第731話、わたくし、第2回『LGBT大喜利』を開催しますの♡
「──というわけで、欧米のエンターテインメントショウにおける定例的な挨拶文句として、『レディースアンドジェントルメン』というのが一般的に使われているの。日本語に直訳すると、『淑女紳士の皆々様方』と言ったところでしょうね」
東京都内の某小学校の教室にて、朗々と響き渡る、いまだうら若き女教師の声。
男女を問わず児童のほぼ全員がうっとりと耳を傾けていた
「──せんせー」
「何ですか、LGBT君?」
「『淑女や紳士』って呼ばれるには、やはり世の常識や社会的なしきたりを身につけているべきであり、ある程度の年齢や人生経験を経ている、『大人』の女性や男性と言うことになるよね?」
「……ええ、まあ、そう言うことになりますかねえ?」
「あー! それって差別だー! イケないんだあ、
「──なっ⁉
「『レディースアンドジェントルメン』が大人のことを言うのなら、その中には僕たち『子供』が含まれていないことになるじゃん⁉ つまりエンターテイメントショウとかでの歓迎の挨拶からは、子供は
そのようにわめき立てるや、得意満面に胸を張る、小学生男児。
……確かに、
確かに、彼の言っていることは、
論理的には、
そう、あくまでも、論理的には、
正しいであろう。
──しかし、
教室はただ、重苦しい沈黙へと、包み込まれただけであった。
「……な、何だよ、みんな! 何で、黙り込むんだよ⁉ 俺なんか、間違ったこと言ったか⁉」
おやおや、普段はまったく空気を読めないLGBT君も、さすがにヤバいと思い始めたのか、必死にまくし立て始めたようだ。
──そんな彼を、いかにも『哀しそうな瞳』で見つめながら口を開く、美里先生。
「……LGBT君」
「え、はい?」
「──あなたはもう、何も話さないで」
「えば、キュウうううううううううううううううううううううう⁉」
何と、『
いや、実を言うと作者自身、そこまで考えてなかったんだけど…………もう、行き当たりばったりだな、この作品⁉
「──ちょっと先生、生徒児童に対して発言を全面的に禁止するって、いくら何でも駄目だろう⁉ 教育委員会に訴えたら、校長先生以下管理職全員の監督責任まで累が及びますよ⁉」
当然のごとく猛抗議をする、LGBT君。
しかし、その時、
「──LGBT、あんた、いい加減にしなさいよ!」
唐突に教室中に鳴り響く、幼い女の子の金切り声。
「おまえは、
そう、そのいかにも利発そうな少女こそ、この5年H組の学教委員長の、
「……あんたさあ、この前も女子だけで校庭でドッチボールをしていたら、『俺って、身体は男だけど、心は女だから、参加してもいいよな?』とかほざいて、勝手に参加してきて、みんなで仲良くやっていたのにぶち壊しにしたでしょ? 何屁理屈ばかり言って、『みんなの輪』を崩そうとしているのよ? この非常識極まるKY野郎が!」
「なっ⁉ 俺はあくまでもLGBTとして、当然のことをしただけなのに! これは差別だ、差別だぞ⁉」
「──やかましい! それが非常識で、周りの空気が読めてないって言ってんのよ!」
「ひぃっ⁉」
同い年の女子からの裂帛の一喝に、完全にビビってしまうヘタレ男子。
それを見て、ここが好機と、次々に声を上げる、主に女子のクラスメイトたち。
「ほんとこいつ、存在そのものが迷惑なんだよ!」
「せっかく『クオータ制』が採用されて、女子限定のポストを児童会に設けてもらっても、『俺たち実はLGBTだから』とかわけのわからないことを言い出して、『LGBT女子=実質上男子』どもで横取りしようとするし!」
「運動会で女子限定の競技だというのに、無理やり参加してきて、上位を独占するし!」
「しかも校則違反等を繰り返したり、テストで赤点取ったりしても、それはすべて男子では無く女子が行ったことにカウントされるので、女子の全体評価はダダ下がりになってしまうし!」
「……そもそも、『俺は男では無くて本当は女だ!』とか、『男や女の定義』を勝手に決めつけるなんて、『男らしさや女らしさの全否定』を旨にしている私たち『フェミ』に対して、ケンカを売っているようなものだし!」
「そしてまさにその科学的根拠として、『人間の脳みそには己の性別を認識する部分があり、LGBTの者はそれが正常に作用していない』なんて言うのは、つまりは脳科学的に『男女の性差は確定している』とお墨付きを与えることであって、我々『フェミ』として断じて認めるわけにはいかないし!」
「「「──つまりはLGBTなんて、女の子の地位向上のためには、『滅ぼすべき害悪』以外の何物でも無いのよおおおおおお!!!」」」
……ついに、『フェミ』の皆様が、『この世の真理』に気づいたようだ。
そうなのである。
同じ『ジェンダー勢力』とはいえ、『フェミ』と『LGBT』とは不倶戴天の敵対関係にあり、特に『フェミ』陣営としては、『LGBT』陣営の『自称女なおっさん』の暴挙をのさばらせておくと、自分たちの権利を阻害されるばかりとなって、もはや『LGBT』のこの世からの根絶こそは、彼女たちにとっての『絶対命題』ともなっていたのだ。
「……え、おまえら、どうしてそんな怖い顔をして、こちらにじりじりと詰め寄ってくるの? それに何だよ、その手に手に持った、ハサミとかカッターとか千枚通しとかコンパスなんかの、『化○語』的な武器の代わりになりそうな文房具は? よ、よせ、これ以上近寄るな! やめろ、やめろ、やめてくれえええええええええ!!!」
──その後、LGBT君の姿を見た者は、誰一人いなかった。
☀ ◑ ☀ ◑ ☀ ◑
メリーさん太「……何だよ、これって?」
ちょい悪令嬢「ご覧になられた通りです」
メリーさん太「──見てわからないから、聞いているんだよ⁉」
ちょい悪令嬢「……えー、最初にちゃんと、書いてあったじゃないですかあ?」
メリーさん太「最初って、何か『
ちょい悪令嬢「そう、それですよ」
メリーさん太「は?」
ちょい悪令嬢「ジェンダー勢力の
メリーさん太「…………『レディースアンドジェントルメン』が差別語? いやちょっと待て」
ちょい悪令嬢「何ですかメリーさん、これは明確な『言葉狩り』であって、『表現の自由』を損なう者は断じて許さない本作のポリシーとしては、絶対に看過できないのですよ⁉」
メリーさん太「……う〜ん、差別語とか言葉狩りとか言われても、なあ?」
ちょい悪令嬢「言われても?」
メリーさん太「『レディースアンドジェントルメン』なんて、ちょっとした慣用句的な『挨拶の言葉』でしかないのであって、別に意味なんか無いんじゃないのか?」
ちょい悪令嬢「──ああっ、そういえば、その通りじゃん⁉」
メリーさん太「こんな常套句ごときに目くじらを立てるなんて、どれだけ度量の狭いクレイマー体質なんだよ、『LGBT』って……」
ちょい悪令嬢「ていうか、考えてみれば、日本で普通に暮らしていて、『レディースアンドジェントルメン』なんて、聞く機会なんて有りますかしら?」
メリーさん太「どこかの小洒落たショウパブあたりで、司会のおっさんが言うくらいかな?」
ちょい悪令嬢「いや、そんなに限定されてはいないとは思いますけど、いわゆる『あえてわざとらしく洋風な挨拶をしてみました☆』といったパターンくらいしか、思いつかないですよね?」
(※何と「この世に差別なぞ、一切存在しない!」ことを、論理的に完璧に証明してみせる、次回に続きます)
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