第969話、わたくし、皆様に極超音速ミサイルに関する『真に正しき知識』を授けようと思いますの♡(前編)

ちょい悪令嬢「──やっぱり思ったとおり、わたくしこそが正しかったのですわ!」




メリーさん太「……何だよ? またしても冒頭早々から、騒々しい」




ちょい悪令嬢「だって本作の『正当性』が証明されたのですから、騒ぐのも当然ですよ!」


メリーさん太「正当性って、一体何のだよ?」




ちょい悪令嬢「もちろん、『敵基地攻撃能力』ですわ!」




メリーさん太「──またしても、そのネタかよ⁉」




ちょい悪令嬢「そりゃあもう、現在最もホットな話題ですからね!」


メリーさん太「……それにしても、しつこ過ぎるんだよ! そもそも今年からは『政治的ネタ』は、できるだけ自粛する方針じゃ無かったのか?」


ちょい悪令嬢「本作において『敵基地攻撃能力』は、『政治的側面』と言うよりも『科学技術的側面』にこそ、重きを置いておりますので」


メリーさん太「科学技術的側面て…………つまり、『敵基地攻撃能力』について、何か科学技術的に新事実が判明したわけか?」


ちょい悪令嬢「ですから、新事実とかでは無くて、これまで訴えてきた本作の主張が、正しかったことが判明したのです!」


メリーさん太「……これまでの主張、って?」




ちょい悪令嬢「日本こそが、極超音速ミサイル開発のために必須の、科学技術の最先端を走っていることですわ!」




メリーさん太「──はあああああああああああああ⁉ そんな馬鹿な!」




ちょい悪令嬢「……何が、『馬鹿な』なのです?」


メリーさん太「最近のネットも含めた各種メディアを見ている限り、極超音速兵器の開発に関しては、どうしても『攻撃兵器』の開発はもちろん保有すらも非常に困難な日本は、アメリゴやロスケや中つ国はもちろん、あのザコ中のザコの分断国家『キタ』にすら、大きく水をあけられている状態じゃないか⁉」


ちょい悪令嬢「それこそが、毒亜ドクーア三国の直属の宣伝工作機関である、日本国内のマスゴミどもの印象操作………………と言いたいところですが、能無しマスゴミュニズム媒体のみならず、何とネット上の『自称論客』どもすらも含めて、『極超音速兵器』に関しては、のですよ」


メリーさん太「は?…………もはや完全に落ち目のマスゴミはおろか、ネット上の論客を自認しているやつらさえも、何もわかっていないって?」


ちょい悪令嬢「本作においても何度か言及いたしましたが、『極超音速兵器』とか言うと、いかにもとんでもない新技術が使われていると誤解されがちですが、実はそのようなことはまったく無く、むしろ日本が昔から得意としている技術しか使われていなかったりするのです」


メリーさん太「日本が得意としている、技術って?」


ちょい悪令嬢「もちろん軍需技術の開発を原則的に抑制せざるを得ない、日本が得意とするのは、『民生技術』に決まっているでしょう?」


メリーさん太「民生技術って、いわゆる自動車や家電を造るための技術か? そんなものが最新鋭の極超音速兵器の製造に当たって、一体何の役に立つって言うんだよ⁉」




ちょい悪令嬢「立ちますわよ、特にミサイル兵器の『心臓部』とも言える、『エンジン』の製造においてね」




メリーさん太「──ッ」




ちょい悪令嬢「極超音速ミサイルに搭載されているスクラムジェットエンジンを始めとする、ジェットエンジンを製造するに当たって、一番重要な技術は何と言っても、常に超高温な状態に置かれているエンジン内部の各部品の『耐熱性』を、いかに実現するかに尽きるのであり、実はこの『耐熱金属加工技術』については、日本こそが世界の最先端を走っているのです!」




メリーさん太「何だってえ⁉………………………いや、ちょっと待って? そもそもどうして『ジェットエンジン』なの? 普通ミサイルって、『ロケットエンジン』じゃ無いの?」


ちょい悪令嬢「そこが素人の浅はかさと言うものであり、マスゴミや自称論客どもが、完全に勘違いしているところなんですよ」


メリーさん太「(もう面倒だから一まとめにして)『ゴミ』どもが勘違いしている、って……」




ちょい悪令嬢「現在『極超音速ミサイル』と呼ばれるものは、『大陸間弾道弾ICBM』と『巡航ミサイル』との、大きく二つに分けられて、前者はロケットエンジンを、後者はジェットエンジンを、主動力にしていて、ミサイルとしてはまったく別物なのに、ゴミどもきたらごっちゃにしてしまって、臆面もなく『騙って』いるだけなのですよ」




メリーさん太「……最近の極超音速兵器に関するニュースが、ゴミどもの『騙り』に過ぎないって、一体どういう意味だよ?」


ちょい悪令嬢「大陸間弾道弾ICBMについては、開発当時の第二次世界大戦時においてすでに『極超音速兵器』であり、技術的に新しくも何とも無かったりするのです」


メリーさん太「──第二次世界大戦って、それってまさか⁉」




ちょい悪令嬢「もちろん、人類史上初の大陸間弾道弾ICBMである、A4ロケット──いわゆる『V2号』ミサイルですよ」




メリーさん太「つまり、まさにそのV2号が、すでに『極超音速』を発揮していたと⁉」


ちょい悪令嬢「当時においても、マッハ3から4ほどは、出ていたそうです」


メリーさん太「第二次世界大戦時でマッハ4って、嘘だろ⁉………………………あれ? ちょっと待てよ、『極超音速』って、確かマッハ5以上じゃ無かったっけ?」


ちょい悪令嬢「ここで『素人バカ』ども対象の教養講座です! 大陸間弾道弾ICBMの『最高速度』は、別にロケットエンジンを全開でふかすことで、実現するもののです☆」


メリーさん太「え、違うの?」


ちょい悪令嬢「V2号のロケット推進は、実は速度なんかよりも、高度と距離を稼ぐためにこそ使われているのですよ」


メリーさん太「高度と距離、って…………」




ちょい悪令嬢「そもそもV2号は、ドイツが第一次世界大戦の敗北によって『大砲の製造を全面的に禁止させられた』ために、『大砲の代わり』に開発されることになったのであり、その基本的な設計思想は、『超長距離大砲』──特に、『パリ砲』と呼ばれるものをお手本としているのです」




メリーさん太「V2号が大砲の代わりに造られていたのは知っていたけど、『基本的な設計思想』まで準拠していただと? いや、いくら何でもそこら辺のところは、大砲とロケットは別物だろう?」


ちょい悪令嬢「ただの大砲ならね? ──ところがどっこい、『パリ砲』はひと味違うのです!」


メリーさん太「え、『パリ砲』って、普通の大砲じゃ無いの? ──いやそもそも、『パリ砲』って何なんだよ?」


ちょい悪令嬢「何と射程距離が130キロメートルほどもあって、敵国フランスによる攻撃範囲の外側から悠々と、首都であるパリすらも砲撃できて、当然一つ一つの砲弾も威力満点で、400発近くの砲撃により900名ほどの死傷者を計上するという、甚大なる被害をもたらす大戦果を挙げたのです!」


メリーさん太「130キロメートルの射程って、それ程強大な発射能力を誇っていたのか⁉」


ちょい悪令嬢「もちろん大砲自体のパワーも絶大ですが、何よりも重要なのは、『物理法則』の限界を突破したことなのです!」


メリーさん太「……物理法則の限界、って?」


ちょい悪令嬢「大砲の砲弾をできるだけ遠くまで飛ばさせる上での、物理原則における最大の『敵』は、何だと思います?」


メリーさん太「そりゃあ、重力とか強烈な向かい風とかじゃないのか?」


ちょい悪令嬢「そう、重力はもちろん、特に難敵なのは『空気抵抗』でしょうね」


メリーさん太「とはいえ、仕方ないだろう? 重力や空気は、地球上のどこにだってついて回るんだから」


ちょい悪令嬢「そう、地球上──いわゆる、『大気圏』ならね」


メリーさん太「──ッ、そうか、そう言うことか⁉」




ちょい悪令嬢「そうです、先ほど、『ロケットエンジンは速度よりも、高度や距離を稼ぐことを主眼に置いている』と申しましたよね? つまり、、成層圏や宇宙空間に到達すれば、重力や空気抵抗を極力排除できて、『飛距離』を大幅に増加させることができるのです!」




メリーさん太「──‼」




ちょい悪令嬢「実は『パリ砲』こそが、人類史上初めて成層圏を突破した砲撃を実現した兵器なのであって、これにより驚異的な長距離砲撃を可能としたのです!」




メリーさん太「……なるほど、成層圏どころか宇宙空間にも到達し得る、ロケットエンジン搭載のミサイルなら、尚更だな」




ちょい悪令嬢「よって、実はロケットエンジンて、ミサイルが到達し得る『最大高度』までしか稼働しておらず、後は放物線を描きながら目標に向かって『墜落』していくのみで、あくまでも超音速は『自然落下運動』によってもたらされるに過ぎないのです」







(※後編に続きます)

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