第751話、わたくしたち、悪役令嬢アイドルグループ『アクドル』ですの♡(その13)

ちょい悪令嬢「……う〜ん、生まれつき『感情』というものがまったく無くて、そのままだと人間社会では生きていけないので、『普通の子供』に見えるように幼い頃からずっと『人間を演じ続けてきた』ために、『演劇上の演技』なんて『お遊び』みたいなものに過ぎないから、『演技勝負』においては、サラブレッドの演劇部長なんか、相手にもならないってのは、どうにかこうにか納得できなくも無いけれど、やはりちょっと無理があるんじゃないかしら?」




ちょい悪令嬢「皆まで言わないでください、その辺のところは本作の作者もわかっておりますので、『もうひとひねり』加えておきました」


みるくの時間♡「もうひとひねり、って?」




ちょい悪令嬢「実際に今回の【作中作短編】に採用したように、『悪役令嬢演劇コンテスト』の優勝者を単なる女学生では無く、他ならぬわたくしこと『の巫女姫』にしたわけなのですよ。詳しくは作品のほうを読んでいただきたいのですが、『巫女』というものは『神の憑坐』ゆえに、特に『の巫女姫』のキャラ設定としては、『自分というものを持たない空っぽの存在』とされていて、神様やその他の超常的存在が憑依した時のみ、その者になり切ってしまえるわけなのです」




みるくの時間♡「なるほど、巫女姫の『憑依体質』を利用フィーチャーしたわけね」


ちょい悪令嬢「このレベルになると『演技力』とかに関係無く、様々なキャラクターを我が身に憑依させることによって、『人格』そのものをチェンジさせていけますので、もしも『演技者』というカテゴリィに限定すると、比肩する存在なぞあり得ないでしょう。──何せ、作中でもご説明した通り、事実上『異世界転生』すらも実現できるのですからね」


みるくの時間♡「──いやもうそれって、『演技』でも何でも無いでしょうが⁉」


ちょい悪令嬢「いえいえ、今回の(隠し)テーマとしては、『創作物フィクションにおける最高の演技の在り方』を定めることなのですから、まさしく『フィクションキャラ』である巫女姫ならではの憑依体質等の超常現象さえも、大いに『アリ』ではございませんか?」


みるくの時間♡「つまり、本作お得意の『ユング心理学』路線に則れば、巫女姫の超常の力の源である、『集合的無意識とアクセスをすること』によって、世界や時代すらも超越したありとあらゆる人物の『記憶と知識』を、己の脳内にインストールすることで、完全にその者になり切って『演じる』というわけなのね?」


ちょい悪令嬢「そうそう、何せ『すべての超常現象は、集合的無意識とのアクセスによってこそ、実現できる』のですからね」




みるくの時間♡「……まあ、ここで終わっておけば、すべて納得だったんだけど、作中のあなた──すなわち、『筆頭公爵家令嬢』ともあろうお方が、わざわざ演劇専門の学園に入学して、『悪役令嬢』を演じることになった真の目的が、実のところは現代日本からの異世界転生者ばかりである学園の生徒たちから、それぞれの『集合的無意識とのアクセス権』を奪い取ることだったことについては、いろいろと説明が必要だと思うけど?」




ちょい悪令嬢「実はですねえ、今回お手本にした『少女☆歌劇レヴュー・スタ○ライト』においては、『デュエル』…………もとい、『レヴュー』の全日程最終優勝者には、『舞台女優』としての未来が約束されることになるのですが、そのためには当然卓越なる『演技力』を始めとして、常人ならざる『力』が必要となるでしょう。──果たしてそれは、どこから『供給』されると思われます?」




みるくの時間♡「……そ、そりゃあ、その『レビュー』とやらを開催した、超常なる存在が与えてくれるんじゃないの?」


ちょい悪令嬢「う〜ん、たとえあの『キ○ンさん』が、神にも等しき存在だったとして、何もない所からそのような『超常なる力』を与えたりできるんですかねえ?」


みるくの時間♡「あんなに純真な女の子たちを、学友同士でガチに闘わせたのだから、何の『報償』も無かったら、それこそ話にならないでしょう?」


ちょい悪令嬢「そうですね、勝者には『報償』が必要です。──でしたら、敗者には『ペナルティ』が必要だと思われません?」


みるくの時間♡「え?………………ちょっ、ちょっと、それってまさか⁉」




ちょい悪令嬢「ええ、敗者の女生徒たちから、『演劇への情熱』等の『感情エネルギー』を抜き取って、勝者の女生徒だけに、『エントロピー』を凌駕するような『奇跡の力』を与えて、文字通り神懸かりな演技すら可能な『舞台女優』へと昇華させるのです!」




みるくの時間♡「やっぱあのキ○ンの正体は、『キュ○べえ』だったのかよ⁉────じゃなくて! 敗者の女の子たちから『演劇への情熱』を抜き取るって、それじゃあ──」




ちょい悪令嬢「はい、優勝者以外の子たちは、(少なくともトップ女優としては)二度と演劇ができなくなってしまうのです」




みるくの時間♡「そ、そんな、たった一度勝負に負けただけで、女優としての未来を、すべて奪われてしまうなんて⁉」




ちょい悪令嬢「……仕方ないのですよ、たとえ神といえども、何もない所から何かを生み出すことなぞできません。それこそ宇宙の原理に背く禁忌の行為であり、エントロピーがどうしたとか言ったレベルの話では無いのです。よって敗者から『演劇への情熱』という『感情エネルギー』を取り上げて、勝者にのみ与えると言う『システム』を構築することで、つじつまを合わせているのです」




みるくの時間♡「……う〜ん、まさしく『キュ○べえ』並みの外道っぷりよのう。──それで、この『スタ○ライト』ならではの『システム』が、今回の【作中作】と、どう関わってくるわけなの?」




ちょい悪令嬢「作中の『悪役令嬢演劇コンテスト』における優勝した者以外の生徒たちは、優勝者である『真の悪役令嬢』に喰われてしまうのです。──それによって、自分というものを持たなかった『空っぽの少女ワタシ』は、様々な人格を手に入れることになり、人格を失った敗者たちは、みんな『空っぽ』になってしまうのですよ」




みるくの時間♡「……く、喰われてしまう、ですって⁉」


ちょい悪令嬢「あ、いえ、『喰う』とはあくまでも比喩表現であって、実際には敗者たちの『チート能力』を奪っているだけなのです」


みるくの時間♡「へ? 今度は何よ、『チート能力』とか、突然言い出して?」


ちょい悪令嬢「実はこの『王立アクドル学園』に集められた生徒たちは全員、『現代日本からの転生者』だったのでございます☆」


みるくの時間♡「──こいついきなり、『なろう系』のネタをぶっ込んで来やがった⁉」


ちょい悪令嬢「? 本作は元々、『なろう系』ですけど?」


みるくの時間♡「そうだけど! 何でもかんでも、『異世界転生』とか『チート能力』とかぶっ込んできたら、『演劇モノ』なんて、やってられないでしょうが⁉」


ちょい悪令嬢「いえそれが、元々『演劇モノ』ということ自体がブラフで、『の巫女姫』の神通力を維持するための、『生け贄』を集めての『秘密の儀式』だったのですよ」


みるくの時間♡「……え、あの作品の裏設定って、そんなんだったの? 怖っ!」


ちょい悪令嬢「大丈夫です、チート能力はもちろん、人格を喰われたところで、別に『廃人』とかになってしまうわけではありませんから。演劇に対する情熱を失うこと以外は、むしろ『真人間』に戻るようなものですし」


みるくの時間♡「な、何で、人格を奪われてしまうのに、真人間になれるのよ⁉」




ちょい悪令嬢「あら、お忘れですの? 転生者ならではのチート能力は言うに及ばず、その転生者としての『人格』そのものすらも、集合的無意識とアクセスしてもたらされていることを。──つまりわたくしこと『の巫女姫』は、敗者の皆様から、それぞれの『集合的無意識とのアクセス権』をいただいて、集合的無意識を介して刷り込まれていた『現代日本人としての記憶や知識』を消し去って、『生粋の異世界人』に戻して差し上げたわけなのですよ」




みるくの時間♡「……ああ、そうか、『喰らった』と言っても、『集合的無意識とのアクセス権』を奪っただけで、その人が生まれつき有していたものに関しては、一切手をつけていなかったんだ」


ちょい悪令嬢「むしろ、『自分は異世界からの転生者なのだ!』などと言った、とち狂った妄想を消し去って差し上げたとも言えるでしょう♫」


みるくの時間♡「──いきなり『なろう系』を、全否定するなよ⁉」




ちょい悪令嬢「結局何が言いたいのかと申しますと、確かに『少女☆歌劇レヴュー・スタ○ライト』をお手本にいたしましたが、別に何から何まで完全に模倣したわけでは無く、肝心な点においてはしっかりと『独自性オリジナリティ』を発揮しているってことですよ。──むしろお陰様で、本作における『の巫女姫』のキャラクター設定を更に深めることができて、大変感謝しているくらいですわ♡」

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