第680話、わたくし、『フェミ』と『LGBT』を戦わせてみましたの⁉

「──みんな、ついに国会に『クォータ制』が導入されたぞ! 女性限定特別枠の30議席は、女性だけの政党である、私たち『RickenリッケンVankerバカー・フェミ新党』がいただきだ!」




「「「──うおおおおおおおおおおおお! 『RickenリッケンVankerバカー・フェミ新党』、バンザーイ! 虹色ま〜ん党首、バンザーイ!」」」




 ──国会議事堂内、弱小政党『RickenリッケンVankerバカー・フェミ新党』控え室にて響き渡る、時ならぬ女性たちの声。




 それは、藁にもすがらんばかりの、悲壮感にあふれていた。




「……今回の衆議院選挙において、ついに施行された、『クォータ制』。この女性のためだけに設けられた特例の30議席こそが、我々にとっての最後の希望だ、必ず全議席とも手に入れるぞ!」


「もちろんですとも、虹色党首!」


「そもそも、この『クォータ制』の成立を見込んで、我が党は結成されたのですからね!」


「現に国会に議席を有する、憲政史上初の、女性だけの政党!」


「女性だけに許された、今回特例の30議席は、我が党にこそ、ふさわしいのだ!」




「「「──何せそのためにこそ、現職の国会議員であった、男性党員を、すべて切り捨てたのだからな!!!」」」




「……そうだ、今回のチャンスは、長年共に戦ってきた、同志タワリシチたちの尊い犠牲の上に立っているのだ。──勝たなければ、何としても、すべての議席を勝ち取らなければッ!」


「……わかります、私だって別に、彼ら(の一部)を(物理的に)切り捨てたりはしたくなかったのに」


「……でも、自ら『国会における議席の男女格差の是正』を公約に掲げてしまった、己自身も男性議員である前党首も、悪かったのですよ」


「……ほんと、馬鹿かよ、あいつ」




「「「国会の男女格差を是正するための、最も即効的な手段は、現在議席を占めている男性議員を辞職させれば良いのだから、当然『言い出しっぺ』の党首を始めとする、我が党のすべての男性議員を辞めさせて、二度と国会に返り咲かないように、党からも追放せざるを得ないではありませんか⁉」」」




「ま、まあ、そのお陰で、まさに私たちこそが、我が国の『女性絶対主義者』の代弁者であることが、自他共に認められるようになったのだからな」


「小選挙区でも、比例代表でも、女性有権者による圧倒的支持によって、結党以来の大躍進ですわ♫」


「更には、今回新設の『クォータ制』による30議席をも独占できれば、他党との連立次第では、政権を奪取することもけして夢ではありませんよ!」


「──やりましょう、党首!」




「「「すべては、我が国の女性たちの、地位の向上のために!」」」




「「「──うおおおおおおおおおおおお!!!」」」




 いかにも『活動家』上がりの女性たちばかりの党らしく、最後は勇ましくシュプレヒコールを上げて締める、虹色ま〜ん党首を始めとする党員たち。


 まさに、その刹那。




「──そうはいかんぞ、今回の特例の30議席は、我々がいただかせてもらおう!」




 唐突に控え室に響き渡る、ここにはけしていないはずの、男性の胴間声。


 全員一斉に振り向けば、入り口の手前には十数名の男性を引き連れた、一人の中年男が仁王立ちしていた。


「……前党首?」


「カレエダ=スコープ前党首じゃありませんか?」


「ど、どうしてあなたが、国会議事堂に?」


「あなたたちは、議員を辞しただけでは無く、我が党の党籍を剥奪されて、野に下ったはずでは⁉」




「そうだとも、真の女性の地位向上の実現のためには、もはや男性議員は必要無いと言うことで、男性としての『シンボル』を切り取られて、すべての尊厳を破壊されるという、非人道極まる責め苦を受けてな」




「「「──うっ」」」




「……まったく、ただ追放するだけで事足りたはずなのに、どうしてこんな残虐なことができるのやら。いやはや、女性というものは恐ろしいねえ。──なあ、虹色現党首殿?」


「──い、いえ、我々はただ『宗主国スポンサー』様の、お家芸にあやかっただけでして」


「てめえらは『中つ国』派かも知れないけど、俺たちは『シモ半島』派なんだよ⁉ そりゃあ『宗主国スポンサー』が大事なのはわかるが、これって完全に犯罪じゃん⁉」


「す、すみませんっ! その場のノリで、つい!」




「ノリて……………まあ、いい。幸か不幸かそのお陰で、こうして今回の特例の30議席を獲得して、国会に復帰できそうなんだからな」




「「「………………は?」」」




 あまりにも予想外の台詞を突きつけられて、一瞬とは言え完全に呆気にとられる女性たち。


 しかしすぐさま、一斉にわめき立て始める。


「な、何をおっしゃっているのです⁉」


「今回の『クォータ制』による30議席は、あくまでも女性だけのためのものなのですよ?」


「あなたたち男性には、出る幕は無いではありませんか⁉」




「──いいや、私たちは全員、『女』なのだ」




「「「え?」」」




「おいおい、同志たちタワリシチ、何を怪訝そうな顔をしているんだ? 我々は共に外国勢力の手先たる、『ジェンダー工作員』じゃないか? ──そう、おまえたちが『フェミ工作員』であるのと同様に、我々は今回晴れて、『LGBT工作員』になったというわけなんだよ」




「「「──なっ⁉」」」




「……カレエダさん、『LGBT』って、まさか」


「そう、『LGBT』の『T』──すなわち、『身体は男でも、心は乙女なの♡』ってやつさ」


「そ、そんな! 国会の女性専用の議席を、そんな『言いがかり』や『まやかし』そのままのことで、実質上は男性であるあなた方が、獲得できるはずは無いではありませんか⁉」


「……ほう、『言いがかり』に『まやかし』とな? 『ジェンダー』を旗印にしているくせに、『ジェンダー』を否定するつもりかな?」


「「「な、何?」」」




「国会の議席を、たとえ憲法違反すれすれの『クォータ制』を無理強いしてまで、『男女平等』にしようとするのも、『ジェンダー』なら、肉体的にれっきとした男性であっても、本人の自己申告的に女性であれば女性と認めるのも、立派な『ジェンダー』ではないか? ──つまり、我々『RickenリッケンVankerバカー新党』が、今回女性のために用意された30議席をすべて獲得しても、誰からも文句を言われる筋合いは無いのだよ」




「「「──ッ」」」




「そういうわけで、さあ、正々堂々戦おうではないかあ! 『フェミ』と『LGBT』との、一体どちらが『ジェンダー』として正しいかを、政党としての生命そのものである、国会の議席を賭けてなあ⁉」




 ……こうして、今回の衆議院選挙において、元々は同じ外国勢力の傀儡政党だった者同士の、仁義なき戦いが始まった。




 戦え。


 戦え。




『フェミ』であろうが、『LGBT』であろうが、『夫婦別姓』であろうが、『同性婚』であろうが、生き残れる『ジェンダー』は、ただ一つだけ。


 なぜなら、とにかく日本の社会システムを破壊することだけを目的にでっち上げられた、現在の『ジェンダー・ムーブメント』は、実は互いに決定的な矛盾をはらんでおり、けして両立することなぞ不可能なのだから。




 戦え。


 戦え。




 たとえ同じ工作員同志とはいえ、『宗主国』にとって『役立たず』と見なされたらその瞬間、『粛正』の対象となるだけなのだ。




 戦え。


 戦え。




 最後の一匹になる、その時まで。










 ……万一幸運にも生き残ろうが、日本の支配を完了した『宗主国』によって、『証拠隠滅』のために、結局排除されるとも知らずに。
















メリーさん太「……何だよ、これって?」




ちょい悪令嬢「前回の続きですよ。本文にも記しましたが、実は現在行われている各種『ジェンダー工作』は、それぞれに致命的矛盾をはらんでおりますので、そこのところを突いてみたのです」


メリーさん太「矛盾、て?」




ちょい悪令嬢「『クォータ制』なんて、公平公正であるべき選挙制度からすれば、憲法違反レベルの暴挙だと言うのに、今や『国会における議席の男女格差の是正』こそを優先しようと、強行されかねない有り様ですが、『無理が通れば道理が引っ込む』そのままに、これまた本文で述べたように、あいつらの手口である『ジェンダー戦法』を使えば、簡単にぶっ潰すことができるのですよ」




メリーさん太「……ああ、本作においても以前言及したことのある、『身体はオトコ♡心はオトメ』作戦か」


ちょい悪令嬢「前回は肯定的に捉えましたが、でもよく考えてみると、こんなことは絶対に許せませんよね? ──事実、『クォータ制』において悪用すれば、何と実質上の男性議員が、女性のための特例の議席を、すべて独占することすら不可能では無いのですよ」


メリーさん太「──いや、そんなこと、許されるはずが無いだろうが⁉」




ちょい悪令嬢「はあ? 一体誰が否定することができると言うのです? そもそもこの『クォータ制』自体が、『いんちきジェンダー工作』によるものなのですよ? 同じ『いんちきジェンダー工作』である『LGBT』を否定したんじゃ、自分たちを否定するも同然じゃありませんか?」




メリーさん太「──‼」




ちょい悪令嬢「……だから、散々申してきたではないですか、『本作の作者だけは、けして敵に回すな』と。今回のエピソードたった一つだけで、『クォータ制』か『LGBT』のどちらかを、あるいはその両方共を、完璧に叩き潰す方策を明示して見せたわけですよ。──まあ、反論は自由ですが、その瞬間『反ジェンダー思想』の持ち主決定ですので、どうぞお覚悟のほどを♡」




メリーさん太「……うわあ、ほんと、性格悪いわ、この作者って。こいつにかかれば、残る『夫婦別姓』や『同性婚』なんかも、もはや風前の灯火だわ」

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