第903話、わたくし、いっそのこと「おまえの存在そのものを全次元から消し去って」やりますの⁉

メリーさん太「……それで、前回のわけのわからない【突発短編】について、ちゃんと説明してくれるんだろうな?」




ちょい悪令嬢「ええ、『タイトル』からすでにお気づきかと思いますが、某『即死チート』Web作品を、あくまでも本作ならではの集合的無意識論と量子論とに則って、再構成したものですわ」




メリーさん太「……ということは、あれか? 第896話と第897話の二回にわたってお送りした、『わたくし、即死チートの正体を解明いたしましたの⁉』において述べたことをベースにして、実際に作品を創ってみたわけか?」


ちょい悪令嬢「その通りでございます」


メリーさん太「……う〜ん、それにしては、なあ」


ちょい悪令嬢「おや、メリーさん、何かご不審な点でも?」


メリーさん太「前回のやつって、さあ」


ちょい悪令嬢「はい」


メリーさん太「『即死チート』と言うよりは、さあ」


ちょい悪令嬢「はい」




メリーさん太「Web小説とかライトノベルとかに良くある、『打ち消しキャンセル能力』とか『幻○殺しイマジ○ブレイカー』とか言った、いわゆる『魔法を無効化する力』だったんじゃ無いのか?」




ちょい悪令嬢「あはははは、そう言われると、そんな感じもしないでも無いですねえ?」




メリーさん太「──いや、そこは否定しろよ⁉ 何まんざらでも無い反応をしているの⁉」




ちょい悪令嬢「ていうか、あれこそが本作の作者にとっての、『即死チート』とも言えるのですよ!」




メリーさん太「……はあ?」




ちょい悪令嬢「まあ、実は最初のうちは『確信犯』的に、単なる『魔法を無効化する力』に見せかようとした意図も、有ったり無かったりするんですけどね」


メリーさん太「──どっちなんだよ⁉」


ちょい悪令嬢「それが、どんどんと魔法合戦がエスカレートしていくうちに、主人公の『真の力』が明らかになるといった構成になっていたわけですの」


メリーさん太「……いや、その最後に明らかになった『真の力』ってやつが、あまり『即死チート』とは思えないものだったんだけど?」


ちょい悪令嬢「そこは『オリジナリティ』という意味からしたら、むしろ結構なことでは?」


メリーさん太「それはそうかも、知れないけど……」


ちょい悪令嬢「しかもこれって、あくまでも本作の作者の独自の見解による『即死チート』であることには、間違いないのですよ?」


メリーさん太「あれが『即死チート』だって? ……確かに最後には圧倒的な力で、敵を『なき者』にしたけど、あれって『者』と言うよりも『者』と言うべきであって、『即死チート』なんかよりも、これまた中二系創作物ではお馴染みの、『おまえの存在そのものを全次元から完全に消し去ってやる!』とか言うやつのほうが近いんじゃ無いのか?」


ちょい悪令嬢「本作の解釈では、『即死チート』なるものは、ああなってしまうのですよ☆」


メリーさん太「本作の解釈って…………確か第897話あたりでは、集合的無意識とのアクセスを全面的にキャンセルされてしまって、思考がまったくできなくなるとともに、肉体的にも成長も老化もできなくなって、精神的にも肉体的にも完全に『死んでしまう』ので、ある意味『即死チート』を実現したようなものだったけど、『おまえの存在そのものを全次元から完全に消し去ってやる!』と言うわけじゃ無かったじゃないか?」


ちょい悪令嬢「でもですねえ、実は藤○剛志先生の作風としては、『大魔オー』シリーズからの伝統として、相手を完全に撃滅する場合には、『全次元から跡形も無く消し去る』ってのが、お約束なのですよ」


メリーさん太「それで、ただ死なせるだけでは無く、肉体そのものを消滅させて、全人類の記憶からも抹消したわけか?」


ちょい悪令嬢「はい」


メリーさん太「いやいやいや、『大魔オー』様はどうだか知らないけど、『即死チート』においては原則的に死体が残っているじゃないか? それなのに前回の【突発短編】においては、さっきまで生きていた人物の存在そのものを抹消してしまうなんて、いくら何でも『オーバーキル』と言うものだろうが?」


ちょい悪令嬢「わたくしもこれまでは、そのように思っていたのですよ、ところが──」


メリーさん太「ところが?」




ちょい悪令嬢「くだんの某『即死チート』作品において、現時点での暫定ラスボスキャラさんが、『時間を巻き戻して』これまでのことを一切『無かったこと』にしたところ、なぜか主人公の『即死チート君』に殺された者だけは、元の周回では存命だった時点においても生き返らず、それどころか存在自体が無かったものとなっていたのです!」




メリーさん太「──なっ⁉」




ちょい悪令嬢「これは当該作品内でも何度もほのめかされていたことなのですが、作品世界において他者を死なせるごとに、その裏では全次元において存在そのものが抹消されていたようなんですよ」




メリーさん太「ええっ、『即死チート』って本当に、『全次元から消し去ってやる!』そのものだったの⁉」


ちょい悪令嬢「そもそも『絶対に死なせる』だけでは無く、『絶対に生き返らさない』と言うことこそが、この作品の『即死チート』の最大の特徴ですからね」


メリーさん太「……絶対に、生き返らせない、って?」




ちょい悪令嬢「今回のように、別のキャラによって『過去のある時点にループや時間遡行をさせられてしまった』場合、通常だったら主人公さんが死なせていたキャラも生き返ることになるではありませんか? でもそれだと『即死チート』の絶対性が揺らいでしまいますので、『二周回目のキャラ』も死なせておいたのですよ」




メリーさん太「どうしてループや時間遡行が起こることを知らないはずなのに、『即死チート君』があらかじめ二周回目のキャラを死なせたりできるんだよ⁉」




ちょい悪令嬢「ループの別の周回や時間遡行してやり直す過去を、多世界解釈量子論に則って『別の世界』と見なせば、『おまえを全次元から消し去ってやる!』スキルだったら、前もって死なせるどころか、すべての『別の世界』から、存在自体を完全に抹消することすらできるのですよ」




メリーさん太「──‼」




ちょい悪令嬢「結局『即死チート』も『大魔オー』様の最終奥義も、基本的に同じものでしか無かったってわけですわ♫」


メリーさん太「……でもよう、今回の【突発短編】においては、某『即死チート』作品とは違って、当の作品世界ステージにおいても、『標的ターゲット』のキャラの肉体そのものや人々の記憶を『完全抹消』してしまったけど、そこまでしなくても良かったんじゃないのか? もしかして、『即死チート』作品との差別化のためか?」




ちょい悪令嬢「ていうか、本来『全次元から消滅させる』ことなんて、絶対不可能なんですよ」




メリーさん太「──はああああああああああああ⁉ 何ソノいきなりの、『前提条件』のぶち壊しは⁉」




ちょい悪令嬢「おやおや、お忘れですか、メリーさん?」


メリーさん太「……お忘れって、何をだよ?」




ちょい悪令嬢「これまた多世界解釈量子論に則れば、世界と言うものは最初からあらゆるタイプのものが無限に存在しているので、ある世界を改変しようと思っても、その『改変後の世界』もすでに存在しており、世界を改変する意味なぞ無く、無限の世界はけしてただ一つとして改変されたり消滅したりすること無く、ずっとすべて揃って存在し続ける──ってやつですよ」




メリーさん太「──! それじゃ、『即死チート』で全次元から抹消されたキャラは、一体どうなるわけなんだ⁉」


ちょい悪令嬢「元々そのキャラが『存在している世界』と『存在していない世界』とが、それぞれ無限にあるだけで、『存在している世界』においてはそのキャラが即死チートで死ぬことはあっても、存在自体が抹消されたりはせず、もしも『全次元から存在そのものを消し去ってやる!』スキルを発動する場合は、最初から『存在していない世界』のみが対象になります」


メリーさん太「それって、『全』次元じゃ無いじゃん⁉ ──つうか、ループや時間遡行をする場合、運良く対象のキャラが『元々存在していなかった世界』ばかりに当たることなんてあり得ず、絶対のはずの『即死チート』で死なせたはずのキャラが、ちゃっかりと生き返ったりすることもあり得るんじゃ無いの⁉」




ちょい悪令嬢「そこはあくまでも、『即死チート』の術者との、『集合的無意識とのアクセス権』の上下関係によって決まるのです」




メリーさん太「………………………………は? アクセス権の上下関係、って」




ちょい悪令嬢「前回の【突発短編】においても明記しましたが、『魔法殺し』のスキルは対象を物理的に消滅させるとともに、人々の記憶からも存在そのものを抹消して、精神的にも消滅させたわけですが、ここで注意点として、『術者である主人公以上の「集合的無意識とのアクセス権」を持つ者は除く』と申しておりましたよね? つまり主人公よりも『集合的無意識とのアクセス権』が劣る場合は、ループや時間遡行の対象に、『魔法殺しスキルによって殺された者が存在している世界』とアクセスし、選択候補とすること自体が不可能になるのですよ」




メリーさん太「──ああ、そうか! そもそも『魔法殺し』の仕組みこそは、『他者の集合的無意識とのアクセス権を奪うこと』なんだから、自分よりも下位の術者に対しては、『敵キャラが存在している世界』へのアクセス権自体を無効化してしまうわけか⁉」




ちょい悪令嬢「しかも前回の【突発短編】においては、『他の世界』との整合性をはかるために、当該作品世界の中においても、対象の肉体そのものを消し去るとともに、主人公よりも下位の『集合的無意識とのアクセス権』しか持たない者全員の記憶から──すなわち(『魔法殺し』は事実上最上級の異能と言えるので)、結果的にほとんど全人類の記憶から、対象の記憶を抹消することで、『最初から存在していなかった』かのようにしてしまえたわけですの」




メリーさん太「……なるほど、他人様の作品の内容にまで関知するつもりは無いけれど、本作の最重要ポリシーたる『世界と言うものは改変させたり消滅させたりはできない』に基づけば、『即死チート』なるものはこういう能力にならざるを得ず、某作品とは自ずと『差異』が生じてしまうのか」




ちょい悪令嬢「──と申しますか、これってもはや、『即死チート』とは別物ですよね☆」




メリーさん太「……ふうん、結局『独自性オリジナリティこそ命』である本作の作者の手にかかれば、『即死チート』作品すらも、まったくの別物になってしまうんだな。──とにかくこれで大手を振って、今年度の各種Web小説コンテストに、新作として応募できるってわけか」




ちょい悪令嬢「何度も何度も申していますように、現在本作の作者におきましては、父親の介護等で多忙を極めておりますゆえ、できるだけ早い段階から新作づくりに取り組みたいかと存じますので、何かアイディアが浮かんだら、前回のように実際に作品化してみてから、いろいろと検証してみようかと思いますの♡」

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