第527話、わたくし、意志の最も強い者が主人公となり、真に願いを叶え得ると思いますの。(後編)

 ──ちょっ、魔王のくせに、何その、むちゃくちゃわかりやすい例え話は⁉


 そうそう、そうだ、そうだよな♫




 そもそも、『なろう系』そのままの剣と魔法のファンタジー異世界なんて、常識的に考えたら、よな?(※けして言ってはならないファイナルアンサー)




 あと、『異世界転生』を始めとして、『ループ』とか『パラレルワールド』とか『タイムトラベル』とかいった、超常的事象の類いも、Web小説やSF小説やラノベなんかの中でしかあり得ず、現実世界では絶対に起こったりしないし、もしも万が一起こったとしたら、むしろそれは現実世界では無くて、実はWeb小説やSF小説やラノベの中の世界であったことが、証明されたようなものだよな?




「……何と言うことだ、ついに俺は、『Web小説の主人公』としては、けして気づいてはならない、『世界の真理』に、目覚めてしまったのかッ⁉」


「いやだから、おまえはすでに、『主人公』では無いと、言っているだろうが?」


「ぬ? それは一体、どういうことだ?」




「いいか、たとえその世界が、現実であろうが物語であろうが、その中において最も意志が強い者こそが、『主人公』になれるのだ。何せ集合的無意識には、真に意志や願いが強い者だけが、アクセスすることができるのだからな。私自身が、魔族のみが罹る正体不明の伝染病『ジンワザ症候群』を解消するためと、何かと魔族を迫害する圧倒的多数の人間ヒューマン族への復讐のために、ウイルス学を究めようと強く願ったからこそ、努力に努力を重ねた研鑽者だけがたどり着くことを許される、『天才の閃き』という名の集合的無意識とのアクセスを果たし、多くの魔族の命を救うとともに、人間ヒューマン族の領地にウイルス兵器をばらまき、滅亡へと導くことを実現したようにな。──それに対して、おまえ自身のほうはと言えば、あくまでも生粋の異世界人でありながら、魔王である私を始めとする魔族を討伐したいと願うあまりに、やはり集合的無意識とのアクセスを果たして、ゲンダイニッポンの先進的な知識を得るとともに、それがゆえに己をゲンダイニッポン人の『転生者』だと、更には『転生者』ならではのチートスキルとして、一種のループ能力である『死に戻り』の力を手に入れたものとものの、実はこれも集合的無意識とアクセスすることによって、我々魔族との戦いに敗れて死んでしまった、『別の可能性の世界パラレルワールドの自分の記憶』を脳みそに刷り込まれて、実際に『死に戻り』を体験したものと誤認しただけなのだよ」




「なっ、俺が転生者であることはおろか、これまで散々『死に戻り』を繰り返してきたことすらも、単なる『与えられた偽りの記憶』に過ぎないだと⁉」


「さっきから言っているだろうが? おまえはあくまでもこの世界の人間ヒューマン族に過ぎないと。それにそもそも『他の世界』なぞ、これまた集合的無意識から与えられた、妄想のようなものでしか無く、『異世界転生』や『死に戻り』なぞ、絶対に実現できっこないのさ」


「──そんなに軽い口調でしれっと、『なろう系』Web小説を、全否定するなと言っているだろうが⁉」




「では、実はこの世界自体が『死に戻り』を主体メインモチーフにした、Web小説であると仮定しよう。──だが果たして、『死に戻り』を行っている者こそが、『主人公』であると、決まっているのかな?」




 ……何、だと?


「何かおまえって、自分がこれまで『死に戻り』をすることによって、犠牲にしてきた無数の世界そのものや、助けてやることができず置き去りにした無数の仲間たちに対して、無駄に罪悪感を覚える自分自身に酔っているだろうが? だけど、残念でしたーw 『死に戻り』なんていくら繰り返そうが、現在においてはすべて、妄想そのままの『偽りの記憶』に過ぎず、おまえは単に自分の妄想に罪悪感を覚えているだけの、『イタいやつ』でしかないのだよwww」




「──ンが⁉ だ、誰が、『イタいやつ』だ! どうして俺の『死に戻り』の経験が、他人のおまえごときに、単なる妄想だと決めつけることができるんだよ⁉」




「……とことん、考え足らずだな? まさにこうして『他人』の私が、おまえだけしか知らないはずの『死に戻り』の事実を知っていることこそが、すべてを物語っているではないか?」




 ………………………あ。


「言っただろう? 『死に戻り』や『異世界転生』の記憶は、集合的無意識から与えられたものでしか無いのだと。そして集合的無意識から情報でも自由自在に取得できる私は、他人であるおまえの死に戻りの記憶すらも、思うがままにアクセスすることができるのだよ」


「──なっ、俺の『死に戻り』の記憶を、他人のおまえが好き勝手に知り得るだと⁉」


 何ソレ? 某『死に戻り系Web小説』の、『強○の魔女』かよ⁉


「どうだ、『主人公』である自分にとって、てっきり『悪役』だと思っていた相手に、すべての『死に戻りステージ』において、全然歯が立たずに惨敗を重ねるばかりか、自分が『死に戻り』をしていることを、すっかり見抜かれていたのを知らされたご気分は?」


「な、何でおまえには、そんなWeb小説ならではの『チートスキル』すらも、遙かに超越したことができるんだ⁉」


「そりゃあ、私はおまえと違って、『真の主人公』だからな。集合的無意識とのアクセス権も、より上位なものが与えられているのだよ」


主人公だと? それに、よりアクセス権、って……」




「何度も何度も言うように、集合的無意識とのアクセスを果たすには、特別なチートスキルなぞ必要無いのだ。ただ誰よりも強い意志と願いとを抱き、それを是が非でも実現するために、全力で努力をし続ければ、道は必ず開かれて、この現実世界と言う物語の中において、『主人公』になれるのさ。つまり私は『主人公』として、意志も願いも熱意も努力も、すべてにおいておまえを上回っていたのだよ。──それも当然さ、『なろう系』の主人公なんて、お定まりの引きこもりのニートやブラック企業のサラリーマン風情でしか無く、何の努力もせずに他の世界に生まれ変わることによって、棚ボタ的にチートスキルを手に入れて、八つ当たりそのままに己の人生の憂さを晴らそうとしているだけに過ぎないのに対して、私のほうはこれまでずっと、自分自身を始めとして、魔族として生まれただけで、人間ヒューマン族から差別され迫害されて来た、種族全体の恨みを何としてでも晴らそうとして、魔族と人間ヒューマン族とのハーフという魔族においても最下層民であり、幼くして両親を亡くしながらも、人間ヒューマン族への復讐心を燃やし続けて、集合的無意識とのアクセスを果たすことで得た、様々な知識や情報を駆使して、若くして魔族の女王にまで上り詰めて、更にはウイルス兵器の開発にまで成功して、人間ヒューマン族への復讐を果たしたのだからな。どちらが物語の『主人公』としてふさわしいか、言うまでも無かろう」




「……くっ、すると、俺がいくら『死に戻り』を繰り返そうが、おまえに全然歯が立たず、『バッドエンド』を重ねるばかりだったのは──」


「実はおまえは『主人公』なんかでは無く、むしろ『真の主人公』であるこの私にとっての、『かませ犬』でしか無かったからさ」




 ……何……だっ……てえ……。




「さあ、そろそろこの争いの決着をつけようではないか? おまえも自分の本当の立場を知ったことで、もはやすべてに絶望し、生きる意思を無くしたことだろうしな」




 そう言って、己の右の手のひらに、強力な攻撃魔法を発動し始める、目の前の年端もいかない少女。




 ──それに対して、すでに俺には、戦う気力も逃げ出す理由も、無かったのであった。




   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑




メリーさん太「……何よ、いきなり二回にわたって、これまでの流れをぶった切って、ドラマ仕立てのエピソードを挿入したりして?」




ちょい悪令嬢「あ、いや、実はこれも、『ひぐ○しのなく頃に』旧アニメ版第二期『解』の最終エピソードである、『祭囃○編』に対する、感想みたいなものなのですよ」




メリーさん太「感想って、これが?」


ちょい悪令嬢「言ったじゃないですか? いくら他人様の作品に感銘を受けたり詳細に考証したりしても、それを自分の作品に活かせなければ、何の意味も無いって」


メリーさん太「おお、そうだったな! つまりそれを早速実践してみたわけか。あのズボラ作者にしては、感心なことだ。──それで、一体どういったところを、『見習った』わけ?」




ちょい悪令嬢「何と言っても、最終エピソードだと言うのにいきなり主役を、事もあろうにこれまでの『ラスボス』に交替させながら、前エピソードとまったく同様に、『意志の強さこそが、己の運命すらも変え得るのだ!』をテーマにして、神様をも含めたキャラ同士が、意志の強さを張り合うことによって、『主人公』の座を争っていくところですよ!」




メリーさん太「ほう、詳しく言うとネタバレになるからぼかすけど、前エピソード終盤において、意外な人物が『ラスボス』だったことに驚いたばかりだと言うのに、新エピソードにおいては、『主人公』の座までも奪いに来たわけか?」




ちょい悪令嬢「まさにこの、『意志や願いの強さこそが、過酷なる運命すらも変え得る』というところは、本作において何度も何度も申してきた、『意志や願いの強い者だけが、奇跡的に集合的無意識とのアクセスを果たして、欲しい情報は何でも手に入るようになり、どんな夢でも叶えることができるのだ!』とまったく同様であり、ある意味本作の主張が認められたようなもので、非常に光栄であります!」




メリーさん太「……しかも、いきなり主人公が替わったこと自体も、今回本作において、『実は何度死に戻りを繰り返そうがバッドエンドになってしまうのは、主人公では無かったから』などと言う、これまでの『なろう系』の常識をぶち壊す、アイディアの想起に繋がったってことなんだな?」


ちょい悪令嬢「ええ、一応『ひぐ○し』自体においては、むしろ『最後の最後でバッドエンドを回避するために、予行練習として失敗を繰り返している』わけなんですけどね。とはいえ、せっかく思いついたアイディアなんだから、早速自作において使わさせていただいたのですわ」


メリーさん太「これって、『祭囃○編』の最初の二、三話を見ただけで、思いついたんだろう? ほんと、着眼点が独創的であるばかりか、『新たなる小説』創作に貪欲な作者だよな?」


ちょい悪令嬢「とはいえ、『魔法少女お○し☆ロリカ』のことを、てっきり二次創作だと思い込んでいた、『ニワカ』でしかありませんけどねw」


メリーさん太「あれは仕方ないよ、まさか『公式』が、あんな暴走おふざけをするなんてなwww」




ちょい悪令嬢「──と言うわけですので、本当に学ぶところの多い『ひぐ○しのなく頃に』第二期ですが、更に最終エピソードの残りの話数を視聴していくうちに、また何か感銘を受けることがありましたら、そのつど当【座談会】で御報告したいかと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします♡」

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