第644話、わたくし、女性こそ『既得権』を捨てるべきだと思いますの⁉

「──貴女たちは、間違っている!」




「「「「…………は?」」」」




 魔法大国ホワンロン王国の王都にそびえ立つ、白亜の王城スノウホワイト。


 その七つの支塔セブン・リトルズうち、国会議事堂が設けられている、『七の塔セブンス・リトル』の最上階の瀟洒なサロンにて響き渡る、青年の怒号。


 呆気にとられる、わたくしたち──すなわち、このサロンのあるじである、かつての王国の敵国の王女にして、現在は外様ながらも王国を支えている四大公爵家の令嬢たち。


「あ、あの、あなたは、一体?」


「僕は宰相リッベントロップ侯爵の次男の、テオドールだ。このたび父の領地を代表して、『国会議員』となることが内定している」


「ええっ、宰相のご子息のテオドールさん⁉」


「あの噂の、内務省特別高等警察の、若き管理官殿!」


「官僚中の官僚であられるあなたまで、国会議員候補だったのですか⁉」


 ……これは秘密だが、この作品のクソ作者、さっき誤変換で、『最小の愚息』とかタイプしてやんの。ガヴィ国男性かよw


「ええと、テオドールさん? わたくしたちが間違っているとは、一体何のことでしょうか?」


「前回の貴女たちの発言に、断じて看過できないところが、多々あったのだよ!」


「「「「──いきなり『メタ』かよ? ガヴィッパリらしいな!」」」」


「やかましい! 僕はけして、短しょ──いや、ガヴィ国人じゃ無い!」


「……まあ、今更本作の作者の作品において、『メタ』かどうかなんて論じたところで意味が無いので、その辺はスルーいたしますけど、前回のわたくしたちの発言に対して、『断じて看過できない』とは、いくら何でも聞き捨てならないのですが、どういうことなのでしょうか?」


「しらばっくれるな、タチコ=キネンシス公爵令嬢! 前回貴女たちは、はっきりと宣言したではないか? 『現在の国会は自分たち公爵令嬢の最後の砦だから、男性議員の参入に対しては、どんな手を使ってでも絶対に阻止してやる』と!」




「「「「──!」」」」




「どうだ、相違あるまい!」


「……ええ、確かにそう言ったことを申した覚えがありますが、それが何か?」


「それが何か、では無い! これはもう、『男女差別』とか『外様差別』とか『出生差別』とかいったレベルでは無く、『絶対にやってはならないこと』だろうが⁉」


「──なっ⁉」


「ど、どういうことですの!」


わたくしたちはあくまでも、何かと立場の弱い公爵令嬢に与えられた、わずかな権利を守ろうとしただけでは無いですか⁉」


「それのどこが悪いと、おっしゃるのです!」




「どこもかしこも悪いわ! いいか、あんたらのやったことは、自分たち公爵令嬢オンナのためだけに用意された場所ポストを守るために、新たに参入を予定された優秀なる男性を、正当な理由も無く全面的に拒絶したんだぞ! これこそは、真に公平であるべき政治家や役人が絶対に行ってはいけない、『既得権への排他的しがみつき行為』そのものだろうが⁉」




「「「「──ッ」」」」




「わ、わたくしたちが」


「どこかのクソ国家の、政治家やお役人そのままな」


「『既得権至上主義者』ですとおおお⁉」


「何、ソレ?」


「それじゃなんわたくしたちが、『おっさん』議員みたいじゃないですか⁉」


「スゲエ、風評被害イメージダウン⁉ 公爵令嬢として、訴えますからね!」




「……いや、あんたらは、おっさんでは無く、『オバハン』そのものだろう?」


「「「「──何だと、てめえ⁉」」」」




「……はあ〜、『あちらの世界』のニッポンという国でも、昔同じようなことがあったんだよなあ。旧厚○省において、福祉関係の管理職ポストに空きができたから、そこに見合う優秀なる男性官僚が昇進内定されたんだけど、実はそのポストって、たまたまこれまでずっと女性のキャリアが配置されていて、いつの間にか『女性キャリアのための既得権利』と思い込まれていたんだよ。それなのに急に男性キャリアの就任が取り沙汰されたものだから、本来何の権限も無いはずの女性キャリアたちが、火がついたかのように猛抗議をし始めたんだ。もちろん当時からすでに『歪んだフェミの横車』を押しっぱなしだった、女性国会議員どもが黙っているわけが無く、マスゴミまでも巻き込んで大騒ぎをし始めたんだよ、『──これ以上、女性のポストを減らすな! 女性のポストは、必ず女性に引き継がせろ!』ってね。──でもさあ、これっておかしいとは思わないか? 女性のポストは絶対に女性が引き継がなければならないのなら、現在大多数を占めている男性のポストは、男性が引き継がなくてはならなくなり、高級官僚の世界における男女格差は、未来永劫是正されないことになるんじゃないのか?」




「「「「…………あ」」」」




「──いやいやいや、ちょっと待って⁉」


「そこのところは別に、杓子定規にする必要は無いでしょう?」


「何せ、ニッポンのお役所の管理職においては、ただでさえ女性の数が少ないんだから、少しぐらいの『調整』は許容範囲じゃないの?」


「そういった話は、もう少し男女格差が縮まってから、改めて考えればいいのでは?」




「……ほう、その『男女格差』が是正されるのが、一体いつになるのかは知らないが、その間ずっと、役所における公平なる判断で『ふさわしい』と指名された男性を押しのけて、少なくとも彼よりも『ふさわしくない』女性を無理やりポストに就かせるといった、『愚かな真似』をし続けて、ニッポンの国民の皆様に対する行政サービスを、底なしに低下させ続けていっても構わないと言うのだな?」




「「「「──‼」」」」




「こんなもの、『男女平等』なんかじゃない! 単なる薄汚い国会議員や高級官僚による、『既得権確保』だ! 公僕として、最も恥ずべき行為だよ! その旧厚○省のポストが、女性のためだけのものなんて、誰が決めた! それこそ『差別主義』そのものだろうが⁉ 本当に男女平等を実現したいのなら、これまでずっと女性が担っていたポストに男性が着任しようが、誰も文句は言わないはずだ! しかもあいつらの醜悪さは、それだけじゃ無い! マスゴミ用のPRプロパガンダシーンとして、この問題に関わった各党の女性議員どもが、にこやかにお茶を飲みながら談笑しているシーンが、テレビ等で流されたのだが、偉そうにふんぞり返っているオバハン議員どもに対して、甲斐甲斐しくお茶を配っていたのが何と、いまだ年若い女性公務員の皆さんだったのだ! ………………何だ、そりゃ? おいおいおいおい、おまえらの『男女平等』って、役所の上位のポストを独占するためだけのもので、下っ端の女性職員にお茶くみをやらせることに対しては、見て見ぬ振りかよ⁉ おまえら『オバハン』としてはニッポンにおいて最上級に偉いんだから、ロ○ポンギあたりのホストクラブから大枚はたいてえり抜きの美青年ホストたちを出張させてきて、お茶くみをさせろよ! ──結局、これがあいつらの正体なんだ! あいつらの『国会議員の男女格差是正』とか『LGBT』とか『夫婦別姓』とかを、『理想的な平等社会の実現』などと真に受けてしまうと、『本当に頑張っている女性』のほうが駆逐されて、『コネ採用の能無し女』ばかりが重要ポストを独占していって、ニッポンの政財界を始めとする社会システムが、完全に破壊されてしまうぞ!」




「──うぐっ」


「た、確かに」


わたくしもその映像を見たことがありますが、『あれはないわ〜』と思いましたもの」


「……まあ、最近では『女性のお茶くみ』については、ようやく廃止されていっているみたいですけどね」




「──とにかく! たとえ現在『女性に占められているポスト』であろうとも、それをちゃんと男性にも開放しない限りは、真の意味での『男女平等』はあり得ないことを、与野党を問わずすでに国会議員として潜入している、どこかの外国勢力の工作員であるエセ人道主義者どもは、肝に銘じておくんだな! ──特に、約二名ほどの『二世議員』ども! たとえ閣僚経験者であろうとも、このまま『偽善フェミ』行為を続けるつもりなら、真に主権を回復した『新生ニッポン』には、おまえらの席はないからな?」

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