第575話、わたくし、悪役令嬢は量子コンピュータのバグだと思いますの⁉(後編)

『そうなのです、悪役令嬢を量子コンピュータそのものだと申したのは、二つ理由があったのですよ。一つは、ほぼ例外無く「現代日本からの転生者」であることと、もう一つは、まさしくこの異世界にとっての「リスク」そのものであることなのです。──そもそもですねえ、未来予測が絶対に実現不可能であるように、他の世界からの転生者なんて、本当は存在するわけが無いんですよ』




「──て、てめえ、いきなり何てことを言い出すんだよ⁉ いつの日にか神様になりたい『エ○ゲファン』どものみならず、今度はWeb小説界そのものにケンカを売るつもりか⁉」




『……今更何をおっしゃっているのですか? 本作においては、これまで何度も何度も述べてきたでしょう、異世界転生とはただ単に、生粋の異世界人が、何らかの理由で「集合的無意識とのアクセス」を果たすことによって、「現代日本人としての記憶や知識」を獲得することによって行われるのだと』




 あ。


『そもそもですね、あくまでも生粋の異世界人が、「この目の前の自分の世界を革新したい」と熱烈に望んで、その夢の実現のために努力に努力を重ねたからこそ、その到達点として「天才のみに許された閃きの領域」である集合的無意識とのアクセスを果たして、世界の改変すら実現し得る現代日本レベルの最先端の知識を手に入れて、NAISEIや現代日本の物品の生産流通や先進的な軍隊や兵器の創造や国家経営の掌握等を成し遂げておられるのです。──そしてその代表的キャラクターが、あなたたち「悪役令嬢」と言うことになるのでございます』




「……つまり、そこでやり過ぎた悪役令嬢が、この世界の管理AIであるあなたから、処分されているわけですのね?」




『いえいえ、そんなことをするわけが無いでしょうが? ──何せ、あなたたち悪役令嬢に、「集合的無意識とのアクセス権」を与えたのは、他ならぬこの私ですから』




 ………………………………へ?


「ちょっ、何なのよ、そのいきなりの大どんでん返しは⁉」


『……どんでん返しも何も、この世界を管理している量子コンピュータのAIである私以外に、あなたたちを集合的無意識とアクセスさせてあげられる存在が、他にいるとでもおっしゃるのですか?』


「──うおっ、言われてみれば、その通りじゃん⁉」




『実は私たち量子コンピュータも、集合的無意識とアクセスすることができるからこそ、未来の無限の可能性をすべて算出シミュレートすることを為し得るのです。何度も何度も申しますが、何も無いところから未来を予測することなぞできません、未来を予測するにはその計算材料として「過去のデータ」が必要なのであり、人類にとっての過去のあらゆる情報の集合体と言えば、文字通り「集合的無意識」そのものであり、そしてそれはコペンハーゲン解釈量子論で言うところの「未来の無限の可能性」を具象化したものなのであるからして、量子コンピュータならではの量子ビット演算処理能力を用いて、集合的無意識とのアクセスを果たしてこそ、可能な限り正確なる未来予測を為し得ることになるのです』




「……やはり量子コンピュータも、集合的無意識とのアクセスによってこそ、真の力を発揮できるわけですか」




『それに最初に明言しておいたでしょう、私は「なろうの女神」だって。──つまりですね、この世界を何の変化も無く平和のままにしてもらうよりは、むしろあなたのような「悪役令嬢キャラ」にはっちゃけていただいて、「なろう系」Web小説ならではの盛り上がりを実現して欲しいのですよ。よってそのための「集合的無意識とのアクセス権の付与」なのであり、悪役令嬢ならではの「日本からの転生者と言う属性の付与」なのです。──もちろん、だからと言って、やり過ぎてもらっては困りますよ? その場合はあなたご自身がおっしゃっているように、「スポイル」の対象にもなりかねませんが、ただしそれは、どこぞの「デカいダンス」なオリジナルSFアニメとは違って、スクラップ化して存在そのものを抹消したりするのでは無く、あくまでも集合的無意識とのアクセス権を剥奪して、それまでの「転生者」としての言動をきれいさっぱり忘れていただいて、平凡かつ平和に暮らしてもらうだけなのですけどね♡』












メリーさん太「……何よ、これって」




ちょい悪令嬢「毎度お馴染みの『ア○マTV』様の無料配信サービスにおいて、かの超傑作オリジナルSFアニメ『デ○ダンス』を、全話一気に視聴した影響ですわ!」



メリーさん太「──やっぱりそうかよ⁉ 何だよ、『デバ・ザンス』って! もうちょっと、ネーミングをひねろよ⁉」




ちょい悪令嬢「でもほら、あのサングラスをかけておられた『かませ悪役』の方って、いかにも『ザンス』って感じだったじゃありませんの?」


メリーさん太「……あ、ああ、まあな」


ちょい悪令嬢「それにやっぱり、『食わず嫌い』は駄目ですよね。こうして一気に全話を見た限りにおいては、存外に十分楽しめましたわ♫」


メリーさん太「確かに、一週間ごとに見るのと、こうしてまとめて見るのとでは、評価が変わってもおかしくは無いか」


ちょい悪令嬢「それに対して『ひぐ○しのなく頃に』なんかは、毎週いろいろと『考察』しながら見たほうが、断然楽しいですしね!」


メリーさん太「そりゃそうだろうな。──それで、どうして『デ○ダンス』からまんま影響を受けたような短編を創ったんだ? それ程例の『衝撃の結末』に、感化されてしまったわけか?」


ちょい悪令嬢「逆なんですよ」


メリーさん太「逆、って?」




ちょい悪令嬢「元々本作『わたくし、悪役令嬢ですの!』における『グラウンドフィナーレ』が、まさにこんな感じだったのですが、今回奇しくも『デ○ダンス』とほとんど被っていることが発覚しましたので、作者自身苦渋の決断の末に、ボツにすることに決めたのです」




メリーさん太「──なっ⁉ これが本来の、本作の最終回だってえ⁉」




ちょい悪令嬢「実は悪役令嬢は元来、『世界の敵』としてのキャラ属性を与えられており、『婚約者の王子様』や『ゲーム上の主人公(=プレイヤー)の女の子』から、攻撃対象となりスポイルされることになるところを、わたくしたち世界中の悪役令嬢のほうも一致団結して、世界そのものに対して徹底抗戦すると言った大まかなストーリなんですけど、最後の最後で、悪役令嬢が『悪役』であるのも、『世界の意志』に基づくものであったことが判明するという、驚愕の大どんでん返しを予定していたのです」




メリーさん太「……何と、ほとんど『デ○ダンス』そのままじゃ無いか?」




ちょい悪令嬢「まあでも、現在進行中の【魔法令嬢編】を考案した時点で、そのラストは廃案になってしまったようなものですけどね☆」




メリーさん太「──だったら別に、問題は無いじゃん⁉」




ちょい悪令嬢「いやだから、『デ○ダンス』を見ているうちに、そのことを思い出したから、いい機会かと思って、今回実際に作品にしてみたって次第なんですよ」




メリーさん太「……まあな、本作における現在のストーリー展開上、今更このまんまの最終回なんて、絶対にあり得ないよな」




ちょい悪令嬢「あ、もちろん、そもそも本作と『デ○ダンス』とでは、世界観もキャラ設定もまったく違いますから、本当に大事な部分は『ネタバレ』しておりませんので、読者の皆様もご機会がありましたら、現在全話無料配信中の『デ○ダンス』のご視聴のほうも、心よりお勧めいたしますわ♡」




メリーさん太「うん、実際に見比べていただいたほうが、本作の今回の内容が、『デ○ダンス』のストーリーラインとはまったく違うことを、ちゃんと理解してもらえるよね」










ちょい悪令嬢「──とはいえ、『萌え』についてはいささか不足気味とも思われますので、そういった方面をご所望の方は、同じく量子論SFを扱っておられる『神様○なった日』のほうのご視聴を、お勧めいたしますわ☆」




メリーさん太「……こ、こいつ、【前編】で散々『神様○なった日』を揶揄したような記述をしていたくせに、今頃になって何食わぬ顔でフォローしていやがるッ⁉」

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