第435話、わたくし、『日本でこそこそエルフちゃん』、ですの♡(最終回、SNS地獄編)
『──『ライジングサンTV』をご覧の皆様、こんにちは♡ 本日の午後のワイドショーのお相手は、『日本でこそこそエルフちゃん』のキャッチフレーズでお馴染みの、この
そのように、テレビのモニター内で、突然声高にアジテーションし始めたのは、本来なら、ただニコニコと笑っているばかりの、可愛いだけでいかにも頭の軽そうな、ワイドショーの添え物の女性タレントであった。
──ただし彼女は、なぜか最近こぞってSNS等で反政府活動を始めた、有象無象の『某国の紐付き』工作員タレントたちとは、ひと味違ったのだ。
いかにも日本人離れした、銀白色のショートカットの髪の毛に縁取られた、彫りの深い端整なる小顔の中で煌めいている
──そう、彼女こそは、異世界のエルフ族の国『カニバリア王国』から、『逆転生の秘術』を使ってこの日本へとやって来た、エルフの転生者だったのだ。
ただでさえ文字通りに人間離れした、天使か妖精かといった圧倒的な美貌に加えて、その尋常ならざる出自が、世間一般の人々に大受けして、ワイドショーのコメンテーターとしてテレビに登場して以来、圧倒的な人気を誇り、彼女の一言こそが、世相そのものを大きく動かすとも、まことしやかに噂されるほどであった。
そんな彼女が、政府が秘密裏に進めていた『アンチ転生法』制定に対して、明確に反対の意を示したのである、日本国中が『法案反対』一色に染め上げられたのは、言うまでも無いだろう。
こうして日本以外の国から送り込まれた、『広告塔タレント』の扇動によって、せっかくの有益なる新法は闇から闇へと葬られて、これからも日本の最先端の科学技術や知的財産は、異世界へと流出し続けて、莫大なる損失を被り続けることになったのである。
☀ ◑ ☀ ◑ ☀ ◑
「──本当にお世話になりました、プロデューサー」
「何の、シャインちゃんのためなら、このくらいお安い御用だよ!」
時刻はすでに夜半過ぎ、東京でも高名なるタワマンの
「お陰様で、政府の悪法も取り下げられて、これからも私の本国のほうに、優れた日本の技術や知識を流出できることになって、女王陛下を始めとして、皆喜んでおりますわ♡」
「それは何よりだ、何せ我々日本のマスコミは、外国様のご支援とご指導とで成り立っているので、自分の国よりも外国様に栄えてもらわなきゃ困るからな!」
「今回もちゃんと、皆様のご口座には、謝礼のほうをたんまりと振り込んでおきましたので、後ほどご確認くださいな」
「それはそれは…………あ、いや、あくまでも我らは、正義のために立ったのだ! 現政権の危険性を、お茶の間の皆様にお伝えすることが、マスコミの責任なのだ! それに何よりも、『表現の自由』を抑制する法律なんて、TV業界としても、絶対に許すわけにはいかないからな!」
「さすがは、『平和を愛する
「いやいやこちらこそ、シャインちゃんのお陰で、視聴率のほうもうなぎ登りで、僕も鼻高々だよ! ──おっと、いけね、もうすぐ終電だ、そろそろおいとまするかあ」
「──あら、せっかくですので、今夜は私の部屋に、お泊まりになったら?」
突然の思わぬ台詞とともに、絡み取られる男の右腕。
押しつけられる、結構豊満なる二つの膨らみ。
咄嗟に振り向けば、こちらを蠱惑の煌めきとともに見つめている、二つの
「……シャイン、ちゃん?」
「私、プロデューサーを一目お見受けした時から、思っておりましたのよ? 『何て好みの男性なの? いっそのこと食べちゃいたいわ♡』、って」
「た、食べちゃいたいって、シャインちゃん⁉」
「さあ、お部屋に参りましょう」
「あ、ああ、もちろんだとも!」
もはや断る理由もなく、だらしなく鼻の下を伸ばしながら、女エルフのタレントに導かれるまま、マンションのエントランスへと向かう、でっぷりと肥え太った番組プロデューサー。
──しかし、彼は、知らなかったのである。
シャイン嬢の異世界における生まれ故郷の『カニバリア王国』には、支配者であるエルフ族以外にも、『豚』と呼ばれる二足歩行の家畜が多数飼育されていたのだが、これらはただ単に『食用』としてだけではなく、一風変わった『遊戯』のためにも、大いに活用されていたのだ。
その遊戯を、エルフたちは、『なろう系Web小説』と呼んでいた。
ほとんど知性を持たぬものの、この世界の人間並みの容量のある脳みそを有しているので、そこに集合的無意識を介して、現代日本人の『記憶と知識』をインストールすることによって、実質上の『異世界転生』や『異世界転移』を実現して、あくまでも『演目』としての、『魔王退治』や『NAISEI』や『大陸統一』や『悪役令嬢物語』等々を、演じさせていたのである。
『豚』に宿った日本人たちの精神のほうは、本物の『なろう系異世界転生物語』と思い込んで、チート転生者として振る舞っているものの、実は舞台となった『異世界の国々』そのものすらも、エルフの王国と世界的宗教組織『聖レーン転生教団』による、『
『豚』自体も、用済みとなった途端、日本人の精神をアンインストールされて、ただの『豚』に戻されるとともに、本来の役目としてエルフたちの食卓に
──え? 豚になんかに転生や転移をしたら、とても『なろう系物語』なんて、やってられないんじゃないかって?
ああ、ごめんごめん、『豚』と言うのはあくまでも、『あちらの世界』における呼び名に過ぎず、
その外見は、この世界における、『人間』そのものなんですよ。
その証拠に先ほど、シャインちゃんが、まるまると肥え太ったプロデューサーを見つめながら、言っていたではないですか、
「何て好みの男性なの? いっそのこと
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