第551話、わたくし、オキナワの『狼』少年、ですの。(その26)

「……日本政府が、あえて僕を、『沖縄独立運動』の旗頭にしようと、しているだって?」




 異世界『中つ国』からの、侵略先遣部隊のオーク隊長の、あまりに衝撃的な言葉に、思わず僕は我が耳を疑った。




「──そんな馬鹿なッ⁉ どうして政府が、わざわざ国内に、騒乱の元を生み出す必要があるって言うんだよ!」




「ふん、結局は『お子ちゃま』か……」


「何ッ⁉」


「大人の世界ってのは、そんなに単純じゃ無いんだよ、例えばさっき入ったばかりの、最新ニュースがあるんだがな?」


「にゅ、ニュース、って?」


 この異世界オーク野郎ってば、いきなり何を言い出してんの?




「実はよ、日本の新総理が、RCEPアールセップ──『東アジア地域包括的経済連携』への参加を、正式に表明し、締結文書に調印したそうだぜ?」




「あーるせっぷ? 何だ、そりゃ?」




「事実上、中つ国を中心とする、日本やシモ半島、それにASEANやオセアニアをも含む、アジア全域を網羅する、一大自由貿易圏のことだよ」




「──はあ⁉ 新政権は、『自由に開かれたインド太平洋』こそをモットーとして、中つ国やシモ半島とは、敵対していたんじゃないのかよ⁉」


「ふん、新総理はすでに、『平和で繁栄したインド太平洋』と、言い直しているようだぞ? つまり金儲けさえできれば、自由とか開放なんて、どうでもいいってことなんだろうよw」


 ……何だと?


「──いやそもそも、おまえは『中つ国』と言っても、異世界の『中つ国』の軍人なんだろうが⁉ どうしてこの世界の日本国政府が、間違いなくよその世界からの侵略者である、おまえらと経済条約を締結するんだよ⁉」




「それこそが、大人同士の駆け引きである、『政治』と言うものなのさ」




「──ッ」


「いやむしろ、お互いに『異世界の産物』を取引し合ったほうが、莫大な利益を上げることができるしな。これって、至極当然なる経済政策に過ぎないんだよ」


 一体どこの、『アウトブ○イク・カンパニー』だよ⁉


 ……作者のやつ、いくらたった今、『ひぐ○しのなく頃に拡・アウトブ○イク』を見たばかりとはいえ、影響を受け過ぎじゃないのか?


 ──ていうか、『ひぐ○し・アウトブ○イク』を見たのなら、『異世界発のウイルス』の恐ろしさは、骨身に染みてわかったんじゃないの⁉


 下手したら、アジア&オセアニア全域において、自国民か他国民かを問わずに、億人単位で殺し合いが始まるぞ⁉(※これについては近日中に、毎度お馴染みの【座談会】にて、詳しく述べたいかと思います)


「そんな、新総理は特ア諸国に対しては、強硬姿勢で行くと思っていたのに! あれだけシモ半島国や中つ国に、侮辱的な反日活動をされたり、領土侵犯を繰り返されたりしているのに、結局はこれまでみたいに、媚びへつらい続けるわけかよ⁉」


「それが『敗戦国』の、宿命というものさ」


「──ぐっ!」


「……あ、いや、別に馬鹿にしているわけじゃないんだぞ? むしろ日本国政府自身が、率先してやっていることなのだからな」


「へ?」




「普通に考えれば、某シモ半島国とは今すぐにでも完全に断交したほうが、長い目ではプラスだろう。──しかし、国内の在日シモ半島人は、どうする? 国外退去させるか? どこかに強制収容するか? そんなことしてみろ、日本の信用は失墜してしまうぜ? まるでかつての、『ナチスドイツ』みたいにな」




 ……そりゃ、そうだろうな。


 そうそう、そのうち東京赤坂のド○ツ大使館の前に、『アンネ=フランク像』を、おっ建ててやらなければな。


 なあに、お礼は要らないぜ!


 何せ、旧ナチス第三帝国の帝都ベル○ン市のミ○テ区の、不気味な『元祖パパ活象』のお返しだからな!




「つまり、戦争に負けることによって、心から反省した日本国政府は、見違えるように『お利口さん』になり、基本的にどのような物でも『受け容れる』ようになったんだよ。事実、在日シモ半島人が、国内で経済活動を行おうが、芸能活動を行おうが、某川○市堀○内に代表される歓楽街でソープランド等の性風俗商売を行おうが、パチンコ等の違法スレスレの賭博業を行おうが、それらで得た莫大なる資金をシモ半島本国に送金しようが、まったくノータッチで自由にやらせているしな。──もちろんそれは我々中つ国に対しても同様で、本国からどんなに大量の人や物や資本が投下されようが、北海道の土地を見境無く買いあさろうが、『日本学○会議』等を実質上支配下に置き、日本の最先端の学術知識を盗み取ろうが、ほとんど黙認しているといった有り様だ。──そしてそれは、この沖縄における、米軍基地闘争においても、同じなんだよ」




「……日本国政府が、外国勢力の多方面からの『浸透』どころか、自国内におけるあからさまな反政府活動すら、完全に放置しているだって?」




「だからこの国のお偉いさんは、かつての敗戦によって、『学んだ』のさ。──政治的思想的民族的弾圧なんかやらずに、むしろ何でも受け容れたほうが、結局国内が活気づいて国益に適うし、『自由で開かれた日本』であることを全世界にアピールできて、好印象を持たれることをな」




「……それじゃあ、地元の人間や県外のプロ市民たちが、沖縄で反政府活動をすればするほど──」


「かえって政府自体が──ひいては、日本そのものが、活気づくってわけさ」


「──‼」




「結局おまえら庶民は、戦争時だろうが平和時だろうが、国家にとっては『駒』でしかないんだよ。少なくとも現政権は、我々中つ国と争うことは無いし、沖縄へも、経済的にはもちろん、軍事的に進出することさえも、黙認してくれるだろうよ。──まあ、おまえが沖縄独立の旗頭になるのは勝手だが、結局『つくられたシナリオ』を演じさせられるだけの『道化師ピエロ』であることを、ゆめゆめ忘れるんじゃないぜ?」

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