第388話、わたくし、ソビエト空軍の偉大なるSS大佐ですの。(その16)
『──あらあら、一応は「令嬢」と言うくらいだから、基本的に貴族のお嬢様ではあるんだけど、だからといってけして舐めちゃ駄目よ? まさしく「異世界転生の女神様という概念の集合体」である私同様に、「悪役という概念の集合体」でもあるのだし、Web小説におけるあらゆる「悪役」を、その身で体現していると言っても過言では無いの』
「……いやでも、『悪役令嬢』って、あれだろ? 昔の少女漫画や少女小説なんかでお馴染みの、庶民出身で健気な頑張り屋の
あれ? 何で、世界的なジェットエンジン技師であるはずの私に、このようなマニアックな知識があるのだろう?
『ああ、そこのところは気にしないでちょうだい。実はあなたは今まさに、「時間と空間」から超越した状態にあって、本来なら知り得ないはずの未来の事象である、「Web小説」や「某鬱系魔法少女アニメ」等の知識についても、「集合的無意識」を介してアクセスできるようになっているのだから』
──また、集合的無意識かよ⁉
ほんと好きだな、集合的無意識とか量子論。………あえて『誰が』とは、言わないけど。
『
「ああっ、言われてみれば⁉ どうして私は、このような見るからに『未来の便利道具』そのもののガジェットを、当たり前のように使いこなしているのだ⁉」
『言わばこれって、「臨死体験」みたいなものなのよ。あなたはすでに死にかけており、もはや精神体だけの存在になりかけているので、文字通りに「精神体の巣窟」である集合的無意識とアクセスを果たして、「未来の情報」すらも既知のものであるかのように
……ああ。
やはり私は、まさに今この時、死にかけているのか。
そりゃそうか。
仮にも『女神様』の姿が見えているのだ、ここが天国の入り口と言われても、今更否定できないであろう。
──しかし、臨死状態となることによって、集合的無意識という、まさしくアカシックレコード級の知識の宝庫にアクセスして得ることができたのが、『悪役令嬢』と『魔法少女』という『オタク知識』の類いとは、ちょっと哀し過ぎるんですけど?
『……また何か、残念そうな顔をしている。これから数十年後の未来においては、現代日本発の「オタク知識」って、結構世界で重宝されているのよ?』
「うん、そんな嫌な未来を見なくて死ねることを、むしろ幸せに思えてきたわ」
『それに一口に「悪役令嬢」と言っても、今やWeb小説においては百花繚乱の有り様となっていて、剣と魔法のファンタジー世界における上級貴族の嗜みとして、超高度な魔法を使えるのは当然だし、同様に上級階級ならではの教養の高さに加えて、現代日本からの転生者でもある故に数々の最先端の知識すらも有することにより、異世界における各種の技術革新をもたらすのはもちろん、自ら国家的為政者以上の政治手腕を発揮したり、世界征服を成し遂げる勢いで天才的軍略を披露したり、そもそも現代日本にいた時分から(引きこもりオタクならではに)破滅的なまでに好戦的なミリオタで、自分の祖国そのものを破壊しようとしたり、なぜか魔王等のラスボス化したり、むしろ反対に「悪役レッテルへの反逆」的に聖女認定されるくらい高潔だったり、お人好しが極まって人並み外れたコミュニケーション能力を発揮して、主人公顔負けの逆ハーレムを構築したり、何なら主人公(♀)すらもメンバーに含めた百合ハーレムを築き上げるといった、もはや「何でもアリ」のやりたい放題なんだから!』
「──いやもうそれって、『令嬢』で無いのはもちろん、最後のほうはもはや、『悪役』でも無いじゃん⁉」
『まあ、現在においてはWeb小説自体が「何でもアリ」といった様相を呈しているんだから、その代表的キャラである「悪役令嬢」という概念の集合体が、Web小説におけるすべてのキャラを内包しかねない、もはや「全知全能」レベルにまで至っているのは、至極妥当な状況とも言えるのよ』
「……そりゃまあ、異世界と言っても、それなりに『
『さすがは、歴史に名を残すほどの科学者様ね、話が早いわ♡』
「──ああ、私の唯一の願いである、今度こそ真に理想的な軍用機をこの手で生み出して、我が祖国であるドイツ第三帝国を滅ぼした憎き敵国に、『核爆弾』の雨あられをお見舞いすることを叶えてくれると言うのなら、このフェルディナント=ブランドナー、たとえ悪魔に魂を売り渡すことになろうとも、ためらいはしないさ」
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