第576話、わたくし、『文学少女系悪役令嬢』ですの♡

お目にかかります。わたくし、トーコ=ロクジョウと申します。──どうぞ、よしなにお願いいたします」




 ──ッ。


 まさか、そんな⁉




「……あなたが、新しいお母様の、娘さん?」


「ええ、アルテミス


 そのように、ニッコリと微笑みながら答えを返す、この魔導大陸には珍しい黒髪黒瞳の、天使や妖精そのままの可憐な少女。




 ──量子魔導クォンタムマジック学園の人気の無い図書室で、二人っきりで会っていた時と同様に。




 ……あの、彼女が、


 筆頭公爵家令嬢であるこのわたくしが、身分とか世間体とかを度外視して、初めて懇意になった同世代の『友人』が、




 わたくしの実の母親を哀しませて、絶望のあまり自殺へと追い込んだ、憎い女の娘ですって⁉




 ……そんな。


 やっと『真の理解者』に、巡り合えたかと思っていたのに。


 結局あなたも、うわべだけのつき合いだったの?


 母親同様に、筆頭公爵家の人間であることだけが、目当てだったの?


 本心では、一個の人間としてのわたくしには、何も興味は無かったと言うの?




 ……嬉しかったのに。




 やっと『同好の士』を見つけたと、思ったのに。




 本当は社交界や学園における『女の闘いマウントバトル』なんかよりも、一人静かに本を読んでいるほうが好きだという、すべての女生徒の畏怖の対象であるはずの、『悪役令嬢』にあるまじき『素顔』。


 本来なら、人前にさらされることなぞ、けして許されなかったのだが、幸か不幸か学園の旧館の古びた図書室は、流行はずれの古典文学や希少な奇書などが潤沢に収容されているというのに、立地の悪さゆえか、蔵書が読む者を選び過ぎるためか、口の堅い司書さん以外はほとんど訪れる者がおらず、まさにわたくしにとっては夢のような空間を、長らく独り占めしていたところ、




 ──突然、その独りっきりの聖域は、『彼女』の登場によって、侵されてしまったのだ。




 自分の秘密の趣味を暴かれてしまい、当然焦りまくったわたくしであったが、


 彼女のほうは、学園きっての有名人である公爵令嬢を前にしても、何ら物怖じすること無く、むしろ旧館の図書室に利用者を見つけたことこそに、大いに驚き、


 ──そして、満面に笑みをたたえるや、諸手を挙げて喜んだのであった。


 聞くところによると、実は彼女のほうこそ、わたくしなんかよりもずっと以前から、この図書室の常連だったのであり、こうして自分以外の利用者の姿を見たのは初めてだったので、感極まったとのことであった。


 もはや、相手が公爵令嬢であろうが、悪役令嬢であろうが、構わなかったのだ。


 そんなことよりも彼女にとっては、『読書の悦び』を分かち合う相手を見つけたことのほうが、大事だったのである。


 ──事実、彼女の文学に対する造詣の深さは、公爵家の権力や財力に飽かして、古今東西の様々な文献を読み込んできた、わたくしすらも舌を巻くほどであった。


 まさしく、彼女こそは、わたくしにとっての、


 初めての、『同好の士』、であった。


 ……そのように、ずっと一人きりで、真の仲間に飢えきっていたわたくしが、


 彼女にのめり込まずにいられるはずが、無かったのだ。


 すぐにわたくしたちは、家柄や学園内の立場なぞそっちのけで、『親友』となった。


 まさしく、本当に『心を許せる』、間柄となったのだ。




 少なくとも、わたくしのほうは、そう信じていた。




 ──なのに、今この時、あまりにもあっさりと、裏切られてしまったのだ。







(つづく?)














メリーさん太「……今度は一体、何なのよ?」




ちょい悪令嬢「実はわたくし、『文学少女系悪役令嬢』を、目指してみようかと思いますの」


メリーさん太「はあ?」




ちょい悪令嬢「ほら、『文○少女』シリーズの後継作である、『むす○と本。』の第二巻がめでたく刊行されたではないですか? これを機にわたくしも『文学少女系悪役令嬢』としてデビューして、本作の中で、他のラノベやWeb小説をベースにした、『ビブリオミステリィ』路線を目指してみようかと存じますの」




メリーさん太「──いや、ダメだろう⁉ それってまんま、『二次創作』か、下手したら『パクリ』じゃん!」




ちょい悪令嬢「……でも、『文○少女』シリーズや『むす○と本。』においても、同じようなことをやっておられるではないですか?」


メリーさん太「あれは『古典文学』限定だろうが⁉ たぶん全部『著作権』が切れているんだよ!」


ちょい悪令嬢「そ、そういえば⁉」


メリーさん太「わかったらもう、馬鹿な真似はやめるんだ!」


ちょい悪令嬢「……そうはおっしゃられても、すでに数話分のアイディアも浮かんでいることですし、なるべく差し障りの無い形で続けたいかと思うのですが?」


メリーさん太「うおいっ⁉」




ちょい悪令嬢「──と申しますか、今回の冒頭部分て、まんま『告白レペンテンス』のアレンジ版のようなものですので、本作の作者のオリジナル作品と言い張っても、十分通用するのでは?」




メリーさん太「……あー、そういえば『夢魔の告白レペンテンス』も、元々『文○少女』シリーズの、叶○さんと結○さんとの百合カップルを勝手にモデルにして、適当にSFテイストを付け加えることでごまかして、オリジナル作品としてでっち上げたんだっけ?」




ちょい悪令嬢「──言い方! 『夢魔の告白レペンテンス』はあくまでも、『文○少女』にインスパイアされただけで、リスペクト心にあふれるオリジナル作品なのですわ!」




メリーさん太「そっちこそまさに『物は言いよう』じゃん? もし仮に野村美○先生に『夢魔の告白レペンテンス』を見られた日には、マジで怒られかねないぞ? ──いや、『パクリ』と言うよりもむしろ、『内容の酷さ』のせいでな」




ちょい悪令嬢「基本的には百合カップルによる陰惨なる心中モノですが、『シ○タゲ』や『ま○マギ』ばりのループSFの側面もあるという、本作の作者の手による問題作中の問題作『夢魔の告白レペンテンス』は、現在『小説家になろう』様において絶賛公開中ですので、ご興味のお有りの方は、是非ともご一読してくださいませ♡」




メリーさん太「──結局今回も、自作の宣伝だったのかよ⁉」

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