第434話、わたくし、『日本でこそこそエルフちゃん』、ですの♡(蘊蓄解説編)

調教済み司教「今回はタイトルにありますように、全編的に『蘊蓄解説コーナー』となりますので、どうぞご容赦のほどを」


エロフの女王様「注目の、『他の国のための広告塔芸能人』である、ワイドショーのコメンテーターの美人エルフ嬢(年齢380歳)は、次回の登場となりますので、どうぞお楽しみに♡」


調教済み司教「380歳と申しましても、そこはあくまでもエルフなので、日本人女性に当て嵌めると、ローティーンの美少女となりますから、誤解の無きよう。──詳しくは、かの超問題作の『異種族レビ○アーズ』等を、ご参考になさってください」


エロフの女王様「──おい、我ら高貴なるエルフ族に対して、要らぬ風評被害を及ぼしかねないようなことを、言い出すんじゃない!」




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「──それでは、どうして現代日本において、異世界転生系Web小説の作成及び閲覧を全面的に禁止すれば、実際に異世界転生の実現を抑制することになって、日本から異世界への最先端技術の流出をストップさせることができるのか、その三つの理由のうちの『二番目』について、これからご説明して参りましょう」




 聖レーン転生教団異端審問第二部の渉外担当特務司教である、私ことルイス=ラトウィッジによって、『あちらの世界』の日本国政府が、これ以上の最新科学技術の異世界への流出を防ぐために、主にWeb小説を始めとする異世界転生系の創作物の、今後一切の作成及び閲覧を禁止する、『アンチ転生法』なる新法律を制定しようという動きがあることを奏上したところ、そのあまりにもメタっぽい言い分に、実効性を非常にお疑いになられている、見かけ上はJC女子中学生な美少女エルフでありながら、実はよわい四桁の文字通りの『千年女王』であられる、魔導大陸極東の半島国家の『カニバリア王国』の、現女王陛下であったが、一応はこちらの話を一通り聞いてくだされるようであった。




「……いや、勝手にナレーションしないでください。こんな面白くも何ともない蘊蓄コーナーなんて、正直言ってうんざりですよ」


「仕方ないではありませんか? 本当は5月23日の『キスの日』に合わせて【番外編】をぶっ込もうとしたのに、作者が無駄に手間取って、前回については急遽、何だかわけのわからないおっさんたちによる『会議シーン』でお茶を濁してしまったから、今回こそは蘊蓄メインで行かなければならなくなったのですよ」


「──何が仕方ないのか、まったくわからないんですけど⁉ それに前回があの体たらくになってしまったのは、すべて作者の責任でしょうが?」


「……だって、時間が全然、足りなかったんだもの」


「いいから、さっさと、本題に入れ!」


「はいはい。──ということで、女王様も何だかご機嫌斜めの御様子ですので、残り二つに関しては、とっとと済ませてしまうことにいたしましょう。まず二つ目の理由としては、『異世界を舞台にした作品を作成すれば、世間一般の人々にその世界の存在を認識させることによって、世界としての『存在可能性』が確定してしまうから』です」


「……いや、相変わらず、一体何を言っているのか、全然わからないのですけど?」




「時系列を取っ払って簡単ざっくばらんに申しますと、異世界系Web小説を一作ひとつ書くごとに、が、新たに一つ生み出されることになるのですよ」




「は?………………いやいやいや、言うに事欠いて、いきなり何てことを⁉」




「実はこれって、本作の作者の最も基本的な持論でもありましてね。物理学の根本原理である量子論に則れば、世界と言うものはありとあらゆるタイプのものが、存在している『可能性』があるのですよ。だからこそ我々は、あらゆるパターンの異世界に転生(や転移)する可能性があり得るのであり、ありとあらゆるパターンがあると言うことは当然のごとく、ある特定の小説そっくりそのままの異世界も、ちゃんと存在していることになるのです」




「ええっ、小説の中で異世界を描くよりも以前に、その異世界が存在しているなんて、そんな馬鹿な⁉」


「だって、ありとあらゆるパターンの世界が、最初からすべて揃って存在していないと、そもそも異世界転生やタイムトラベルの類いが、まったく実現不可能となってしまうので、前にも申しましたが、現代日本人の皆様からすれば『異世界人』に当たる我々としては、存在そのものが全否定されかねないのですよ」


「うう〜む、無理やり納得するとしたら、すでに小説そのものの世界が存在していて、日本の小説家が、たまたまその世界とそっくりそのままの異世界を、創作物として生み出したと言うことなのでしょうか?」


「……いや、私もさっきから、そのように申しているつもりなんですがね?」


「でもやっぱり、一個人が考え出したWeb小説内の異世界と、何から何までそっくりそのままな世界が存在しているなんて、どう考えてもあり得ないと思うんですけど?」




「だから先ほどから申していますように、あくまでも『可能性の上』での話ですってば。具体的に個々の世界が確実に存在していると言うよりも、『世界シミュレーションゲーム』とかがあって、どんな世界でもいつでもプログラムできるものだと思ってください」




「……なるほど、確かに、世界そのものやそこに存在しているモンスター等を、プレイヤーの意思で細かいパラメータに至るまで作成することのできる、いわゆる『世界創造型ゲーム』とかに例えてもらったら、何となく実感できましたわ。つまり『可能性の上では、あらゆる事象や世界そのものが、いくらでも存在し得る』とは、『いかなる世界でも創り上げることのできる、「材料」が全部揃っている』状態みたいなものなのね?」


「おお、うまいたとえですね、まったくその通りです」


「そういえば、てっきりゲームとばかり思っていたら、本物のファンタジーワールドに転生や転移をしていたなんて言う、Web小説やアニメも少なくないですしね」


「つまり、ある意味『観測者理論』みたいなもので、小説やゲームにおいて実際に目にすることによって、それに該当する本物の異世界の存在可能性が確定するようなものなのですよ」


「逆に言うと、Web小説等に異世界を登場させなければ、本物の異世界を現代日本人が認識できなくなるから、当然転生したりもできず、最先端技術の流出も無くなるってわけなのですね?」


「おお、その通りでございます!」


「──あ、いや、ちょっと待って⁉」


「な、何です、いきなりどうしたのですか?」




「『なろう系』のWeb小説そのままな世界が存在していると言うことは、その現実の世界の中において、現代日本からの異世界転生が行われていると言うことなのですか⁉」




「──ふっ、勘のいい女王様は、嫌いだよ」




「……え、わたくし、殺されてしまうのですの?」




「あはは、冗談ですよ、冗談。これについては『三番目の理由』に深く関わってきますので、そちらのほうで詳しくご説明いたします」


「はあ……」




「これまた、本作の作者の小説作成における、基本中の基本の理論なのですけど、結局異世界転生などと言うものは、純粋なる異世界人が、集合的無意識とアクセスすることのみで実現できるので、現代日本からの転生とか転移なんてものは、肉体的にも精神的にも、まったく必要無かったりするのです。何度も何度も例に取り上げて恐縮ですが、例の『本好きな女の子』のパターンで申しますと、れっきとした生粋の異世界人の女の子が、自分の世界に読書の習慣を広めようと、東奔西走の大努力をするんですけど、あと一歩のところでつまずいていたところ、その熱意が『努力家のみを愛する知識の女神様』に届いて、ありとあらゆる世界のありとあらゆる存在の『叡知』──すなわち、ありとあらゆる高度知生体の『記憶と知識』が集まってくるとされる、集合的無意識とのアクセスを実現させて、女の子の脳みそに、『真に努力した者だけが許される、天才的閃き』という名の、現代日本レベルの最先端の、印刷製本技術や大量の書籍の流通経路開拓のための知識が、インストールされることによって、実質的に『現代日本人の転生』を実現することになるのです」




「……ええと、これってすでに、耳タコレベルに、聞き飽きているんですけど?」


「ええ、承知しております。──そこで先ほど、他ならぬ女王様がおっしゃったことが、生きてくるのですよ」


わたくしが申したこと、ですか?」




「今のはあくまでも『現実的なパターン』に基づいて述べましたが、『所詮は創作物フィクションに過ぎない、なろう系Web小説そのまんまのパターン』であれば、集合的無意識を介して、生粋の異世界の女の子の脳みそにインストールされる『記憶と知識』は、Web小説そのままに、『本好きな現代日本の司書の女性』のものであるほうが、よほど手っ取り早いんじゃないですか?」




「はあ? なろう系のWeb小説の登場人物の『記憶と知識』が、異世界人の女の子の脳みそにインストールされるなんて、そんなそれこそWeb小説みたいなことが、本当にあり得るわけが無いではございませんか⁉」


「え? 小説の登場人物なんかではありませんよ? あくまでも、現代日本の司書の女性の『記憶と知識』ですよ?」


「本好きな女の子の(偏った)知識の基になった、女性司書さんが、小説の登場人物なんかでは無く、実在の人物ですって⁉」




「先ほど、たとえ小説に描かれた世界の人物であろうと、量子論に基づけば、現実の世界に存在している人物である可能性があり得ると申したでしょう? それは異世界の類いだけでは無く、『小説の中で描かれた、現代日本』もご同様なのですよ。──言うなれば、『パラレルワールドの日本』と言うことですかねえ?」




「──‼」




「そうなのです、小説に描かれた現代日本人の『記憶と知識』も、現実に存在する可能性は否定できないので、ありとあらゆる世界の『記憶と知識』が集まってくるとされている、集合的無意識の中に存在していてもおかしくなく、それが実在の異世界の本好きの女の子の脳みそにインストールされることによって、Web小説そのままの『異世界転生』状態を、実現することも十分に可能なのです」




「Web小説そのままの、『現代日本人の記憶と知識』を持っている、異世界人ですって⁉」


「もはや、Web小説内に描かれている『異世界転生』が、そっくりそのまま本物の異世界において、実現したも同然でしょう?」


「──そんな! 異世界転生とは、異世界人が何かの拍子に集合的無意識とアクセスを果たして、現代日本の知識に触れることで行われる、あくまでも『現実的な範疇』で起こる現象に過ぎず、『異世界転生系のWeb小説の主人公である現代日本人の記憶と知識』を、丸ごと脳みそにインストールするなどと言った、御都合主義なまでにメタ的で非現実的なものでは、けして無かったはずなのでは⁉」




「いえいえ、インストールする『記憶と知識』が、一般的な最先端技術に関するものか、具体的な特定の現代日本人の方のものかの、違いがあるだけで、どちらにせよ、生粋の異世界人が奇跡的に集合的無意識にアクセスするといった、あくまでも偶発的な現象に過ぎませんので、現実性リアリティは完全に保たれているし、特に取り立てて区別する必要は無いのですよ」




「──なっ⁉ こんな『なろう系』そのままなことが起こっていて、メタなんかでは無く、あくまでも現実の出来事だと、言い張るつもりですの⁉」


「このファンタジーワールドのレベルを超えた、科学的な最先端技術の知識を欲した結果得たのが、学術的マニュアルだったか小説だったかの差異のみで、結局目的は達成できたのだから、そんなことどっちでもいいではありませんか? それに現在我々が問題にすべきなのは、そのようなことでは無いでしょうが?」


「……え、現在我々が問題にすべきことって、何でしたっけ?」


「もう、しっかりしてください! 現在、日本国政府が制定準備を進めている、『アンチ転生法』ですよ!」


「あ」




「これまで行った説明で、Web小説家が異世界を舞台にした作品を創るごとに、本当に異世界が生み出されていて、しかもストーリー内に描かれている通りに、現代日本の最先端技術が『盗用』されることが明らかになったわけで、もしも『アンチ転生法』によって、Web小説を始めとする異世界転生を題材にした創作物の、今後一切の作成と閲覧が禁止されれば、実際にも日本の最先端技術の異世界への流出が阻止されてしまい、我々異世界人にとっては、非常に困ることになってしまうのですよ」




「──ほんと、むちゃくちゃ困るではないですか⁉」


「だから、そう申しているのでは、ございませんか?」


「……くっ、これは早急に、手を打たなければ」


「おや、何か手立てがございますので?」




「こんなこともあろうかと、新開発の『逆転生の秘術』によって、現代日本に『工作員』を何名か潜り込ませておりますの。その者たちに至急命令を下して、日本国政府の暴挙を、何としても食い止めて見せますわ!」

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