第730話、わたくし、第1回『LGBT大喜利』を開催しますの♡

 西暦202X年、某月某日、


 休日の東京銀座、歩行者天国。




 ──この日ここ一帯は、かつてなきほど、異様なる雰囲気に包み込まれていた。




「──我々は、日本国民なんかでは無い!」


「この肉体は、仮初めのものに過ぎないのだ!」


「政府や地方自治体は、我々の存在を認めろ!」


「親兄弟を始めとする、周りのやつらは、俺たちを差別するな!」


「キモい、とか言うな!」


「中二病、とか言うな!」


「コミュ障、とか言うな!」


「社会不適合者、とか言うな!」




「「「役立たずの、ヒキオタニート、とか言うなああああああああ!!!」」」




「貴様ら一般ピープルは、なぜわからんのだ?」


「我々『ナロウ族』の、偉大さを!」


「──そう、けしてこれは、『妄想』なんかでは無いのだ!」


「我々は、本物の『勇者』であり」


「本物の『剣士』であり」


「本物の『魔導士』であり」


「本物の『錬金術師』であり」


「本物の『ヒーラー』であり」


「本物の『メイジ』であり」


「本物の『タンク』であり」


「本物の『アーチャー』であり」


「本物の『ドラグーン』であり」


「本物の『アサシン』であり」


「本物の『シーフ』であり」


「本物の『スカウト』であり」


「本物の『ネクロマンサー』であり」


「本物の『サモナー』であり」


「本物の『ビーストテイマー』であり」


「本物の『セイジ』であり」




「「「そして何よりも、本物の『異世界からの転生者』、なのだあああ!!!」」」




 最後にあまりにも常軌を逸したことを、平然とわめき立てることによって、延々と続いていたシュピレヒコールを締めくくる、数十名からなるデモ隊。




 そのすべてが、様々な奇抜極まるコスプレ衣装に、身を包んでいた。




「──あー、お母さん、勇者様だあー」


「しっ、目を合わせてはいけません!」


「どうしてー? 勇者様や魔法使いさんが、こっちに向かって、にこやかに笑いながら、手を振っているよー?」




「……いいかい、よくお聞き、新たに制定された『ナロウ系保護法』によって、あいつら『自称転生者』が、あらゆる言動において『差別された』と感じれば、それが実際に『差別案件』となり、差別したと断定された者は一人残らず裁判にかけられて、『有罪認定』されてしまうのよ!」




 そう必死に叫ぶや、幼い我が子をデモ隊の変態どもの目から隠すように抱きかかえて、大急ぎでその場を走り去る母親。




 その他の大勢の通行人も、けしてデモ隊のほうには目を合わせようとせず、そそくさとその場を後にして行く。




 ──文字通りに、『触らぬ神に祟り無し』とでも、言わんばかりに。




   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑




メリーさん太「……また、わけのわからない【突発短編】をぶち込んで来やがって、一体何なんだよ、これって?」




ちょい悪令嬢「実はネット上で、『LGBT大喜利』ってのが、開催されていたんですよ♫」




メリーさん太「はあ? 『LGBT大喜利』、って……」




ちょい悪令嬢「例えば、『実は私はアメリカ人なんだ! 確かに私は日本で生まれて、この肉体は日本人のものだが、魂は間違い無くアメリカ人なのだ! 私をアメリカ人と認めろ! そして「妄想癖」とか言って、差別をするな!』とかねw」




メリーさん太「──なっ⁉」




ちょい悪令嬢「ついさっき見つけたやつだと、『実は私は小学生なんだ! 確かにこの肉体は大人のものだが、魂は間違い無く小学生なのだ! 私を小学生として認めろ! そして「妄想癖」とか言って、差別をするな!』ですってwww」




メリーさん太「──いやいやいやいや、生粋の大人の日本人が、アメリカ人とか小学生とかだったりするもんか! そんなもの『妄想』以外の何物でも無いのであって、差別もクソも無いだろうが⁉」




ちょい悪令嬢「そんなことはありませんよ? 何せこれってまったく、『同じ』なのですからね」


メリーさん太「……『同じ』、って、一体何と?」




ちょい悪令嬢「もちろん、『LGBT』とですよ」




メリーさん太「──ッ」




ちょい悪令嬢「たとえ外見上完全に『日本人青年』であろうとも、本人が『異世界よりの転生者』や『アメリカ人』や『小学生』だと主張しているのならば、それを問答無用に認めなければ、『LGBT保護法』との『法的均等性』を否定してしまうことになるのですよ」




メリーさん太「──うぐっ⁉」




ちょい悪令嬢「そもそもですねえ、肉体的に完全に男なのに、『あたし心は乙女なの♡』とかほざいて、何と医学的かつ社会的に認めさせて、それに異を唱えると『差別認定』されてしまうとかいった段階で、もう無茶苦茶なんですよ。──実際アメリカの幾つかの州においては、『女子スポーツ界におけるLGBT選手の進出を全面的に禁止』したくらいですからね。日本人が自分のことを、『異世界人』とか『アメリカ人』とか『小学生』とか言い出すぐらい、十分に許容範囲なのですわ」




メリーさん太「──言われてみれば、まったくその通りじゃん⁉ 元々人類においては、『男女の性差』こそが、最大にしてけして埋めがたき永遠なる『境界線ちがい』だもんな!」




ちょい悪令嬢「……それを自己申告であっさりと乗り越えることができたんじゃ、下手すると『人類の定義』そのものがねじ曲がってしまいかねませんよ。──果たして、これから滅びてしまうのは、『足○区』一つくらいで済むのかしらねえwww」




メリーさん太「──おい、また話が、ヤバい方向に行き始めているぞ⁉」




ちょい悪令嬢「おっと、いけないいけない。──とにかく、『LGBT』を保護する法律を制定して、差別を一切許さないと言うのなら、我々だって、自分のことを『異世界人』とか『アメリカ人』とか『小学生』とか『悪役令嬢』とか『都市伝説』とか言い出した場合も、ちゃんと信じてもらえて、けして差別されないように保護してくれるわけだよなあ?」




メリーさん太「うんうん、そりゃそうだよな……………………って、あんたが『悪役令嬢』であたしが『都市伝説』なのは、最初からだろうが⁉」
















ちょい悪令嬢「──てな感じで、最近はやけに堅い話が続いたこともあって、今回は『一休み』といったふうに、軽くまとめてみました!」




メリーさん太「……それにしても、少々軽過ぎじゃないのか? 字数がかなり余っているけど?」




ちょい悪令嬢「そうですか? でしたら、『いつものパターン』と参りましょうか?」


メリーさん太「いつものパターン、って?」




ちょい悪令嬢「もちろん、今回の内容の、本作の作者の自作への活用ですよ!」




メリーさん太「は?………………………いやいやいや、こんな『ネット大喜利』そのままのいい加減極まる内容で、本格的に作品を創っちゃ駄目だろう⁉」


ちょい悪令嬢「何言っているんですか、まさにこれぞWeb小説でやるべき題材でしょうが?」


メリーさん太「はあ?」




ちょい悪令嬢「ごく普通の現代日本の人々が、いきなり自分のことを『異世界からの転生者』だと言い出すのですよ? これってまさに、『なろう系』そのものじゃないですか?」




メリーさん太「……あ」


ちょい悪令嬢「しかもこれって、本作の作者お得意の、『外敵の背乗り的侵略』モノでもあるわけですの」


メリーさん太「は? 外敵の侵略、だと?」




ちょい悪令嬢「例えば、現代日本人に憎悪を抱いている異世界人が、日本の名家の跡取り息子として転生したら、どうなると思います? 将来日本の政治や経済や軍事等の中枢に身を置きながら、密かに日本転覆を画策したりしてね☆」




メリーさん太「──肉体や血統は完全に日本人なのに、日本人を憎み、実際に日本を滅ぼそうとし始めるだってえ⁉」




ちょい悪令嬢「どうです、現在の自分自身を全否定するのみならず、その『妄想』を他人にも強制的に認めさせようとして、それを受け容れなければ社会的に抹殺しようとしている、『LGBT保護法案』って、非常に怖いとは思いません?」


メリーさん太「……そうか、本作において事あるごとに、『LGBT=外国勢力の陰謀論』を訴えかけているのは、こういった背景があったからなのか」


ちょい悪令嬢「『完璧なる国防』という意味からも、Web作家ならではの『突飛な発想』って、案外馬鹿にならないかもね♫」


メリーさん太「これも本作の作者ならではの、『すべてのリスクの事前の回避思考』ってやつか……」




ちょい悪令嬢「まあ、単なる『ネット大喜利』であっても、料理次第では、奇抜極まる作品づくりに大いに役立ってくれますので、一応作家の端くれとしては、常に各方面にアンテナを張り巡らせておくのは、非常に大切なことだと思いますわ♡」




メリーさん太「──おおっ、今回、めちゃくちゃまともなオチやんけ⁉」
















ちょい悪令嬢「……おまけのおまけとして、自称『異世界からの転生者』であるほうが、自称『LGBT』であることよりも、よほど『常識的』であることを、よりわかりやすくご説明いたしますと、いくら男性が自分のことを女性だと言い張ろうが、第三者は客観的に彼が男性であることを判断できますが、自分のことを『異世界からの転生者』だと言い張っている者に対しては、他人どころか下手したら本人ですら、その真偽を判断することは不可能だったりするのですよ」




メリーさん太「──な、何と、それってある意味『LGBT』なんかよりも、『異世界からの転生者』であることのほうが、『現実味』があるってことか⁉」

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