においてもてはやされて、全力で性能向上が図られて、原始的ジェットエンジンだった主動力は、今や最新鋭のスクラムジェット化されて、その余力により機体の大型化も図られて、晴れて核弾頭を搭載するとともに、速度や飛行距離の長足の進歩を遂げることとなったのです」




メリーさん太「つまりそれこそが、現在話題騒然の、『極超音速ミサイル』ってわけか?」


ちょい悪令嬢「速度だけでは無く、飛行軌道の変則性やステルス性等、迎撃の困難さから言えば、大陸間弾道弾ICBMタイプよりもこちらのほうが『代表格』なのは、間違いありませんね」


メリーさん太「──いやあ、勉強になったわ。一口に『極超音速兵器』と言っても、いろいろなタイプが有り、長い歴史が有るんだな。マスゴミやネットの話を鵜呑みにしていたら、完全に誤解したままだったよ」


ちょい悪令嬢「まあ、本作の作者のような『ミリオタ』からすれば、『何を馬鹿なことで騒いでいるんだ、このトーシロどもが⁉』てな感じでしてね。別にキタや中つ国やロスケあたりの『極超音速ミサイル』なんて、『恐れるに足りぬ』なんですよ」


メリーさん太「……何でそんなことを、断言できるんだよ?」




ちょい悪令嬢「これについても以前申したはずですが、(ロケットエンジンはともかくとして)ジェットエンジンに関しては、ロスケとその子分であるゴミュニズム国家群は、すべてダメダメなんですよ。それと言うのもあいつらのジェット技術って、すべてナチスドイツの技術者を戦後自国に強制連行することによって得ていますからね。確かにドイツはジェット先進国でしたが、それはあくまでも戦争中のみの話で、しかも当時世界のどこよりも物資が欠乏していた中での開発だったので、特に『耐熱性』が必要な部分においても、貴重な戦略物資を使用できず、粗悪な『代替金属』を使わざるを得ず、性能を最大限に発揮することが不可能なまでに低品質なのはもちろん、耐用時間も極端に短く、作戦中に頻繁に故障を起こして敵機に撃墜されるなんてことも日常茶飯事で、あたかも貴重なジェットエンジンが『使い捨て』同然の有り様だったのですが、何と現在のロスケや中つ国やキタには、その『悪しき伝統』が引き継がれていたりするのですwww」




メリーさん太「……ああ、ロスケや中つ国のジェットエンジンて、すぐに故障するわ、しょっちゅう交換しなくてはならないわって、よく聞くけど、そんな由来が有ったんだ」


ちょい悪令嬢「ですので、本体自体が『使い捨て』の巡航ミサイルに、最新鋭とはいえ品質がまったく信頼できないスクラムジェットエンジンを使用するのも、当然の仕儀と申せましょう」


メリーさん太「いやでも、そこまで品質が悪いとしたら……」




ちょい悪令嬢「そうです、同じ『極超音速兵器』と言っても、品質至上主義の日本製と比べれば、性能的には『月とすっぽん』に過ぎないのです!」




メリーさん太「え、日本のスクラムジェット技術って、そんなにすごいんだ⁉」




ちょい悪令嬢「前回さきほど申しました、極基本的な『耐熱金属加工技術』を始めとして、具体的な例を挙げれば今からおよそ十年ほど前に、仮称メツボシ重工業様が『燃料供給システム、スクラムジェットエンジン及びその動作方法』と言う題目で、これもやはり一つの耐熱対策である、『新たなる冷却方式』に関する特許を得ておられるほどでございます」


メリーさん太「ホントに日本は、『極超音速ミサイル』の主動力に最もふさわしい、スクラムジェットエンジンの開発において、高い技術力を擁しているんだ⁉」


ちょい悪令嬢「スクラムジェットエンジンは、別に軍事利用のみの技術ではありませんからね。日本の企業が全力で研究開発していても、何の問題も無いのです」


メリーさん太「……とはいえ、『敵基地攻撃』が可能となった場合、すぐさま『極超音速ミサイル』に搭載されてもおかしく無いわけか」


ちょい悪令嬢「与党の某女性国会議員殿のおっしゃるところでは、そもそも中つ国やキタの『極超音速兵器』は、日本の技術を盗むことで実現したそうですよ?」


メリーさん太「うわあ、むちゃくちゃありそうな話だよな? ──日本も早く、『スパイ防止法』を成立させなくては…ッ!」




ちょい悪令嬢「──と言うわけですので、周辺諸国の極超音速兵器に関しては、それ程過敏に反応する必要は無く、むしろ一日でも早く、日本においてこそ『敵基地攻撃能力』はもちろん『核武装化』を実現して、東アジア一帯の戦争の可能性を未然に根絶して、真の平和を実現すべきなのでございます♡」

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