第408話、わたくし、『ゼロの魔法少女』ですの。(その3)

巫女っ「──おいっ、おぬしら、我のことを無視するでない! 二人だけで話に熱中して、完全に我の存在そのものを忘れ果てているではないか⁉」




TSっ&女神っ「「……あー。(いけね、ほんとに、すっかり忘れていた)」」




巫女っ「今回の【回想編】──すなわち、【現代日本編】は、一応我がメインヒロインなんじゃろうが⁉」


TSっ「……と言うよりも、よみお嬢様なんですけどね」


巫女っ「肉体はそうでも、中身は我で、現時点で精神を完全に乗っ取っているんだから、それはもう、我そのものじゃろうが⁉」


女神っ「……うわあ、この寄生精神体、他人の肉体を乗っ取っておきながら、完全に居直ってやがる。──どこかの、『すべての起源はウチの国!』なメーワク国家かよ?」


TSっ「どうせなら、現在各国で絶賛押し付け合い中の、『コ○ナちゃん』の起源も、立候補すればいいのにねw」


巫女っ「おいこら、この性悪女神にアホ作者! この御時世にあえて波風立てそうなことを言うんじゃない!」


TSっ&女神っ「「邪悪なる巫女姫から、常識を問われてしまった、だと⁉ ……くうっ、何という屈辱!」」


巫女っ「……いやもう、お互いに『性悪で邪悪』なのはわかりきっているんだから、これ以上はやめておこうぞ?」


TSっ「──ちょっと待ってくださいよ! それは少々、聞き捨てなりませんな!」


女神っ「あら、『明石あかしつきの語り部』さん、急にどうしたの?」




TSっ「どうしたもこうしたも、どうして至極善良な一般市民である、語り手役の僕までもが、『性悪で邪悪』とか言われなきゃならないんですか⁉ ──つうか、そもそも『TSっ』というHNハンドルネームからして、何なんだよ⁉ 僕はれっきとした少年キャラじゃん!」




女神っ&巫女っ「「…………」」




TSっ「おいっ、そこでどうして黙り込む? 何とか言えよ!」




女神っ「……だって」


巫女っ「……のう?」


TSっ「な、何だ、何だって言うんだよ?」




女神っ「じゃあ、一つ一つ解説していくわね。実はこれからあなたに書いてもらう予定の、異世界転生系のWeb小説『わたくし、悪役令嬢ですの!』において登場する、主人公のアルテミス=ツクヨミ=セレルーナの侍女メイドにして、『作者』の力を有しているメイ=アカシャ=ドーマンこそが、この作品世界におけるあなた自身に該当するから、あなたはある意味自作のWeb小説の中へと、『TS転生』するのも同然となるの」




巫女っ「しかも、アルテミスが悲惨な運命にあるのも、すべてメイが仕組んだことであり、更に極論すると、彼女こそが『こちらの世界の作者』みたいなものでもあるのだから、そなたたち幼なじみ三人組が不幸に見舞われたのも、元をただせば、こやつのせいとも言えるのじゃよ」




TSっ「何その、『二重メタ構造』。僕が小説の中で創り出した登場人物が、この世界を小説として生み出しているって、いったいどこの、『卵が先か鶏が先か』だか『胡蝶の夢』だか『ウロボロスの蛇』なんだよ⁉ ──いや、そもそもが、どうして『絶対叶えたい唯一絶対の願い』を叶えてやるのに、異世界転生させるんだよ⁉ この世界で叶えてやらなければ、意味が無いだろうが⁉ それを異世界転生系のWeb小説の中で、叶えてやったことにするなんて、もう僕、わけがわからないよ…………というか、むしろ詐欺じゃん!」




女神っ「それは当然、人の願いを完璧に叶えてやるには、異世界等の『他の世界』──そう、『その願いが世界』に転生させるしか、方法がないからよ」




TSっ「……は? な、何だよ、『すでに願いが叶えられている世界への転生』って。おまえ前回、詠お嬢様の願いを叶えてやれたのは、『夢見る神様の代理人エージェント』としての、量子コンピュータ並みの計算力によって、実現してやったとか何とか言っていたじゃないか?」


女神っ「でも同時に、『これはあくまでも、最も成功するやり方に過ぎない』とも、言ったでしょう? つまり、真の神様譲りの量子コンピュータ並みの演算処理能力によって算出シミュレートした、『未来のパターン』であっても、けして完璧とは言えないの。これぞまさしく、『百発百中の未来予測を成し遂げることのできるラプラスの悪魔なんて、時代遅れのインチキ物理学の産物に過ぎない』と言うことなのよ」


TSっ「──ぐっ」


巫女っ「それに、いくら現在において『今は亡き姉』になり切っていたとしても、自分が姉の命と引き換えに願いを叶えたことに対する『罪悪感』は、深層心理的に詠自身を責め続けているのであり、下手すると精神的に自己崩壊する可能性だってあり得るからのう」


TSっ「た、確かに……」




女神っ「そこで、『だったら、すでに当人の願いが叶っている世界に、異世界転生させればいいんじゃね?』ってわけなのよ。何度も何度も言うように、多世界解釈量子論に則れば、あらゆるパターンの世界がことになっているから、詠の願い通りの世界に転生させれば、彼女の願いを完璧に叶えられるって次第なの」




TSっ「……それが、『わたくし、悪役令嬢ですの!』の世界と言うことか? しかしこれっていわゆる剣と魔法のファンタジーワールドだし、この現代日本とは、全然違うじゃないか?」


巫女っ「どうせ願いを叶えてやるのなら、むしろ世界観的に、違えば違うほどいいのじゃよ」


女神っ「さっきも指摘されていたように、なまじこの世界の詠自身が、同じような世界に転生したとしても、基本的に『前世の記憶』として、自分が実の姉を犠牲にしたのを覚えているんだし、その記憶を作為的に抹消したところで、潜在的な『罪悪感』として、彼女を苛む可能性も非常に高いしで、いっそのことまったく別の世界において、まったく別の人物として生まれ変わらせたほうが、真の意味で願いを叶えさせることができるってことよ」


TSっ「あ、そうか、むしろ異世界転生系のWeb小説って、そのような作者や読者の見果てぬ夢を叶えさせるために、存在しているようなものだからな! 何せ、『転生=生まれ変わってやり直す』だしね。そうか、これってむしろ、『なろう系』としては、大正解だったんだ!」


巫女っ「もちろん、まったく違う世界観と言っても、詠の願いを最優先的に叶えることは大前提じゃがな。事実、異世界における詠の転生体であるアルテミス=ツクヨミ=セレルーナは、生まれつき銀髪金目の『の巫女姫』なんだし」


TSっ「──ッ。それってむしろ、詠が謡として、ようなものじゃないか⁉」


女神っ「そうよ、彼女の願いを叶えるためには、いっそのこと、『謡として転生する』ことがベストなのよ」


巫女っ「ただし、これを現代日本の世界観でやると、単なる過去改変になって、今まさにそなたたちが存在している、『謡が死んでしまった世界』を全否定することになってしまうからな。しかもこういったパターンとしては、『何度過去をやり直してみても、完璧に願いを叶えることができず、結局無駄なループを繰り返すはめになる』という、お定まりの三流SF小説になるだけだしのう」


TSっ「……うわあ、いかにもありそう」


女神っ「それと言うのも、これまた何度も何度も言うように、量子論に則れば、『未来というものには無限の可能性があり得る』ので、たとえ過去へタイムトラベルして自分の望むがままにやり直そうが、いっそのことすでに自分の願い叶っている異世界やパラレルワールドに転生や転移をしようが、には無限の可能性があって、むしろ前の世界よりも不幸になることだってあり得るのですからね」


TSっ「ああ、だからいっそのこと、まったく違う世界のまったく別人へと、転生させるべきってことか」




女神っ「某超有名『鬱系アニメ』において、どんな願いでも必ず叶えてやる代わりに、魔法少女にならせて魔女退治をさせるのも、実は同じことだと思うの。現実世界のただの女の子が、魔女なんかがいるファンタジーワールで魔法少女になるなんて、異世界転生以外の何物でもないでしょう? いやむしろそんな世界でないと、『時間を自由に操作したい』とか『妹の不治の病を治したい』など言った、無理難題を実現すること自体ができないと思うのよ。──その結果、魔法少女になった途端、妹の存在自体が記憶から消失してしまったのは、実は魔法少女になることで、『別の存在』に生まれ変わったからだったりしてね」




TSっ「そ、そうか、真の意味で『どんな願いでも叶える』ためには、異世界転生して、魔法少女にならなければならなかったんだ! そうかそうか、『なろう系』Web小説のチート転生者は、みんな魔法少女だったんだ、納得したぜ!(錯乱) ──あ、でも、そうすると詠も魔法少女になったわけなのか? それにしては、ただの巫女娘にしか見えないんだけど?」


巫女っ「──貴様! 巫女っこそは、我が国最古の、魔法少女なのだぞ⁉」


女神っ「アルテミスなら、ちゃんと今、【魔法少女編】をやっているじゃないの?」


TSっ「巫女のどこが、魔法少女だよ⁉ 詠の願いを叶えてやっていると言うのなら、この世界でも魔法少女にならないとおかしいだろうが⁉」


女神っ「やけにしつこく食いついてくるわね? こいつもしかして、魔法少女オタクか?」




巫女っ「……仕方ないのう、だったら見せてやるか。──集合的無意識とアクセス、『ショウカク』のパーソナルデータをインストール!」




TSっ「おおっ、詠の周囲に忽然と現れた、青い鬼火が、どんどんとメタモルフォーゼしていく……………………って、あれ?」


巫女っ「どうじゃ、驚いたか?」


TSっ「驚いたって、確かに『梓弓』を虚空から出現させたのは、古式ゆかしき『巫女キャラ』として正しいかと思うけど、何だよ、もう一方の手に持っている、いかにも『航空母艦の飛行甲板』そのままの板っ切れは⁉」


巫女っ「おう、まさしくそなたの言う通り、旧大日本帝国海軍の正規空母『しょうかく』の、飛行甲板そのものじゃよ?」


TSっ「よりによって、マズいだろうが⁉ ただでさえ銀髪金目で巫女服着ていて、そっくりそのままなのに! それに『翔鶴』は軍艦擬人化少女なのであって、魔法少女じゃないだろうが?」


巫女っ「おや、『オリジナル』のほうは確か、巫女服では無く、弓道着じゃったと思ったが?」


TSっ「オリジナルとか言うな! この作品もれっきとした、オリジナルです!(断言)」


女神っ「だから何度も言っているでしょうが? 軍艦擬人化美少女こそが、『最も理想的な魔法少女』だって」


TSっ「またそのパターンかよ? どうせ今回の【第8回ネット小説大賞】を対象とした、『軍艦擬人化美少女推し』作品は、すでに全作落選したんだから、もうあきらめろよ!」




女神っ「ところがどっこい、唯一第一次選考を通過した『本当は怖い異世界転生⁉【病院編】』においては、特別に連載を再開して、軍艦擬人化美少女をメインキャラとして、フィーチャーする予定だそうよ?」




TSっ「ほんと、諦めが悪いな、この作者って⁉」




巫女っ「『潜水艦』型軍艦擬人化美少女を、あえて『人魚』として設定するとかいった、これまでにない独自路線を展開しますので、ご興味のある御仁は、是非御一読くだされ♫」


女神っ「実はこれこそが、『不老不死の人魚の肉』を御本尊とする、聖レーン転生教団の根幹に関わってきたりしますので、本作の読者の方も、お見逃しなく♡」




TSっ「──結局今回も、宣伝かよ⁉ いい加減にしろ!」

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