第407話、わたくし、『ゼロの魔法少女』ですの。(その2)
「──な、何言っているんだよ⁉
『……あんた、本当に「
「えっ…………あ、いや、神様とは、そういうものじゃないの?」
『ご期待に添えなくて申し訳ないけど、たとえ神様であろうとも、世界の中にいる限りは、その世界の法則を逃れることはできないの。──あなたたちが普通に「神様」と呼んでいるのは、いわゆる「すべての世界の外側に存在している神様」だけなのよ』
「……そいつだったら、特定の世界の特定の人物の運命を、いくらでも変えられるってわけなのか?」
『「すべての世界の外側に存在している神様」ってが、本当に
「──だったら最初から、例に挙げるなよ⁉ 単なる言葉遊びかよ!」
『だから、あなたもよ〜くご存じの、いわゆる「すべての世界を夢見ながら眠り続けている神様」なら、該当するでしょう?』
……ああ、結局、そのパターンか?
「でも、その神様が目を覚ましたら、『すべての世界』が消え去って、その神様が暮らしている世界だけが残るというのが、『定番』だけど、その場合その神様は、自分が暮らしている世界を夢見て
『逆よ、逆、すべての世界が消え去るんじゃなくて、そんな神様は、
「はいはい、『世界を夢見ながら見ている神様』とは、当然『自分自身』と言うことだろう? もしもこの現実世界が夢だとしても、その夢が覚めたら、当然夢を見ていたのは、『自分自身以外の何者でもない』わけだしな」
『正解。──ただし、その「自分自身」とは、特定の個人を指すのではなく、あらゆる世界のあらゆる人物が、該当するんだけどね』
「……『別人になる夢』なんて、誰でも見ているからな。逆に言えば、この現実世界が夢だとしても、その夢を見ているのが、この僕とは『まったく別人』である『僕』である場合も、十分あり得るんだよな」
『というわけで、「あらゆる世界を夢見ている神様」とは、あらゆる存在であり得る「可能性の集合体」と言うことになり、特定の個人ではあり得ないの』
「──だったら、世界の外側では無く、特定の世界の内側にいて、『神様』を名乗っているおまえらは、一体何者なんだよ?」
『いつも言っているじゃないの? まさしく『夢見る本物の神様』の
「『神様の
『さっき言った、「あらゆる世界のあらゆる存在の可能性の集合体」って、これまた毎度お馴染みの「集合的無意識」のことじゃん? つまりまさにその「神様」の
「集合的無意識への、オールフリーのアクセス権って、それじゃまるで、神様そのものじゃん⁉」
『……だから、そう言っているじゃないの?』
「あ」
『つまりね、「あらゆる可能性の集合体」と言うと、ユング心理学では「集合的無意識」のことになるけど、量子論においては、あらゆる可能性の「重ね合わせ状態」のことだから、集合的無意識にオールフリーでアクセスできると言うことは、量子コンピュータの作動原理である、量子ビット演算処理が可能となり、よって現時点で取得可能な各種情報をデータにして計算を施せば、「あらゆる未来の可能性」を予測できるので、神様を頼ってきた信者に適当にアドバイスすれば、その願いを叶えてあげることさえも、十分に可能になるわけ』
──!
「ということは、まさか⁉」
『そう、詠には、「密かに謡を座敷牢の中から連れ出して、自分の代わりに両親と外出させれば、すべての願いは叶うであろう」と、唆したの。そうしたら、
「なっ、おまえ、何てことを⁉」
「だからあ、私は別に、
「そうすることによって、謡たちが死んでしまうことが、わかっていたんだろうが⁉」
『……そうとは限らないでしょう? 私は時代遅れの古典物理が崇め奉っている、「ラプラスの悪魔」じゃないのよ? あくまでもそうなる「可能性が
「しかし、あらゆる情報を
『まあね、一応は「神様の
──くっ。
確かに、その通りだ。
そもそも、人が願ったからこそ、『神様という概念』が、生み出されたとも言えるのだ。
それなのに、人が、自分の願望の顕れである、神様を恨むなんて、文字通りに『天に唾する』にもほどがあろう。
「……だったらもう、詠を救うことはできないのか? これから彼女はずっと、『謡』として、生きていくしかないのか? ──本当の自分自身を、殺してしまって!」
『そんなことは無いわよ? もう一人の『世界の外側にいる神様』である、『作者』であれば、すべてを自分の望むがままにすることが可能なの』
は?
「何だよ、『作者』って、またメタそのままなことを、言い出したりして?」
『メタなどとは、心外ですこと。他ならぬ、あなた自身のことなのに。──ねえ、明石月の「語り部」さん?』
「え、僕のことなの⁉」
『あなたにはこれから、詠を主人公にした、「異世界転生物語」を書いてもらうわ。──何せ語り部が書いた小説は、すべて
「……それが、詠の願いに対する、『代償の実行』というわけか? しかし、いくら異世界を舞台に小説を書いたところで、この現実世界の詠自身の運命を、本当に変えることができるわけがないだろうが?」
『本来ならね? だけど、「ある一定の特殊なやり方」だったら、この世界自体を改変することだって、けして不可能ではないのよ?』
「はあ? 一体どうやって? いくら『作者』や『語り部』が、自分の小説の内容を書き換えたって、本当に世界を変えているわけでは無く、その小説に対応する異世界が、『最初から改変されていた異世界』へと、
何せ、『多世界解釈量子論』に基づけば、ありとあらゆるパターンの世界は、
『ちょっと反則的なやり方だけど、作品内の異世界にも、「作者」の力を有しているキャラを登場させて、この現実世界を、「小説」として書いていることにすればいいのよ』
「へ? それって、一体……」
『お定まりの台詞で恐縮だけど、「果たしてこの世界が、
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